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まおー様、逝っきまーす!  作者: 民折功利
楽園終日譚
13/51

第2節:とある計画の終着点

───天井部が大きく吹き飛んだ玉座の間。

 極光の煌めきが空間を彩り、魔城の名残であった瓦礫は四方に積み重なっている。砕け散った魔法陣の残骸は床に散らばって虹色の残照を残して、土煙が視界を塞ぐ。

 あまりに苛烈な戦場痕。

 空間にも亀裂が入るという非現実な光景が一面に広がる決戦の地、魔王城。


 その煙の向こう側に───勇者リエラと魔王カーラが、五体満足のまま立っていた。


「───やってくれたな」

「───私の勝ち、だね」


 ボロボロになった黒鎧を纏う魔王。

 フラフラになって聖剣を握る勇者。

 計画を果たす寸前に打ち破られたというのに、カーラは無表情のまま何処か愉快気に口を滑らす。ボロボロであることに変わりはないが、どうにも勇者よりかは余力が有り余っている様子。

 されどリエラも倒れることなく……それどころか彼女もまだ戦えるだけの余力があった。けれども、流石に文句の一つや二つは言いたくなるようで。

 カーラの異常な再生力にリエラはケチをつける。


「なんで五体満足なのさ……その再生力、治癒限界っての忘れちゃったの?」

「───【無情闇無ヒューマノイズ・ベイル】。

 表情を無に固定、また抑制することで異常な身体機能と不変の如き防御を手に入れるという、陳腐な代償ありきの身体強化だ。

 再生力、というよりかは……我が肉体のあらゆる異常を否定して常に完全を維持するんだ。つまり、私の身体には傷などつけられない」

「……冗談キツいんだけど」

「残念ながら事実だ。覆しようのない、私の権能さ」

「それと、まさか……さっきからずっと無表情なのって、それが理由?」

「肯定だ……ふむ、そうだな。術を解いて欲しければ私を笑わせてみろ。綻びが生じれば再生力も薄まる」

「無くならんのかーい」


 それこそが魔王カーラの無尽蔵な体力の絡繰り。表情を犠牲にするだけで破格の身体機能と強化、超速再生などの有用な力を手に入れることができる権能だ。

 疲弊するリエラとは違い、カーラは常に十全だ。


「なんだ、ここで終わりにするか?」

「……はぁ? 全然、まだ戦えるんですけど。それにまだ、あの脆さで最終兵器名乗ってる魔法陣で調子乗ってた宿敵殺せてないもん」

「あ゛?」

「今だッ!」

「卑怯な」


 饒舌に煽り合う。例え、長年の計画を止められようが、千年近く住んでいる実家を破壊されようが。最終兵器たる魔法陣を破壊して疲れていようが。

 勇者と魔王。二人の戦意は留まることを知らない。

 まだ、まだまだ決戦は終わっていないのだ。どちらかがどちらかを葬るまで、二人の戦争は終わらない。


 だからこそ、二人は再び剣を取り合って───…


───その時。


「「!?」」


 戦闘の余波、エネルギー爆散の余波でヒビが入っていた空間の亀裂が───甲高い悲鳴のような音を立てて、更にバラバラと崩れ始めた。

 亀裂に耐えきれなかったか、抑えきれなかったか───それとも、何者かの差し金か。

 

