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俺の両親は若干ブラック気味の会社に勤めている。共働きで、今日のように休日出勤で駆り出されることも少なくない。そういう時は妹の琥珀と一緒に過ごすことが多い。


「瑪瑙君。君は私の心を揺さぶる天才だね」


ゴキゲン斜めの灰銀が俺を責めるように見ている。


「俺、何か悪いことしたっけ?」


コンビニから戻ってきた灰銀に、琥珀が灰銀に会いたがっていて、サインをもらってもいいかと頼んだだけだ。それを聞いた灰銀は不機嫌になった。


「じゃあ、瑪瑙君にも分かりやすく教えてあげるよ。『両親がいない』、『家に招く』。それも君の大好きな灰銀唯煌ちゃんを、だ。私はどう思ったと思う?」


「ああ、そういうことか……」


ここまで言われれば俺でも察せられる。確かに、俺の誘い方というか頼み方が良くなかった。そこは反省だ。ただ、そこまで深読みしていて、俺の家に来るのをOKしたというのはどういう了見なのだろうか。よくわからない人だ。


それにしても、俺が灰銀を好きだという設定はいつまで続くのだろうか。風評被害が過ぎる。


「俺の伝え方が悪かった。異性だというのを忘れてたよ。ごめん」


「口を閉じろ、青二才。今の言葉は私の怒りを増幅させたぞ?」


ええ……本心を伝えたら、余計にキレたようだ。


灰銀の地雷がよくわからないので、これからの俺は聞き役に徹することにした。女の子との会話においては『共感』が大事らしい。『そうだね!』『凄い!』『面白い!』は対女性との会話における三種の神器だ。


「ねぇ、瑪瑙(めのう)君」


「ん?」


そういや、名前について聞くのを忘れていた。ただ、それを聞くにしては灰銀が真面目過ぎる雰囲気を纏っていた。


「……私って、瑪瑙君から見て、異性としての魅力がないのかな……?」


「そうだね!」


「は?」


「なんでもないです」


今のは俺が悪い。三種の神器の使い方を間違えた。灰銀が人を殺す視線をしている。俺には聞き役に徹することすらできないらしい。


そうこうするうちに俺の家が見えた。良かった。これで話が逸らせる。


「ただいま~」


「おっかえり~!早く、唯煌ちゃんとの、デー、ト……?」


「お、お邪魔します」


元気よく俺を迎えてくれた琥珀は隣にいる灰銀を見て、固まっていた。そして、


「お兄ちゃんが女を連れ込んだ~~~~~~~!」


近所にまで聞こえる大声を上げた。


「誰誰誰?めっちゃ綺麗!可愛い!お兄ちゃんとはどんな関係なんですか!?馴れ初めは!?」


「落ち着け」


「これが落ち着いてられるかっての!お兄ちゃんが唯煌ちゃんと遊びに行くと思っていたら、別の女と遊んでたんだよ!?」


ん、別の女?


「琥珀、誰だかわからないのか?」


「え?私も知ってる人なの?」


灰銀を見て、誰か分かっていないらしい。そういえば、俺は慣れきってしまったが、今の灰銀は黒髪だ。それで気付けないのは無理もないのかもしれない。灰銀を見ると目が合った。


「妹の前でキスなんて大胆過ぎるよ!ここはイタリアじゃないんだよ!?」


「うるせぇ。何を勘違いしてるんだよ」


「め、瑪瑙君、人前でキスは駄目だよ!」


「あんたもかい……」


俺は二人を無視して、灰銀に耳打ちする。


「あわわ……」


琥珀が壮大な勘違いをしていそうだが、無視して灰銀に琥珀へのファンサービスを頼んだ。


「コホン。妹ちゃんの名前は琥珀ちゃんだったかな?」


「あ、はい。いつもお兄ちゃんがお世話になってます!アレ、どっかで聞いたことがあるような……」


BGMが鳴り出し、スポットライトが灰銀に当たる。


「ボンジュール世界。グーテンターク太陽」


「へ?この声にこの決め台詞……まさか……!?」


琥珀が驚愕に目を開かせると、灰銀がスタイリッシュに右手で黒髪のウィッグを取り去った。


その下には灰銀唯煌の代名詞、美しい銀髪が世界を煌かせる。そして、左手のピースがルビーの瞳の前を取り過ぎると、決めポーズを撮って、琥珀に向けてウィンクをした


「こんばんは琥珀ちゃん!貴方に会いに私が来た!」


自称:TIer1筆頭人権キャラ、日本で一番可愛い女。灰銀唯煌の完全体。枯水家に見・参!


ルックス・演出・声・オーラ。何をとっても完璧なスーパーアイドル。


隣で見てた俺はパチパチと拍手をする。


肝心な琥珀はというと、


「あひゅ……」


玄関で気絶してしまった。


『重要なお願い』

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― 新着の感想 ―
言い回しというか言葉使いが好きだな、異性なのを忘れていた〜の下りはいいね。
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