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まおー様、逝っきまーす!  作者: 民折功利
CHAPTER.1「死にたがりの悪役人生」
2/51

01-01:プロローグ的な一人語り

2025/01/10/21:00 プロローグ分割しました。

01-00・01-01、内容は分割前と同様です。本文長いので気侭にのんびりお読みください。リメイクと書いてますが加筆修正と内容一部変更しています。感想評価いいね等、随時募集しています。お気楽に感想ご意見ください。


では、本編───どうぞ。



───キーンコーンカーンコーン…


「ん、ぅ……」


 授業終了を知らせる慣れ親しんだ鐘の音を目覚ましに、惰眠を貪っていたボクの───洞月真宵の微睡んだ意識は徐々に表層へと浮上していく。

 未だ霞がかった思考のまま、のそのそと起床。

 ズルした席替えで陣取った最後尾からチラリと見れば、大きな黒板に最近よくやってくる空想の生物───緑色の小鬼こと“ゴブリン”の生態について、専門的すぎる長文がつらつらと書き連ねられていた。

 空想学の担当でうちの担任でもあるライライ先生はもう退出済みの様子。休み時間……いや放課後だからなのか、教室は同級生たちの騒がしい声で賑やかになっている。

 時計を見たところ、40分は寝ていた計算だ。

 ……ま、まぁ多分大丈夫だろう。相手は我が親愛の担任教師である。きっと、成績だけはちゃんとしっかり優秀なボクのことを、先生は仕方なーく、いつも以上の仏頂面で許してくれる筈だ。いや許せ。賄賂あげるんで是非許してください。補習だけは勘弁して欲しい。

 といっても空想学───異世界についての内容だなんて得意分野でしかないから、そんなにわからない問題なんて早々出ないだろう。ないはずだ。ないと言ってくれ。

 あったら泣くかも。年甲斐もないギャン泣きでオマエらドン引かせてやる。


 ……んん、それにしても。今日はやけに眠い。あんなに寝てたのに……まだ眠いんだけど?

 放課後の部活に支障をきたすレベルで眠すぎる。

 昨夜は自殺を図った直後に捕獲されて寝ちゃったから、睡眠は充分取れてる筈なんだけど。わざわざ飛んでボクを捕まえに来るとか……余程暇なんだろね、あの子。まさかボクが死ぬ気配を嗅覚で察知したとか、そういう変態技巧なわけないだろうし。

 ありえそうで怖いな……でもそんなことより、今はただひたすらに眠い。おかしいな、回収されてすぐにお風呂に突っ込まれた後マジですぐ寝た筈なんだけど。

 眠りが浅いのか、はたまた授業が退屈なだけなのか……まぁいいや。


「……もっかい寝よ………」

「残念、おはようの時間だよ、真宵ちゃん!」

「んぐっ!?」


 再び襲ってきた眠気が一瞬にして吹き飛んだ。

 授業をサボったことで生まれた背徳感と、寝惚けによる心地よい不思議な多幸感は、座っていたボクの柔いお腹に突撃してきた女子生徒によってぶち壊される。

 いや器用だな。机と腹の隙間にどうやって入った? そこそんなに広くないぞ。


「痛い離れて……おはよう、ひまちゃん」

「おはよ〜。もう放課後だよ?」

「帰りのホームルームは……あぁ、今日は会議だから省略なんだっけ」


 寝惚けた脳を完全覚醒させてきたのは茶髪の少女。毎回ボクの自殺を邪魔する幼馴染、琴晴日葵(ことはれひまり)である。

 天真爛漫、いつも元気で落ち着きがない女の子。

 横の一部を三つ編みにしたセミロングの明るい茶髪と、澱みなく澄んだ翡翠色の瞳はまん丸と可愛らしい。

 学院のアイドルだなんて裏で呼ばれてるわけだ。ボクも預かり知らぬところでファンクラブが立ち上がって、謎に栄えてる程度には人気かある、元気が取り柄の女子高生。


 ただ、その本性はボク限定でセクハラしてくるあたおか変態小娘である。


「あっ、そうだ。先生こめかみピクピクさせてたよ?」

「終わったじゃんボクの学生生活」

「指されちゃってたから強めに揺さぶってあげたけど……真宵ちゃん、ぜーんぜん起きなかったもんねぇ。こっそりお耳舐めたのに“ん”の一言も鳴いてくれなかったし。もうす〜っごい熟睡だったよ? 今日は早く寝ようね?」

「ふーん。一応検討しとくよ。無理だけど。ところで今、聞き捨てならないことを言ったね?」

「あっ」


 ライライ先生の折檻(反省文6000文字・前世の知識を俺に教えろとかいう職権乱用すぎる補講)が思い出されて目の前が真っ暗になったと思いきや、なんてことない顔で告げられた問題に目を開く。やりやがったなこの変態。

 うーん、やっぱ警察に突き出そうかなこの他称親友……交友関係は早急に改めた方が良さそうだな。授業放棄して寝てたボクも悪いけど、だからって隣の席にいる人の耳を舐めるのは頭おかしいでしょ。脳外科行くか?