「なに!? って、そういえば……この亀裂はなんなの? あーっもう、色々起きててよくわかんない! バカに優しくないよ本当! で!? 今度はなにしたの魔王!」

「誤解だ。それに原因など考えるまでもない……純粋に、私たちの力に世界が耐え切れずに裂けて穴が空いた。ただそれだけのことだ」

「えっ」

「加えて先程のエネルギーが亀裂に流れ込んで……あぁ、成程。そうなったのか」

「自己完結やめて」

「……要するに、我々が想定していた(・・・・・・)、最悪のお出ましと言うわけだ」


 キャパオーバーになったリエラに、カーラは冷静に懇切丁寧に説明してやる。

 悪いのは魔王だけでなく、勇者も原因となる事象。

 空間に亀裂を入れて崩壊させるという、あまりにも摩訶不思議な現象は本来ならば起こらないが……規格外二人はその異常を見事に成し遂げた。


 戦うだけで世界を滅ぼせる怪物───それがカーラなのだと再認識させる。同時に、怪物についていける戦闘力を有するリエラの異常さが際立つのだが。


 カーラの説明の間も、リエラは視界を穴に向けていた。自分の目で見ないと信じない、信じれない……というわけではないのだが。ただただそれから目が離せなかった。

 世界の外殻というモノを───そこに隠れ潜む、異形の存在を。


「なに、あれ……」


 亀裂の遥か向こう側───永遠に広がる虚無から、白い粘性を纏ったナニカが隙間から覗く。そのあまりに異様な存在感に、生理的嫌悪を抱く。

 精神を削る白い触手の集合体は、うねうねと触手を亀裂から這わせて、なにを目的としてか……はたまた目覚めを妨げたナニカを目指しているのか、世界の内側へ侵入してくる。


「……120年前、クロイハーツ旧教皇領にておかしな魔力隆起が観測された」

「?」

「死徒十架兵、“邪影”と“無貌”、“宝核”……そして魔女らの綿密な調査の結果、その原因は1000年以上も前に世界に降り立った“外部の神”の生命活動であることが判明した」


 吸盤もなにもない真白の触腕は、魔王軍全員が警戒する不確定要素であり、百年計画における最大の懸念点。

 それは世界を蝕む神。

 エーテル世界の“外”から降臨した、名も知らぬ大神……その分体。


「便宜上、我々はあれを“外なる神”と定義して追加調査を実施……過去視や魔力分析、古文書、戒律などの幾つかの方法でヤツを調べた。結果、かの神こそが我々を悩ませるエーテル世界衰退の原因であると、117年前に断定した」

「えっ、ちょ、それって……!」

「神秘顕学会、だったか。そいつから聞いただろう。ここ数百年で世界全体の魔力濃度、魔獣の活発化及び生息数の減少、精霊の消滅事件に自然でも人為的でもない不可解な天変地異の存在を」

「……殆どの人は魔族の仕業って言ってた。でも、確かに極小数はそれ以外の“ナニカ”を……疑ってた」

「そうか」

「でもやっぱり「魔王カーラの仕業だ!」ってもっともな結論出してたよ」

「ここは泣くべきか?」


 魔王は語る。自分よりも遥かにおぞましい……不可解な神の存在を。


 それこそがエーテル世界を滅びに導く、本当の元凶。


「あれは願いを叶える神───言うならば願望器だ」

「願い……ってことは」

「この地にヤツが顕現したとされる1000年も前。誰かが出来損ないに祈って、願ったのさ」


───この世界を滅ぼしてください、とな。


 リエラは幾度目かの息を飲む。

 自分の知らなかった真実が、情報が怒涛の勢いで脳へと流れ込むからか、耳を疑う暇もない。それは彼女を勇者に選定した“人類の神”でさえも知らない真実故に、瞠目して困惑するのも無理はない。

 リエラの反応に新鮮味を感じながらも、カーラは言葉を続ける。


「狭間に潜むヤツは、寝て起きてを100年の長いスパンで繰り返している……先程述べた不可解な事象は、こいつの寝覚めの影響に過ぎん」

「寝て起きるだけで? ……なんというか、すごいね」

「それで迷惑を被るのは我々だがな……まぁ、同時並行で世界を滅ぼす準備をしていたようだが」

「……」

「我々魔王軍の第三目標───それはヤツを『狭間』からこちらに引きずり出すこと。その為には世界を存在を維持できなくなるぐらい破壊する超規模な破壊が必要だった」

「ッ、まさか……さっきの魔法陣って!」

「ご明察。全ては世界の壁を取り払うことで、あの触手を呼び寄せる為───ククッ、例を言おう。お陰で、我々は最も憎むべき害虫を殺す機会を得た」

「はぁ!?」


 魔王軍の目的はエーテル世界の破壊。確かにそれは現行制度及び地上国家の一掃、そして惑星規模の破壊活動をも念頭に置いた百年計画であった。

 しかし、その根幹には、裏に潜む“外なる神”を表舞台に引きずり下ろすという真実があったのだ。


 そう、全てはこの時の為───世界を滅ぼす為に、この世界を蝕む神を殺す。

 世界を滅ぼすのは私たちであって、お前じゃない。

 そう証明する為に魔王たちは立ち上がった。元より世界そのものに悪意があった集団だ。突拍子もない破滅願望を現実化する計画に乗るのは早かった。


 魔界から神に干渉する方法はあまりに少なく……かつて手段を有していたカーラは、別の神によって呪われて力に制限をかけられてしまい、最も手早く済む次元干渉が一切できなくなっていたのも計画性の幅を狭めた。

