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まおー様、逝っきまーす!  作者: 民折功利
CHAPTER.2「ふたりぼっち+α」

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02-04:宿無しの盥回し


「───初めまして。異能特務局の捜査官、燕祇飛鳥(くつろぎあすか)よ。どうぞよろしく」

「も、望橋一絆です。よろしくお願いします」


 二人の男女が机を挟んで迎え会う。

 部員の大半が追い出されたこの応接室で、居残っていたボクと日葵は静かにそれを見守る。これから始まるのは、望橋一絆という青年の人権を保証したり、保護したりと、この世界で生きてもらう為の様々な手続き作業である。

 今日初対面ばっかりの一絆くんは、眼前に座る特務局の若き捜査官に緊張した目線を向けながら、神妙な面持ちで会話する。

 ……そういや昇進したんだっけ。もう捜査官じゃなくて捜査室長じゃんね。


「相当災難だったみたいね、貴方……ま、人間生きてりゃそういうこともあるわ」

「あるんすか……」

「流石に貴方みたいな前例はいないわよ? でも、そうね。貴方にもわかりやすく言えば、異世界に迷い込んだ人ってまったくいないわけじゃないのよ。大抵は助からないし、死ぬか永住するかを選ばざるを得なくなるわ」

「えぇ……こっわ……」

「弱肉強食よ。部分的にとはいえ、貴方のいた地球だってそういう側面はあったでしょう?」

「同列にさせたくねぇ」


 あっ、それ話すんだ。恐怖心倍増させるだけだよ?

 意図せず《洞哭門(アビスゲート)》に入ってしまい、二度とアルカナの地を踏めずに帰れなくなった人は過去に多くいた。対策の努力は報われず、そのまま被害者たちは行方不明……もう100年も昔の実例だ。

 あの門は人為的に開けられるもんじゃない。

 今は異能と技術である程度出現を感知できてるけど……それでも突発的な界放と街の蹂躙は当たり前の、日常的に試練が起こるのが普通の世界だったんだ。最近は未然防止待ち伏せ作戦が効いてるから、それなりに平和だけど。

 前々世よりも技術革新が進歩しているのが新世界。でも肝心の《洞哭門(アビスゲート)》を開く技術と、閉じる技術は確立できていない。

 当然の如く、悦って奴は“できる”んだけど。なんなの? 周りに合わせろよ。一人技術レベルを頂点超えするんじゃねぇーよ。


 ボクがそう思考している間にも、話は進んでいく。


「じゃ、早速で悪いけどこれが今の貴方に必要な書類よ。書けるとこだけ書いてもらうので構わないわ。生年月日は望橋くんがいた世界の基準で書きなさい……そうね、一応親御さんの電話番号も書いてちょうだい。繋がるかは……正直賭けだけど」

「わ、わかりました」


 個人情報を書き入れる一絆くん。ふーん、綺麗な字だ。育ちの良さを感じる。

 これ、望橋一絆がアルカナで暮らす為の第一歩。

 初日で全部やらせるのは酷だけど……身の安全の為にも早急に進める必要がある。

 危険いっぱい罪いっぱい、清濁併せ呑んで作られた……ここはそんな世界なのだから。


 時々ペンが止まったり、考え込んだり、堅い書類相手に奮闘する一絆くんをボクたちは眺める。そして、その視線の矛先は徐々に移動して……ボクたちと同じように眺める特務局から派遣されたOL風味に向く。

 あ、あっちも視線に気付いた。


「飛鳥姉さん、暇なの?」

「なわけないでしょ……何言ってんのよ日葵」

「人選ミスを疑ってる」

「叩き落とすわよ」


 日葵のデコに異能で浮かせたペンを容赦なく突き刺して昏倒させたのは、ボクたちにとっての姉代わり。

 赤茶色の髪をボブカットにして、黒一色のスーツを着た高圧的な態度を見せる異能特務局捜査官。

 20歳前半なのに特務局の上層部にいるボクらの姉。

 燕祇飛鳥。浮遊と加速を操る異能の持ち主であり、異能特務局では若手でありながら、入る前と入った後の戦績と勤務態度などから局長の補佐をも任せられるまでになった若き女傑。仕舞いには室長にまで成り上がった実力派。

