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「落ちつけよ、瑪瑙君」


教室の入り口で、灰銀が扉に背を預けて腕を組んでいた。


「なんでここに?ってかいつから」


「忘れ物だよ。弁当箱忘れるとうちの母ちゃんに拳骨を落とされるの。それにしても、私がいないところで好き勝手いってくれたもんだよ」


灰銀は自分の母親を『母ちゃん』と呼んでいるらしい。可愛いんだかなんだかよくわからなくて、どう反応すればいいのか分からない。


それにしても、灰銀はだいぶ最初から聞いていたようだ。少しだけ声に怒気を孕んでる。宮内たちにキレているのだろう。


そして、ずんずんと教室に入ってきて、なぜか俺の前に立った。


「瑪瑙君」


「何?」


「やりすぎじゃ、ボケ!?」


「グへ!?」


俺の頭にチョップで全力で叩いてきた。死ぬほど痛い。脳天がカチ割れるかと思った。


「君って、意外と短気だよね!?ナンパから助けてくれた時もそうだけど、口より先に手を出すんじゃないよ!?」


「うっ」


そう言われてみれば、灰銀の言う通りだ。冷静になって考えれば、こんなことまでする必要はなかったかもしれない。


悔しいが灰銀の言う通りだ。


「ま、それでも私のために怒ってくれたのは、嬉しかったよ。ありがとね」


「灰銀さん……」


俺にそう言うと、元、同じグループの三人を見下ろした。


「玲美、結奈、優子……」


「……言いたいことがあれば好きに言えば?」


宮内はもう抵抗する気もないらしい。灰銀の悪口を俺に言っていたのを聞いていたのだ。好きに怒ればいいと思う。悪いのはどう考えても、その三人だ。断罪する権利は灰銀にある。


「じゃあ、そうさせてもらうよ━━━ごめん、私が悪かったです!」


灰銀が綺麗な土下座を披露した。


え?なんで?


すると、灰銀がすぐに立ち上がった。


「いやさ、どう考えても私が悪いじゃん。天才で天才過ぎる灰銀唯煌ちゃんに嫉妬して、怒ってるんでしょ?」


「「「「は?」」」」


俺までハモってしまった。


「Chu!可愛くてごめん。生まれてきちゃってごめん。ムカついちゃうよね、ざ・ま・ぁ(笑)」 


う、うわぁ……


言いたいことがあれば好きに言えばっていうのを逆手にとって、めっちゃ煽ってる。名曲まで引用しちゃって最悪だ、この女。『可愛くてごめん』を地で行く女だから似合ってるのが腹立つ。


流石に三人に同情した。


「まぁこれは禊。私は三人に本当に謝らなきゃいけないとは思ってるの」


前半で感じたおふざけは全く感じない。ここからが本題のようだ。


「灰銀さんが謝る必要はないよ。なんだったら締めておくけど?」


「……落ち着けよ、瑪瑙君。君、今、冷静じゃないぜ?ハウス!」


「俺は犬じゃねぇんだわ」


まぁ、確かに物騒な発言をしてしまうことがあるので、しばらく黙っておこう。


「いやぁ、ごめんね。私の瑪瑙君が私を好き過ぎて愛が暴走しちゃったみたいでさ」


「……そんなことはどうでもいい。それより、唯煌、その話し方……」


「うん、これが素なんだ。みんなの前では見せたことがなかったよね?」


カラカラとわざとらしく笑う灰銀を見て腹の虫が悪くなったのか宮内が灰銀を睨んだ。


「今更何のつもり?私たちが落ちぶれてくのを見て楽しんでるの?最低な悪口を言っているのを聞いて優越感に浸ってるのかな?」


「んにゃ、じぇんじぇん」


灰銀のふざけた態度に宮内がさらにキレた。


「嘘付かないでよ!私たちがどれだけ近付こうとしても、唯煌はずっと壁を作ってたじゃん!心の中で見下してたんでしょ!?自分より不細工で何の才能のない凡人が自分のために媚を売ってるって!」


宮内がキレた。俺は灰銀に害をなさないように前に立とうとしたが、灰銀に制止された。大人しく見てろということらしい。


「金城君にフラれた姿は本当にざまぁ見ろって思ったよ。完璧だと思ってた唯煌がどんどん落ちぶれていってさ。苦しんでる姿を見て、私たちの溜飲は下がった!」


宮内は歪んだ笑顔で灰銀を見る。しかし、灰銀は何も反応しない。ただ、真面目な表情で宮内の言葉を聞いていた。


「何か言えば……?」


宮内は灰銀を睨んだが、灰銀は真っすぐ見ていた。


「結奈の言う通りだと思うよ。私自身、あえて人と壁を作ってたし、隙を見せないようにしてた。そもそも金城君と付き合えたら、後はどうでもいいと思ってたからさ。その態度が人を見下してると思われたのだったら、それはその通りだと思う」


灰銀が少しずつ言葉にする。


「たださ、少しだけ私の昔話を聞いて欲しいんだ。私のアイドル時代の話をさ」

『重要なお願い』

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