 このまま勘当して捨てようかって本気で思ってることに気付いたのか、日葵は焦った顔で「嘘だよー!?」とバカ必死に弁明してくる。断言するがこういう時の嘘は絶対に信用ならないので、周りのクラスメイトたちに目を向けて真実か否かを視線で問う。

 一番後ろとはいえ、何人かは見てただろうし。いやなに勝手に見てんだ殺すぞ。


 んで、答えは?


 目を逸らされた。


「どうやらキミとはここまでのようだ」

「待ってー! 待って待って! 落ち着いて!!」

「……度が過ぎるよ、日葵ちゃん。もうしないでね」

「反省します」

「わかりましたと言え!」

「善処します!」


 ボクの膝の上で器用に正座、敬礼して謝る阿呆には最早目も当てられない。部活が終わったら……いや始まる前に精神に効く制裁が必要かもしれない。

 ……てか痛い、重い! 膝の上に全体重かけるな!

 憤怒でピクピク震えるボクの頬に気付いたのか、日葵はアハハと苦笑いして、ごめんごめんと抑えめに謝りながら床に降りた。


 ふぅー……あれ、この子なんか前より太ったくね?


「2kg増量かな。清楚JKの風上にも置けないぜ……やっぱひまちゃんはおデブさんなのかなー?」

「……」

「でーぶ」

「殺すね」

「あれ殺意たか───…」


───いつの間にか床の上に背をつけて寝転がっていた。ちょっと汚いじゃないか。いや今の一瞬になにが……このボクが気付けなかった、だと? あ、遅れて痛みががが。

 むふー! と腕を組んで見下ろしてくる日葵を見る。

 顔立ちはいいんだよなぁ。かわいい…ッ、危ない危ない危うくトリップしかけた。くそが。顔面武器で有耶無耶にしようとすんじゃねぇーよ。

 つーか、異能も使ってないのにこれかぁ。相も変わらず戦闘力の矛先がどうかしている。

 そもそもなんでボクが攻撃されてるんだ……普通ボクが攻撃する側だろうに。


 まったく、意表返しも通じないとは。やっぱり女の子に体重関係は禁句らしい。別に怒ることないだろうに。すぐ痩せられる程度には下地があるんだし……

 どうせ脂肪全部胸に行くんだし。死ねばいいのに。

 ボクだって割とあるのに、その更に上を行くとかさ……今世でもそうだけど、いちいち癪に障る女だ。


「あれ、今嫉妬した?」

「………するわけないじゃん。自惚れもいい加減にして。ほら、さっさと部室行くよ」

「! うん、行こ行こ!」


 自力で立ち上がって、机の横にかけていた空の学生鞄を手に取り、日葵を無視してそのまま扉を潜り廊下を歩く。慌てた様子で追従していた日葵がピタッと寄り添ってきたことに気付きながらも、全部無視。

 どうせいつものことだから。

 バイバイと挨拶してくる同級生の相手も程々に、2-Aの教室を後にする。放課後特有とも言えるあの喧騒と賑わいに包まれた廊下を二人並んで歩くが……暫く会話と言える会話はなかった。これでもお互いに長い付き合いだ。別にずっとくっちゃべってなくても距離感など掴める。

 廊下を進めば進むほど徐々に人の数は減っていく。

 静寂に変わっていく世界に耳を傾けながら、真隣を歩く日葵を見やれば、いつも以上にニコニコと嬉しそうに……ボクと一緒にいることを喜ぶ顔をしていた。

 ……スキンシップなんてなければ、素直にかわいいって言えるのに。


「おおー、またやってる!」

「んー、なにが……あぁ、アレか」

「先輩も熱心だよね」

「カラス嫌いもここまで来ると執念だよね。ほんとなにがあったんだか……追い払うって100嘘の名目で、罪のない鳥の命刈り取りに行くの、どうかと思う」

「あはは、弥勒先輩だもん。そういうもんだよ」

「そういうもんかぁ」


 二階の窓から見える中庭には、ボクらが所属する部活の先輩がカラスを相手に自前の大鎌を振るって暴れていた。見敵確殺の執念で溢れておられる。

 よく見れば副部長もいる。死ぬ気で止めなよ。

 ほぼ確で無理だろうけどと諦め半分で無事を祈りながら移動を再開。どうせ後で合流するんだ。見てなくても今は問題ない。


「今日は何事もなく帰れるといいね〜!」

「……人はそれをフラグと言う」

「やめて!? それ言ったらホントに立つから!!」

「キミが言わなきゃいい」

「お口ゆるゆるだから……」

「下郎め」

「悲しい」


 口うるさいヤツの心配は余所に、ボクは小さく笑う。

 こんな何気のない会話が、時間が好きだったりする……なんてわけではない。ただこういうのが貴重だってことはわかっているから、それに付き合っているだけ。


 そもそも、お互い本当ならば相容れない関係なのだ。

 こんなふうになかよしこよししてるのも、傍から見れば問題しかない。


「───あっ」

「ん? ───あぁ、いつもの。ヒョイッと」

「ナイス〜」


───ガッシャーン!!