 高圧的な態度をとるけど、その実態はズボラポンコツのおねーさんだ。


 一応、義姉ってヤツなのかな。引き取られたのはボクと日葵の方が先だけど、年齢的には下なんだし。彼女がまだ学生だった時代に色々あって同居してたんだよね。

 結果的に短期間の+1の生活だったけど……別に、悪くはなかった。


 黒彼岸の活動の痕跡を見られないように細心の注意を、そして警戒をしなきゃではあったけど……その、なんだ。意外と楽しかった。今当時を振り返ってみても楽しかった記憶の方が多い、と思う。

 経緯が経緯だからね〜。同情と哀れみから始まった関係だけど……今のこの形に落ち着いて良かったと思う。

 まさか異能が超強化されて覚醒するとはボクも思ってもみなかったけど。


 生活態度はズボラ所の話じゃないのに……やるべき時はちゃんとやるから、文句言うに言えないんだよね。ボクと日葵と玲華部長を除いて、異能部の皆が彼女に助けられたことがあるのもあって、鳥姉の株は高い。

 異能も強くて、状況判断力も優れていて、やればできる特務捜査室(・・・・・)の室長。やらなくてもできる凄腕の異能使い。それが燕祇飛鳥なのだ。

 ズボラでポンコツなのに。

 ズボラでポンコツなのに!!


「まーよーいー?」

「どったの鳥姉」

「誰が鳥よ、誰が! 私は人よ! あと姉でもない!」

「異能名……」

「やめて、否定できなくなったじゃない……あと、なにがズボラでポンコツよ。アンタに言われたかないわ」


 煽るとすぐ乗っかるから面白い。本当になんでこの人が局長の右腕やれてんだろ。

 家政婦でもしてんの? ……してそーだな、うん。

 局長が残業バンザイ過労おじさんだもん。あの世話好き飛鳥ちゃんが靡かないわけがない。でも特務局で最も重要且つ危険な部署を任せられている今、そんな余裕はない? 器用貧乏じゃないから無さそうだ。自分のことで手一杯と推測する。

 ……今更だけど、やっぱり補佐ってそーゆーこと? 人に言えないことしたんですか?


「こら。ちゃーんと私の功績に決まってるでしょ。真宵、アンタ私を虐めてそんなに楽しい?」

「「楽しい」」

「日葵には聞いてないわよ」


 24で処女でおじ専で空飛ぶいじられキャラの癖に……


「ちょっと!! やめなさいって言ってるでしょうッ!? 初対面のガキに植え付けた私のイメージを、できる大人のイメージを壊させないで!」

「できる女オーラは無理だよ。すぐに剥げる」

「特務局も異能部も、ロクな女がいないよね」

「自分で言うんじゃないわよ……はぁ、やっぱり疲れるわこの子たち」


 叩けば叩くほど面白く鳴くボクらの玩具。ボクらの仮の住処である都祁原邸に以前住んでいたのもあって、ボクと日葵は必要以上にこの女を揶揄う。揶揄うのが大好き。

 その度に噛み付いて来るから、とても楽しいのだ。

 からかいがいのある大人は大切なのだ。それにほら……笑顔は大事でしょ?

 仏頂面でいるよりも、親しみのある笑みの方がいい。


「……大変ですね、子守り」

「るっさいわよ早く書きなさい……!」

「あい」


 あはっ、一絆くんも労いに見せかけた煽りしてて草。






◆◆◆






 すーぐ噛み付く狂犬アスカは、書類を受け取ったらまた飛んで帰って行った。


「鳥なのか犬なのかわかんないよそれ」

「局長全肯定じゃんあの人」

「……確かに。裏でそーゆープレイしてそう」

「俺の前でそういう話やめてくんね?」

「「思春期かよ」」

「そーですけど???」


 一絆くんに必要な書類は一時間も使わずに書き終わり、それを受け取った飛鳥は特務局にとんぼ帰りしてしまったわけ。書類受領とか早めにやった方がいいもんね。仕事もまだ片付いてないみたいだし……駄弁ってる暇も無いか。可哀想な大人だな。

