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「灰銀唯煌です!アイドルやってました!よろしくお願いします!」


「存じているわ。けれど、こうして話すのは初めてね。進条冬歩(しんじょうとほ)よ。いつも義兄がお世話になってるわ。同い年だし、敬語も結構よ」


「あ、じゃあ、そうする~。よろしくね。進条さん」


「ええ、唯煌さん。さて」


灰銀と親交を交わした冬歩が俺を見てきた。


どんな奴であったとしても、挨拶をしないというのはいただけない。


「久しぶり」


「どちら様……?」


不思議そうな顔をして俺を見てきた。


「俺だよ、枯水瑪瑙(かれみずめのう)だよ」


「私の知り合いに『俺』なんて人はいないわね。人違いじゃないでしょうか?」


「そっちじゃねぇよ……」


冬歩との会話は疲れる。さっさと用事を片付けて、話を終わりにしよう。


「春樹から伝言。今日は部活の奴らと飯を食ってくるから夕飯はいらないってさ」


「その程度のことなら瑪瑙に伝言を託す必要はなくないかしら?」


そこだけは百パー同意。


「さぁ、春樹の意図は分からん。ってか名前覚えてるじゃねぇか」


「あら、うっかりしてたわ」


冬歩との会話は疲れる。どうして、俺の周りには普通にコミュニケーションが取れる人間がいないのだろう。


進条冬歩(しんじょうとほ)。人気ライトノベル小説家だ。中学生の頃からその才能を開花させ、何冊も本を出している。しかも書籍化だけにとどまらず、ついにはアニメ化もするんじゃないかという噂まで流れている。


ビジュアルもいいので、美人小説家としても売れているようだ。


ついでにうちの学校の生徒会書記だ。


「……楽しそうだね、瑪瑙君」


灰銀がジト目でこっちを見ていた。


「ごめん、存在を忘れてた。後、楽しんでない」


冬歩と話していたせいで、周りが見えなくなっていた。


「ほーん、瑪瑙君、君は私の心を揺さぶる天才だね。特に怒り方面に」


「だから、悪かったって。そんなことより、冬歩に悩み相談があったんだろ?」


「そんなのどうでもいいよ!」


じゃあ帰ろうぜ。悩み解決したじゃん。


「瑪瑙君、進条さんに会うのめっちゃ嫌がってたじゃん!それなのに、会うやいなやイチャイチャ、イチャイチャ!私は一体何を見せられとんねん!ちゃんと関係を教えろや!」


「イチャイチャなんてしてないし、誤解だ」


灰銀は何が何だか分からないが、怒り心頭なようだ。


「とんでもない風評被害だから、しっかり誤解を解いておくわね」


「頼む。俺から説明するよりもいいだろ」


俺よりも現役売れっ子小説家の方が説明に説得力があるだろう。


「瑪瑙は私のことが好きなのよ」


「おい待て」


「ほら!」


いきなり嘘を教えるな。後、『ほら』ってなんだ。


「あら?中学時代に、私を見て欲情してたのは誰だったかしら?」


「え?瑪瑙君……?」


「誤解だ」


中学生の頃に冬歩に見惚れたのは事実だ。可愛い子がいるなぁと思って後ろ姿を眼で追っていたら、冬歩だったというだけだ。その時に照れたりしなければこんな目に合わずに済んだのに……!


それにしても疲れた。


冬歩に話させると余計なことを言いそうだから、俺が説明しよう。


「俺と進条兄妹は小学生の頃からの知り合いなんだ。春樹とは親友なんだがな」


「親友…ゴク」


その、ゴクっていうのは聞かなかったことにしよう。『腐』の匂いがするし。


「ついでに冬歩と知り合ったというだけ。別にそれ以上でもないし、それ以下でもない」


「はい、ダウト!それだけなら、進条さんと仲が良いことの説明になっていないと思います!」


「仲は良くない」


が、余計なことだけ鋭い。ヒドインのくせに生意気だ。


「瑪瑙の言った通りよ。訂正するとしたら、私は瑪瑙のことが大嫌いなのよ」


大嫌い……


冬歩に言われても、何もショックは受けないが、無性に腹が立つ。


「でも、兄さんがこの男を気に入ってるの。だから、仕方なく関わってあげてるの」


「俺も春樹の顔を立てて、仕方なく付き合ってやってるんだよ」


「あら?ツンデレかしら?」


「その属性付けはやめろ」


「……仲、良いじゃん」


灰銀が全く納得しないが、これ以上話すと色々不味い。強気に出ているが、冬歩は俺キラーだ。


「本当に何でもないのよ?瑪瑙が私の小説の登場人物のモデルになってるとか、私の小説のファンで書店特典は全部買うとか、私のサイン会に来たとかそれだけの関係なの」


「言うなよ!マジでやめてくれ!」


「え?大好きじゃん」


違うんだって……これがあるから冬歩に会いたくなかったんだよ……

『重要なお願い』

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