 そんな時、頭上にあった電灯が何故か外れてボクの頭に落下してきたが……横へ跳び華麗に回避。どういうわけか定期的に降りかかる物的損害にはもう手慣れたもの。

 大きな音を立てて割れ、廊下に散らばる破片にはなんの悪意も感じない。つまり自然に、自重で運悪く真下にいたボクの頭に落ちてきたってわけだ。

 設備が古い……ってわけじゃない。見た目真新しいし。

 ちょっとしたアクシデント……んまぁ、前世の業みたいなもんだ。でもね、悪いのはボクじゃなくて異能なんだ。破片を自分の“影”の中に引きずり込み、証拠隠滅してから再び歩き出す。蛍光灯の有無は……きっと後で気付かれるだろうけど、めんどいから報告はしない。

 不運の発動で壊れたのは学院が補償してくれるってのを入学ん時に言ってもらったもんね。報告の義務までは一切添えられてないよ。異能が原因なんだから、お咎めなんて洒落たものはないのだ。

 ……とか言いつつ、結構な頻度で咎めてくるのは本当にやめてほしいんだけど。


 正当だって? 報連相ちゃんとすべし? ははっ、なんのことやら。


「ふん、この程度でボクを仕留められるとでも?」

「……ずーっと前から思ってたけど……その危ないのってどうにかなんないの?」

「ならない。多分変質してる……これ以上は悪化だ」

「……成程ね」

「……なに、気にしてんの? まさか。キミのせいじゃないからね?」


 確かに前世ボクを殺したのはキミだけど、あれは合意があってこそ。

 なにか言いたげな頬を引っ張り、意識を逸らす。

 ……ほら、そうやってバカみたいに笑ってる方がボクは好きだよ。


 そんなふうに惚気けてたら、窓から見える時計塔の鐘が陽光を反射して煌めき、ボクの両目を焼いた。

 言わずともわかるね? 目潰しされた。めっちゃ痛い。

 不運回避は許しませんってこと? 性格悪すぎんだろ……ずーっと前から世界ってのはボクに理不尽なんだ。本当、こんな世界運営してる神様って酷い……

 いや、そーいやボクが知る神ってクソばっかだな。

 結論……を飛躍して、こんな世界滅んじまえ。もっかいアポカリプスしてしまえ。最低な極論にはなるけどボクと一緒に死んでほしい。


 ……なんて与太、所属している部活的に言えないけど。


「改めて考えると、ボクが平和活動に順じるとか……最早笑い話じゃない?」

「そんなこと……あるかなぁ」

「自覚あんじゃん」

「そりゃあねぇ?」

「キミは違和感ないよね」

「これでも勇者ですから」

「今は?」

「真宵ちゃんの嫁♡」

「破局です」

「ひどいや」


───ボクらが通うこの学校の名は“王来山学院(おくやまがくいん)”。

 魔法震災以降、復興と門出の意味合いもあってこの国で最初に建てられた学び舎であり、空想や異世界についての学習を初めて義務化したっていう教育機関。

 新日本アルカナ皇国の象徴とも言われてる。

 新世界で異能者───多種多様なすっごい異世界由来のパワーの持ち主が世界的に見ても多い魔都は、そういった能力を学ぶ場としてもこの学院を基軸にして動いている。異能の為に国が超支援するとこと思ってくれればいい。

 勿論、非異能者の数の方が大きく上回るけれど。


 そして、この王来山には特殊な“部活”が存在する。


 その名も『異能部』───まんまである。

 略称でもなんでもない。学院所属の異能者のなかでも、戦闘に忌避のない、治安維持に貢献したい異能持ち生徒で構成された政府公認の戦闘許可が下りている部活動だ。

 世界の外からやってくる空想の討伐や撃退、魔都内外に巣食う異能犯罪者の捜査補助や逮捕など、かなり広範囲で多岐に渡る活動を行っている。

 ……どう頑張って解釈しても、学生の両分ってのを優に超えているとしか思えない部活動だ。死の危険が間近に、隣り合わせな部活とか実際どうなんだよ。

 ……なんでそんなのの存在が許されてるのかって?