 ……そんなこんなで、一絆くんは今一応自由になった。

 書き終わるのを待ってる間に飽きた他のヤツらが部屋に乱入してきて、暇潰しに興じることになったのは……まぁそれなりに楽しかった。惨敗決めた多世先輩に罰ゲームで非推しキャラに今月の給料全額貢げって指令が出た時は、もう最高に笑った。この世の終わりとでもいいたげな顔の落ち込み具合で絶望してたんだもん。

 人の不幸は蜜の味ってね。


 途中で煩いって飛鳥に叱られたけど。だからってモノを飛ばす必要はなくない?


「お疲れ様、望橋くん。はい、お茶」

「あ、あざっす……うま」

「実家から送られた茶葉を使ってるんだ」

「……神室家って茶農家だっけ?」

「違うわ。園芸よ多分」


 それって、園芸の一環で実家に茶畑持ってるってこと? やっぱり金持ちがやることは違ぇや。

 ……ん? 実家? 実家……家………あっ。


「一絆くん、キミ家どーすんの?」

「「「あっ」」」


 異能部の全員が、そして当人すらも忘れていた大問題。望橋一絆くん家無し問題。

 やばくね? 根無し草ってことでしょ?


「なんも考えてなかった……そうだ、俺って移住したけど何の準備もやってない無計画野郎だったの忘れてた……」

「卑屈すぎない?」

「やーい野宿野宿〜」

「真宵ちゃんダメだよ。橋の下って言ってあげて」

「そ、そそれってホームレスってことじゃ……あっ、あっ会話に混ざってすいません……」

「こっちも卑屈だわ」

「どうする、今からホテルを手配しては……間に合うかもわからんぞ」

「あぁ……いや、ホテルはダメだ。守りきれない」

「ん。どんまい」

「……慰めないでください」


 真面目に考えてくれる人が部長副部長の二人しかいないせいで、更に絶望に暮れる一絆くん。味方が少なすぎる。そう絶望する横でやいのやいのと望橋ホームレス化計画を進めるのが他の部員だ。主にボク。

 目指せ橋の下、物乞い異世界人を作ろう!


