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ストーカーの言う通り、デートの待ち合わせをしているのだろう。いつもは制服をきっちり来ているが、今日は私服だ。特筆すべきは、トレードマークの眼鏡をしていないことだ。多分、コンタクトなのだろう。
「裸眼の金城君素敵ぃ。また惚れ直しちまったぜ。じゅる」
「鼻息押さえて」
たった数日の付き合いだが、なんとなく灰銀がフラれた理由が分かってきた。
「ど、どうしよう?見た目大丈夫かな?可笑しいところある?」
「見事な地味子さんだ。誰も灰銀さんだって気付かないよ」
「地味子……?Tier4じゃん!どうしてくれんの!?」
「知らねぇよ」
自分でギャップ堕ちしておいて俺のせいにするんじゃない。
「うう……こんな見た目じゃ、金城君にフラれちゃうよ」
大丈夫だよ。完全体でもフラれてるんだから。
俺はおろおろする灰銀を無視して金城を見ると、友達が少ない俺でも察せられた。アレは女と会う時の空気感だ。灰銀に巻き込まれた形だが、クラスの委員長がどんな人間と付き合っているのか気になってきた。
すると、明らかに表情が明るくなった。金城もあんな顔をするんだな。
「お待たせ!真君!」
「いや、今来たところだ」
おお、ラブコメの王道だ。生で見ると、結構感動するな。
「夢宮桃花。クラスは二年三組。図書委員に在籍中。部活はやってない。金城君とは家が近所で、家族ぐるみの付き合い。いわゆる幼馴染ってやつだよ。唯煌スカウターで測った戦闘力はたったの5。いわゆる雑魚だね」
「情報提供ありがとう」
戦闘力5に負けた灰銀が情緒を破壊しながら、耳打ちしてくる。
夢宮の見た目はピンク色の髪と感情と一緒に動いているアホ毛以外はThe『地味子』。頑張ってオシャレしているのが分かるが、Tier4状態の灰銀の方が可愛く見える。片目が隠れていて、猫背でおどおどしている。金城とは対極にありそうな陰キャ女子だった。
「その、似合ってるぞ、桃花」
「そ、そう?えへへ、ありがとね。真君」
「ああ」
いいねぇ。あの甘酸っぱいやり取り。初々しくて応援したくなる。すると、俺の足に激痛が走る。
「痛!」
どうやら、灰銀に足を踏まれたらしい。不意打ちだと死ぬほど痛いなこれ。
「ネムレス君。今日の任務を忘れているのかい?」
それより俺の足を踏んだことを謝ってほしい。抗議の視線を送るが、既に灰銀は金城夫妻を見ていた。
「なんだっけ……?」
ギロリとルビーの瞳が俺を責めてくる。
「金城君の好みを把握し、『悪女:夢宮桃花』の弱点を炙り出す。最終的に、私の隣に金城君を取り戻すの。お分かり?分かったら返事」
「イエッサー」
いや、無理だろ……
あの二人の空気感を見て、無理ゲーに挑んでいる気分になった。
『重要なお願い』
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