 そりゃ勿論、異能者ってのは重宝される国の即戦力で、替えのきかない駒だからね。いずれ警察から独立した大人異能者の機関とかに入局して働く前に、こういった学生の身分の時から経験を積んどけっていう超ブラックな理由もあって異能部は存在できてる。

 世界って残酷。転生先の世界がこんなのって辛い。

 それだけ余裕無いってことなんだろうけど。何故こんな世界になっちゃったんだ……フシギダナー。


 ……まぁ、戦いたくない人とか戦闘に不向きな異能者は無理に入部しなくても良いから、とんでも強制力が働いているわけじゃない。

 そういう無理矢理は過去の叛乱で無しになってる。

 たまーに「入ってねっ」っていう命令、いや国の推薦がなされた者もいるにはいるが。


「あーぁ。タイムスリップしたいな……なーんも知らない無垢な自分に戻りたい」

「ん? 真宵ちゃん……なにか言った?」

「な〜んでもないよ。ほら、ボクと手ぇ繋ご?」

「!! うん! ……えへへ♪」


 日葵をいつもので黙らせて、窓に写った己の姿を見る。相変わらず憎たらしい、でも可愛さの方が勝る整った顔がこちらを見つめている。

 肩の辺りで乱雑に切り揃えた黒髪を指で弄んでみれば、あちらのボクも同じように動く。結構な頻度で視界に入る白いメッシュがウザったいが、なにをしようが白いままで変えられない不純物なので無視をする。

 ……で、問題は目だ。仄暗い光を灯した紫色の瞳だが、16歳のガキでは見られない歳不相応の、生きた年数以上の諦観やらが積りに積もって陰っているのが見て取れる。

 死んだ魚の目じゃないのは幸い、って感じかな。

 やだやだ。肉体は今をときめく花の女子高生なのにね。悲しくなるなぁ。


 そう、身体は若い。内面はその倍以上を生きてるのだ。老人って言ったヤツ今すぐここに来い。ボク手ずから目を滅多刺しにして壁に磔にしてあげるから。おいで。

 ったく、誰が好きで四桁年も生きるかっての。そろそろ死なせてくれ。無駄生きだろ。死にたくないって思ってた時期もあったけど、これは過剰じゃん?

 前世関係者が揃いも揃って長寿だからってさぁ……あぁもう。全部どうにでもなーれ! って世間に憚らずに大声で叫びたい気分だ。


 ……ふざけた話だが、ボク、洞月真宵は転生者だ。

 引き継いだ記憶は2人分。クソ短いのとクソ長いのの、やたら鬱屈とした記憶を抱えたまま、二つも世界を跨いだというウソみたいでホントな人生を歩んでいる女なのだ。

 一度目の人生、つまり最初のボクは病弱な半死人。

 あまりにも心臓が弱くって、人生の殆どを大きな病院で生きた女の子。成人する前に精神が病んじゃって、色々と脆弱すぎたせいで心身共に崩壊。

 ぶっ壊れて、倒れて、目を瞑って───死んだ。

 それはもうアッサリと、呆気なく死神に魂を狩られた。葬儀のスピードも早かったんじゃないかな? でもまぁ……不幸って言えるほど不幸なんかじゃなかった、とは思う。原因不明の症状をよくあそこまで生きれたなって思うし。親の愛もちゃんとあったしね。


 だから、別に後悔はしていない───最期の最期で神に祈ったのがダメだったけど。来世は健康で丈夫な……他のみんなと同じように生きれる身体で生まれるなんてことを死の間際に願ったのが、ボクの人生最大の過ちだ。


 多分、これのせいで目をつけられたんだろうし。


 細やかな死者の願いをお上のカミサマは聞き届けない。輪廻の輪に乗る筈だった脆弱な魂を、あのおぞましい上位存在は掬い上げた。

 魂があげる拒絶の声なんて聞いちゃくれなかった。

 ボクの全ては神の娯楽の為に。そんな理由で願うこと、望むこと、祈ることしかできなかった魂は、神様の勝手で創り変えられた。

 あーあ。今思い出してみてもムカつくなぁ……


『おー、いいっ、いいね最っ高! 欲しかったのみーっけ! おねーさんに決定! おめでとうニンゲンちゃん! 今からオマエに使命を与えるよ! できなきゃ魂をワタシが食べてあげるからね!

 ボロボロで今にも壊れちゃいそーなおねーさんがどんな物語を紡ぐのか……ワタシ、すっごい気になるんだよね! だから、ワタシに全部、いーっぱい見せてね?

 ちゃーんと、ニンゲンちゃんにも利はあげるからサ!』


 邪神と名乗る幼女は、嗤いながら魂にこう命じた。


───悪役として生きることを。


 かくして脆弱な魂は地球世界を飛び越え、ボクにとってアニメや漫画のように思える世界に送られた。

 創作で紡がれるファンタジーの、よくある異世界に。


 で、それが前々世から前世までのツマラナイ過程の話。転生した後、悪役ロールプレイを始めるまでボクは故郷となった“魔界”を気侭に旅して、時に争って。

 前世を思い出さず、好き勝手にしていた結果……

 いつの間にか魔界の女主人───“魔王”っていう巨悪になっていた。

 なんで???