「やめろ」

「いったい! キミ女にも容赦ないのな!」

「神を殴った俺に敵はいない」

「確かに」


 ……そういやコイツ、あの邪神サマを殴って手を痛めた猛者だったわ。

 その一点だけは尊敬する。愚行だけど素晴らしい。

 周りが責めてもボクは褒めるよ。もっと殴れ。神なんか滅ぼしてしまえ。


 それはそれとして、ボクの頭を叩いたことは許さん。


「ふぅ……あー、あの。ホテルはダメなのって、どういう理由なんすか?」


 頭を掴んで握り潰そうとするボクの魔の手から、連続で回避に成功していた彼は、ふと疑問に思ったことを部長と廻先輩たちに問う。

 確かに、なんでダメなんだろ。別に良くね? ホテルでも問題はないだろうに。

 守りきれないって……あぁ、成程。真宵納得。


「うむ……これは大事だから伝えておこう。可能性の話になるんだが、もし仮に、君の存在が裏社会にバレたとするだろう?」

「はぁ……」

「で、君は別の地球から来たわけだ」

「……誘拐コース?」

「からの人体実験、ドーンッ、だね」

「琴晴が言う通りのことになる」

「誰か泊めてください」


 最悪を妄想した一絆くんは、瞬時に土下座してボクらに寝床の提供を乞うて来た。

 必死すぎてワロタ。大草原をここに生やそう。緑地化。


 んまぁ、ここは順当に行けば男子陣が対象になる話だ。そんなわけで彼を哀れんだ男たちは……


「僕ん家は無理だよ」

「すまん。他人を入れる余裕がない」

「ヒュォ」


 はい、却下でましたー。

 家の事情や個人的理由で居候されるのを却下しやがった笑えるぜ。頼みの綱を失った一絆くんは無惨にも崩れ落ち塵になった。

 それを哀れんだのか、ここですかさずボクと日葵以外の女性陣が声を上げ……


「わ、私は……む、無理でずぅ……うぅ〜……」

「ん。お化けがでる神社で良ければ」

「うちは……ダメだな。お母様が許さんだろう」

「納屋でも居れたくないって言いそうよね……うちって、男性差別が酷いのよ」


 多世先輩の家はサーバーいっぱいゴミいっぱいの本当にヤバい危険地帯でワンアウト。機械とゴミが混線していていつ燃えるかわからないからツーアウト、そもそも先輩の性格的にスリーアウト。

 弥勒先輩は……ノーコメント。一絆くんも無視した。

 神室姉妹の実家は、お分かりの通りだとは思うが母親が男性不信を極めている為オールアウト。

 うん、軒並み行ける場所がない。

 ……あれ、この流れは不味くないか? 残った候補が……あれれぇ?


 ボクは日葵を見る。目が合った……どうやら、あっちと考えていることは同じらしい。


 学院から近くて、敷地面積が広くて、部屋が有り余った三階建てで、元がつくけど古の勇者と魔王がいて、いざとなったら彼を制圧できて、家主が学院のトップしてる家。

 それがボクと日葵が暮らす都祁原邸。

 異能犯罪者が一名潜んでいる疑惑があるけど、全体的に鑑みても非常に安全性が高い屋敷……あぁ〜わぁ〜。


 好条件が瑕疵を上回っとる。終わった。


「あー、じゃあ私たちのい「ダメだね、無理だよ」ぇって真宵ちゃん!?」

「いやだいやだ! いやだよボクは!」

「……あー、おまえら、もしかして同居してんの?」

「養父の家にね」

「ホームシェアだよ!」

「キモい」


 なんで構わないと思ってんだよお前。おかしいだろうが男が入る隙間なんて1ミクロンもないぞ。

 おじさんは別だ。子供の頃から世話になってるし。

 だが一絆、てめーはダメだ。

 気に入ったニンゲンとはいえ、邪神から色々と言われているとしても、ね。


「……で、どうすんの?」

「あー、百合の園に入るのはちょっと……怒られるから。俺まだ死にたくねぇもん。流石に遠慮するわ」

「咲いてないぞ勘違いするな」

「はいはいそうだな。俺が間違ってた」

「手馴れ始めた……」


 ん、勘違いは正せたようで何より。あんな花粉飛ばして鼻と目を虐めてくるだけの花なんて咲かせないよ。見た目が綺麗なだけじゃないか。趣味じゃない。

 二つの意味で咲かせないぞ。咲かせてたまるか。

 ボクは抵抗する。頑張って日葵から逃げ続ける。外野がなにを言おうがボクが正道なんだから。


「はぁ……マジで、なんとかなりませんかね」

「学生寮は?」

「空いてるかわからん」

「もう面倒臭いから部室で良いんじゃないかな?」

「えぇ……いや、それはそれで……」

「一理あるな……」

「学院の設備なら守れるし。結界もあるから不審死とかも入れないしね。部室ならもっと強固なの張ってるから……うん、いいんじゃない?」


 ほら、廻先輩も姫叶も共感してる。そう、ここの部室で寝泊まりすれば良いと思うよ! 暫くはそれで十分でしょ? 十分って言って!

 安全だし! なんの問題も無いと思うよ! 届け、ボクの切実な気持ち!!