 前々世を思い出した時は、ヤバすぎて発狂しかけた。


 んでまぁーそれから、なんやかんや色々あって、人類と世界規模のデスゲームして、別の神の介入で“勇者”を身内認定しかけて、そんでもう最後は死んだ。

 ちゃーんと、悪役の道を終わらせた筈なんだけど。

 何の因果か二度目の転生をして、今に至る。

 三度目の人生ってヤツだ。

 場所は地球の並行世界である。どうしてですか? なんで地球悪くないやろ。

 ……よりによって、前世生きてた異世界が地球に突撃しごっつんこしたっていうハチャメチャ具合の世界だし。


 ……そんで、まぁ……前世・前々世の記憶を思い出した時点で今世も色々と詰んでてさ? まさか暮らしてた小さな孤児院が犯罪組織のシンパやってたり、物心ついた時点で人体改造済みの構成員の仲間入りしてたり……

 今世もとっくのとうに闇堕ち済みだったってわけ。

 この悲しみがわかるか? わかれよ。これも全部あの神の掌の上だと考えると、無性にキレたくなる。


 なーにが利があるだ。重い罰ゲームにも程があんだろ。今んところ損しかしてないんだけど。か弱いボクが平和でポカポカできる世界線には連れてってくれないんですか?


 まぁとにかく。そんな悪役転生者がボクである。

 暫定とか(仮)とかを、悪役の後ろにずらずら〜と付けて誤魔化したいんだけど、もう手遅れなんだよねぇ。

 なにせ、今世のボクは飲酒喫煙の常習犯で血腥い荒事を夜中に嗜む非行万歳ガールなのだ。あっ、あと一番大事な自殺趣味を忘れていた。足元の地盤と一緒に内陸部の海へ流れてった東京タワーから飛び降りてみたのも、ちゃんと趣味の一環である。死ねないから続いてるんだけど。

 ……ま、荒事云々については、魔王=真宵という答式を成り立たせないように暗躍した結果であり、とういっぱい頑張った結果でもある。ほらボクは悪くない!

 現代に魔王が復活したとか、厄ネタ以上のなにものでもないしね!

 それにしても、これが魔王の末路か〜。魔王が掃除屋。ほんとに笑えるんですけど。


 実を言うと昨日の夜もサクッと掃除()している。

 なんだっけ、組織の不穏分子だったかな。廃墟区画まで頑張って逃げてたけど……残念。全部無駄だったね。

 自慢だけど、ボクから逃げることはまず無理だ。

 今世のボクは異能結社でも中枢に近い幹部格。厨二臭い名称を持つ掃除屋部隊の隊長を任せられた、優秀で残忍なエリートだから。目立ちたくねぇ……

 不本意だけど位階は高いのだ。不本意だけどね!!


 いやほんと……異能部と掃除屋の二足草鞋生活はだいぶクソじゃないか?


「前世も今世も人を殺しすぎじゃない? えーっと、あれ、オテントサマ? って神様も怒っちゃうわけだよ。さっきの蛍光灯とかそうじゃない?」

「こじつけやめろ。地球の神は三百年前に全部死んだからその概念もう無いし」

「そうなの!?」

「そうだよ。それとね、ひまちゃん……キミは踏み潰したニンゲンの数をわざわざ覚えるのかい?」

「蟻さんみたいな例えはやめよ?」


 三世に渡ってクソ神の掌の上なのだ。それにもういないヤツらなんかに愚痴言ったって問題はない。というか、神程度ならもう殺せる。殺せるようになっちゃった。

 流石にあの邪神は……ん、無理。殺せるイメージが全くできない。マジで退治されないかなあのクソガキ……こうなったのも原因全部アイツだからね。記憶とかが戻る前に致命的な一因を打ち込むの本当にやめろ。

 おかげで前々世以外は立派な人殺しちゃんだ。クソが。


 ……自殺願望、希死念慮は生来のモノだ。それが邪神のせいで歪められて、こうなった。根本的な原因じゃあないかもだけどね。でも可能性はありそーじゃん?

 だから今は目を瞑ってほしいなと思う。これは遥か昔、御伽噺の時代からボクを苦しめる、洞月真宵という廃人を突き動かす腐った燃料なのだ。

 この歪んだ心の、存在意義そのものなのである。

 こんなのが自己証明になるとか、正気じゃない。そりゃふっつーにイヤだけどさ?


 朝昼晩に死にたい死にたい連呼してる癖に一向に死ねてないことからは目を逸らすとして。

 頑丈すぎる身体ってのも考えものだ。

 異能部の活動でも、掃除屋としての任務でも、強すぎて滅多に傷なんてつけられないし。せいぜい例の不運で極稀に自傷するぐらいで……手当てをしてもらったのはたった数回しかない。


 あーっ、この世はクソだ。この世の全てがクソクソだ。


「ところで真宵ちゃん」

「なに」

「私たち、どこに向かってるんだっけ」

「……部室だけど?」

「こっち焼却炉だよ」

「……キミを燃やそうって言う無意識の表れだよね。いい加減理解(わか)れよ」

「迷子でしょ?」

「違うんだが?」

「認めて!」

「違うッ!」


 断じて否ッ、このボクが迷子なんかになるわけ……我、魔王の転生体ぞ? 普通にありえないだろ常識的に考えて。まったく困ったヤツだ。

 ……迷子癖は異能とか邪神とか一切関係ないって真実はここで話すことじゃない。いいね?

 スマホすらボクを裏切るとかおかしいだろうが。


 正直マジで欠陥すぎる。なんで魔王やれてたんだ……? うるさい同格に素直に地位譲ってた方がマジでマシだったかもって思うの、これで何回目なんだろうね。

 あー弱肉強食万歳。ボクに被害がなければの話だけど。

 

「ほんと、魔王の意外な一面だよね」

「全然違う。それなら今のひまちゃんも……いや、勇者もこれじゃない感がすさまじくすごいとボクは思うよ。もうほんとにすごくすごい。てか惨い。御伽噺の夢が潰れる」

「重複するほど? てか惨い!?」

「鏡見てみなよ。鳥肌立つよ。いや直に見てもらった方が早いや。ほら見て……ボクの柔肌がこんなに」

「そんなに私のこと嫌い?」


 ……あぁ、そうだそうだ。

 ついでに言うと、ボクの隣で常にニコニコしているこの頭が悪そうなJK、琴晴日葵の前世は“勇者”である。

 勇者時代は可愛いタイプのイケメン美少女だった。

 聖女神ってのに選ばれた聖剣の担い手にして、ほぼ確で逆らえない滅びを迎える世界を救うために魔王と戦った、人類史最強である真の勇者。

 ボクがニンゲンの中で唯一認める絶対無二。

 ある死闘の末に相討ちとなって、何故かまたこの世界で出会うことになった……言っちゃなんだけど、未だどんな感情を向けるべきなのかわからってない相手だ。

 勇ましい者、このボクを唯一殺せる女。

 このボクが、彼女に殺されるのならいいとさえ思える、ボクだけの勇者。


 ……今や見る影もないけど。なんだこの淫乱ピンク。


 なにがどうしてこうなったんだか……真実を追い求めて思考という名の密林へと踏み入る。またの名を現実逃避。大方の原因はわかってるんだ。なぜなに期は昔に終わったものかと思ってたけど、そんなことなかったみたい。でも決してボクのせいではないのは確かだ……と思っていたい今日この頃。

 ……勇者を陥落させたという意味ならあながち……いやよくない。一時の関わりならともかく長期的に関わってる今だと面倒いだけで認めくないぞそれ。

 魅力なんてないからなボク。魔王時代は無表情で無言で圧ぶっぱで平伏せさせてただけなんだからな???

 勇者には……うん、素に近いのは見せてたけど。

 おっかしいなぁ。最初は敵愾心でいっぱいだったのに、どうしてこんなことに……よーく考えてみよう。


 ………


 ごめん。


「……」

「真宵ちゃーん? おーい、おーい?」

「……」

「真宵ちゃん大丈夫? そんな顔暗くして……嫌なことでもあったの? 相談乗るよ?」

「……」

「あのー? 真宵ちゃーん? 無視しないでー?」

「……」

「……真宵ちゃん?」

「うるさい黙れクレイジーサイコレズ」

「!?」


 ……そんな悲嘆とか文句とか苦情とかは取り敢えず横に捨て置いて、まずはこの騒音駄犬勇者のフリしたクソボケ狂女をどうにかせねば。

 マジでさっきから煩わしいんだけど?

 いつもだけどさ、現実逃避の邪魔すんなよなクレイジーサイコレズが!! 勇者の成れの果てめ!!

 それに、手を握って良いとは言ったが、腕を抱いて胸を押し付けて良いとは言ってねぇんだよ偽物清楚。周りのに清楚だの美少女だの詐欺ってるつもりなら辞書でちゃんと意味調べて身につけてるほしい。心の底から悔い改めて、誰もが崇めるマジモンの美少女になってからこのふざけた世界を救ってほしい。

 ……頭の中がピンク一色だから無理無意味かな? 誰もが手遅れって言うのすごくない?