 そう皆に便乗して内心抗議して、満足いく展開になると思ったら……


───ピーンポーンパーンポーン。


 壁に取り付けられたスピーカーから、校内放送が響く。


『…二年A組、洞月さん、琴晴さん。三年C組、神室さん。学院長がお呼びです。至急、転入生を連れて、本校舎二階学院長室までお越しください。繰り返します───…』


 それを聴いた瞬間、ボクの怒り袋は破裂した。


「んッでだよッ!! 展開読めたぞこれ!!」

「あはは……良かったね、一絆くん」

「な、何が? つか、早く行った方がいいんじゃねーの? 名指しされてんだし」

「無視!」

「ダメだろう。諦めろ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜!!!」

「発狂してやがる……」


 い、嫌な予感がプンプンする……このタイミングでとか絶対そうだ。わかる。自分の管理下に監視対象を置くなら考えるまでもない手段だ。あの人ならそうする。我ながら言うのもなんだけど、この世で最も信頼できる“力”を持つ二人を使わないという選択肢は、ない。

 ……突然語ったが、ボクの懸念は感じ取れるだろう。

 学院長からのお呼び出しだなんて、普通は緊張とかして心理的にもよくないんだろうけど……ボクと日葵は例外。

 今、ボクは育ての親にとんでもない殺意を抱いている。

 この殺意、ぶつけないのは失礼に値するよね。魔界では同格同士であれば殺意をぶつけ合うのが普通だったのだ。その礼儀を彼も味わうべきである。

 ……実力的にも存在的にも、ボクの方が格上だけども。保護者という加点でボクと同列になった……と、身勝手に解釈してみる。


「やー!!」

「どうどう」

「洞月……時には諦めも肝心だ。受け入れろ。すまんな、望橋くん。もう暫く待ってくれると嬉しい」

「ぁー、まぁ大丈夫です。洞月がこうなるって、相当ってことですよね?」

「その通り、だが……ここまでの癇癪は初めてだな」


 心の底から湧き出る鬱憤を叫び伝えても、日葵と部長は諦めろだの受け入れろだのボクを諭すばかり。一絆くんはさも理解してますって顔で頷いて……なんだこいつ。

 あぁ、最悪だ。

 家主だからって無駄に良い気にさせてたまるか! ボクは抵抗するぞ!! 拳で!


「そうだ、いっそのこと全て無に帰そう」

「はいぎゅー、落ち着こうねー」

「んむっ」


 実力行使にでかけたところで、正面から抱き締められて思考が停止する。

 ………別に、チョロくなんてない。

 ヨシ、そうだな。今はまだ落ち着いててやる。わかった暴れるのは着いてからね。オッケー任せて。


「違うんだよなぁ」


 違うかどうかを決めるのもボクなんだよ。


 さ、気を取り直して。再放送されるのも体裁悪いから、ちょっぱやで行こうや……ぇ、誰のせいで遅れてるのか? そんなのキミのせいだろ異邦人。

 ボク悪くない。

 養父が考えそうなことを先読みして阻止しようと動いただけだ。


「そう易々と決めさせるもんか。今に見てろよ都祁原ァ、脂肪でない首洗って待ってろよ……二度とお肉食べれない身体にしてやるからな……ッ!!」

「……手遅れになる前に昏倒させなきゃ」

「いつになく殺意高いね」

「仕方ないことよ。自分たちの聖域に油を注がれるようなモノだもの」

「あー」

「……ニュアンス的に思考読めたわ。なんか、ごめんな。邪神のせいで」

「そこで俺のせいって言わないのポイント高いよ」

「あっ、好感度戻った」

「何言ってんのオマエ」

「えぇ?」


 取り敢えず、言いたいことはただ一つ───おじさん、我が養父、何故か魔王と勇者の餌付けに成功した男よ。

 明日の朝日を拝めると思うなよ。


 そう、ボクは守るんだ。

 今の完成された、居心地のいい空間を。邪神のお告げも度外視して、ただただ理想と夢を追求して拒絶する。もう結末がわかりきっていたとしても、諦める理由なんかにはならないのだから。

 今に見てろよ。

 魂胆は全部読めてんだよ。ボクと日葵の閉じた世界に、これ以上異物を入れんじゃねぇーよ。

 だから。


「私は構わないんだけどなー。いてもいなくてもやること変わんないし」

「……ブレないよねぇ、キミは」


 おじさん、おめーを殺す。




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