「今、ぜっーたい失礼なこと考えたよね?」

「気の所為だよヒマカス」

「……なんか、さぁ。最近私への扱い雑じゃない?」

「胸に手を当てて考えてごらん?」

「……ほーまんなおっぱいがあるね!!!」

「その脂肪削ぎ落としてやろうか? あ゛ぁ?」

「ごめんごめんごめんごめ……いやでも真宵ちゃんも充分揉めるサイズ───」

「死ね」

「アァッ、目がァァァッ!? 目潰しは卑怯ッ!!! 目は大事にしよーよッ!!」


 ……実を言うと、日葵がいなかった場合のボクは今よりぶっ壊れてて、もっと歪んでいた自信がある。

 前々世は毎日瀕死の病弱ガール。

 前世は星を喰らう魔界の女主人。

 今世は正義の異能学生と悪の掃除屋を兼任しちゃってる非行少女としては、こうも頻繁に触れてくれる日葵は……偶にはセラピー的需要がなくもないかな……って思うのもないわけではない。

 愛情の矛先には目を瞑るとして。

 認めたかないけど、事実なのである。邪神なんかに目をつけられるよりも前から、ボクのながーい人生は散々なのだから。多少の癒しは求めて然るべき。


 本当なら……こんな扱い方するのダメなんだろうけど。そこは彼女からのアプローチの問題なので。

 ボクも相応の扱いをするしかないのだ。仕方なし。

 前世云々の問題も取り敢えず横に置いておく。

 ……でも、今も意外と気分晴れたかもしれない。これは感謝してやらんこともないな、うん。不本意だけど。


「───ありがと、日葵ちゃん」

「よくわかんないけど、どういたしまして?」

「……やっぱ嫌いかもしんない」

「ぇ、私への評価が二転三転しすぎだよ!? もっとこう、やさしくすべきじゃないかな!!」


 ならば即刻ボクへのスキンシップをやめろ。その全てが許容範囲外だ。ぷりぷりするなかわいいからやめろ。マジ気絶させて生きたままホルマリン漬けにしてやろうか。

 とはいえ、百合なんてぜーったいに認めないぞボクは。

 これ以上ねぇ、思い出にある後ろ姿と乖離していくのを見たくはないんだよ!!

 どうしてこんな残念になったのか甚だ疑問である。もう日葵には疑問ばっか挙げてんなボク。


 つかオマエ、元とはいえ中身は勇者だろうが。元魔王と仲良くすんじゃねぇ。

 体裁ってもんがあるんだよこっちには。

 あと自殺妨害もやめたまえ。どうせ死ねないんだから。ボクの心身の健康を守る為には必須だから続けてるだけで多分死ねないから。ワンチャンあるかもだけど。

 どちらにせの、勇者的には賛成するべきでしょうが々…まったく。


「うー……真宵ちゃんが冷たい。毎日こんなにも尽くしてあげてるのに……」

「ホームシェアしてるだけじゃん」

「同棲って言って!」


 どっちかと言うとボク異性恋愛で普通の女の子みたいにキャッキャしたいんだけどさ……このボク限定でハートを全力投球してくる変人のせいでそうもいかないのがねぇ。早急に沈黙させるべきだなこりゃ。キャンキャンあんあんうるせぇんだ。

 同棲云々は……そろそろ解消かなぁ。

 表と裏の仕事で金はたんまりある。引越し資金はキミが思ってるよりもあるんだよばーか。日葵と屋根共有してるのは偏に養父のおじさんへの恩があるからであって、別に日葵と離れることに拒否感はない。

 つまり別居することは可能なんだよ。魔都の特性上新居すぐ建てるのは無理そうだから、マンション暮らしがまぁベストかな。もしくは廃都。フォームグラウンドとかね。

 とりま、まずは適当に優しくして黙らせてやろう。


「ふー……、ほら。早く行くよ」

「やっぱり真宵ちゃんはわからせなきゃ……(小声)」

「え? なに、なんか言った?」

「なんでもないよー! 気にしなくて良いから!! 今日も異能部がんばろーねっ!!」


 ……なんか嫌な予感。隣でニコニコしている不審人物は色んな意味で更生してくれるのだろうか。

 いやその前にボクが更生すべきなんだろうけどさ?

 マジで悔い改めて異性を愛してくれ。キミ、ただボクが好きなだけで性の対象が完全に女性ってわけじゃないの、知ってるんだからね。ベッドの下とかいう安直すぎる所に白馬の王子サマとイチャつくそういう本があるの、ボクは知ってるんだからね。隠し場所ナンセンスすぎない?

 ……その中に、女性同士の本もあったけどさ。

 え、なに。知った経緯? な、夜中にコソコソ読んでたの見ちゃったからだね。やー、注意不足ってこわーい。

 てかベットの下とかホントに安直すぎ。隠す気ある?


「真宵ちゃん」

「ん? なに改まって」

「大好きだよ」

「……」


 だから、あのさぁ……

 その好意の矢印を魔王に向けるのをやめて欲しい。悪役云々よりも悩みの種なんだけど。

 キミは勇者だろう。ボクの、私の野望を打ち砕いた宿敵なんだぞ。死ぬまでに途方もない年月のあれこれがあったとはいえさぁ……そんな恋模様は無意味だろうに。

 これも邪神からの試練ってやつか? 暇なの?


「……よし」


 心を強く持って、ボクは笑みを取り繕う。不思議そうに見つめ返す日葵には悪いけど……ありがたーく思っている相手をぞんざいに扱うのが、ボクっていう人間なので。

 あと勇者の心に釘を刺すべきだと思うんだよねぇ。

 毎日毎日懲りずに好き好きアピールされんの、結構イヤなんだよ。困るんだよ。普通に返答に窮するっていうか、言い淀むっていうか。どっちにしろイヤなんだけど。

 これは突き放すべきだよね。


 だからボクは突き放す───心を鬼に、厳しくね。


「一ヶ月接触禁止令なんてどー?」

「殺す気ですか??? え? え? あ、ふーん───そっかそっかそっかぁ……そういうこと言っちゃうんだねぇ……これはお仕置確定だねっ♪ んふふ……もう明日も寝不足になっちゃうけど……いいよね? ふふ、ふふふ……

 ───絶対に、逃がさないから」

「……ちょ、ちょっと。落ち着こ? それに、ほら、ボクはキミのことを思ってだね?」

「真宵ちゃん」

「はい」

「ね?」

「……はい」


 【悲報】元魔王、元勇者の“圧”に押し負ける【救求】


 いや怖ぇよぉ……そんな目でボクを見るな。見んなよ! 濁ってるッ、すんげー濁ってるよ元勇者の目ぇ! いつものきれーな目からハイライト消えてっから!

 フライアウェイしてるよ! 死んだ魚の目より濁って……これが病み期の勇者様ってか!?

 ヤンデレの素養なんていらないんだけど!? つーかさ、自重しろや中身大人だろうがこんちくしょうめ……


 ……百合な幼馴染兼宿敵を止められる頼もしい人、絶賛募集してます。

 いやマジで。誰か、助けて。


















































 317年前、魔法震災のあの日───悪は斃れた。

───明空の勇者という、世界の救済よりも宿敵であった魔王を救うことを優先した、愛深き人間の手によって。


「ねぇ、やっぱりさ……私たちが不仲だってあたりまえに力説してるの、否定したくない? しよ? 貴女の理不尽な魔王パワーの使い所だよ?」

「紛うことなき事実じゃないか。忠実通りだ」

「世論はクソ」

「諦めたまえ」

「ひ、一人や二人理解者はいてくれる筈……私はそれを、希望に満ちた可能性を信じるよ」

「ごめんボク絶望論者だから真っ向否定するね」

「泣きそう」

「笑いそう」

「なにおー!?」

「んんっ…くふっ、くふふ……ハハッ、ハハハッ! ハーッハッハッハッ!!!」

「高笑いやめて」

「マジ顔じゃん」


 絶望の色が滲む、真っ白すぎたキャンパスは消えた。


 いつだって世界は不確かで、不明瞭で、不条理だ。

 平和を唄う傍らでも、決して交わることのない生と死が常に背中合わせになっている。

 なにもかも全てが無為に散っていく、それが世界。

 あてもない暗闇の中を彷徨う。果てのない闇の中に皆が沈んでいく。

 無意味だからこそ、死んで生きて、そこにいる。

 矛盾を孕んだその定義をもって、死に損なった元魔王はそれが確かな自己証明なのだと虚述する。絶望の先に希望があること自体は知っていても、それがたった一回限りの奇跡であることも理解っているから。

 自分が如何に報われない、壊れた■であるとも。


 あらゆる全てを亡きモノにする“闇”だからこそ。

 幸福も、希望も、愛も、夢もなにもかも、等しく全てを魔王は否定する。


 万物を否定するからこそ───彼女は困惑する。

 かつてこ己が弔って、失い、そうして再び現れてくれた唯一無二の宿敵から。生まれ変わった先でも一切変わらぬ不可解な感情を向けられることに。

 キラキラと煌めく感情が、熱を孕んだ想いの力が、そうあれかしと向けられる誓いの全てが。


───どうしても理解できないからこそ彼女はその“光”を恐れるのだ。





「───何回でも言うね。好きだよ、カーラちゃん」

「───何回でも拒もう。嫌いだよ、リエラ」





 天鵞絨の幕が上がる。絶望のその先、終わりの果てに。たった一度の終わりを目指した御伽噺は形を変えて、また新しく色を塗り替えられて、舞台を彩る。

 開演のベルは鳴った。

 これは、ありとあらゆる“もしも”を積み重ねた果てに、致命的なまでにナニカを一つ掛け違えた───異世界との出会いが、勇者と魔王の和解が、孤独の千年旅が、全てが複雑に絡み合った結果で生まれてしまった、空想が溢れる世界の裏側を紡ぐ、悪役にされた少女の物語。

 ───貌のない月の下、闇より生み出された悪の化身が微睡む夢物語。


 そして───魔王が、“ぬくもり”に殺される物語。


以下、入り切らなかったタグ

・人生三度目

・洗脳

・前世のやらかしが魔王を襲う!

・今世のやらかしも魔王を襲う!

・殺し愛

・喫煙・飲酒・暴行(を主人公がする)の描写あり

・異世界要素強め

・主人公以外の異世界転移者

・ほのぼの

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