 故に魔王軍は選択した。100年にも及ぶ大戦争を。

 ニンゲンもエルフもドワーフも……あらゆる地上種族を根絶したのは、神殺しとはまた別の思惑で、新しい世界を構築する前段階……魔界の代わりになる魔族の為の楽園を創造する為に、見境ない殺戮を始めた。

 楽園たる“新世界”の創造、既存世界の破壊、神の抹消。

 魔族優生思想とは言わないが、この三うの目標を掲げて魔王軍はその猛威を振るってきた。


 そして今、魔王カーラの最終計画が果たされる。


「これが正攻法だ───万事問題なく、全て整った」


 つまり今、魔王軍だけが知っていたエーテル世界崩壊のシナリオが幕を上げるのだ。


「……あっ、だから簡単に魔法陣壊させたわけ!?」

「さてなんのことやら」

「最後抵抗弱いなーって思ったら!! そーゆーことかクソ魔王ッッッ!!」

「クソとはなんだ猪突猛進短慮勇者」

「えっそんな言う???」

「うん」


 そう、あの一瞬。

 リエラの魔法陣破壊に対して、カーラが最後まで攻撃に抵抗しなかったのも、最終的には例の神を誘き出す計画を満足に達成できるとわかったから。

 全てはカーラの計画通り。

 本心的には魔法陣からビームッ! で惑星ごと粉砕で勝つつもりだったが。勿論のことエーテル世界が滅んでも生存できる技術を魔王軍は持っている為、やった後のことなどなんの問題もない。


 そう、ここまで戦いは勇者リエラの勝利でもあり───魔王カーラの作戦勝ちでもあったのだ。


「そーゆーのさ、魔王軍だけで共有しないで、私たちにも教えようと思わなかったわけ?」

「貴様らニンゲンが魔族の言葉を信じるとでも?」

「……えっ、とぉ……私は聞くよ! 話はね! 他の人は、多分無理かも!!」

「わかってくれてなにより」

「むむむ……」


 カーラの言う通り、世界規模の反魔族政策で種族単位で魔族を嫌悪憎悪する地上人類がその言葉を受け止めるとは思えない。無論例外など五万といるだろうが……わざわざ真実を伝えて協力を要請するなんてツマラナイこと、まず選択しない。

 そもそも魔族たちも大半が人類を毛嫌いしているのだ。

 魔族の精鋭が努力して調査したことを、平和にかまけて気付けてすらいない人類に開示する……そんな善意など、持ち合わせていても行動する意味が、価値がない。

 だから人類は何も知らぬまま───ただ魔王による世界滅亡を食い止める戦いに身を投じていた。


「ピエロじゃん」

「ククッ、さぁ……それはどうかな。私は興味もないが、貴様らの信念を間違いだとするつもりはないぞ? それに、世界を守る意志は咎める余地がない正しいモノだ」

「……魔王に慰められるの、なんか複雑」

「受け止めるんだな」


 そもそも神を滅ぼしてから世界も滅ぼそうと暴れたのが魔王であるからして。

 どちらにせよ人類は絶滅させる計画だったので。

 人間が手を取り合って魔族根絶に動き出したのは、何もおかしな話ではないのだから。


 勇者を慰めながら魔王は神の降臨を見届ける。

 亀裂は大きくひび割れていき、彼方より広がる虚無から身の毛もよだつ神気が溢れ出てくる。無数の触手が魔城を這いずって、空間全体が悲鳴をあげる神秘質量が、彼らの世界を蹂躙する。


 おぞましい願望器───どんな願いであろうとも、必ずその願いを叶えてくれる神。あまりにも夢のある真の話。暗がりにいる小人たちはその光に手を伸ばし、きっと夢は叶うのだと信じて足掻く。

 その願いが歪まされて叶うのだと知ることなく。

 お金が欲しい。臓器の代わりに金が手に入る。

 あの人を妻にしたい。あの人は死に、彼女とそっくりのナニカが妻となる。

 王様になりたい。既にある国が更地となって、ナニカが国民として仕える異形の国の主にされる。

 盲目の少女が星を見たいと望めば、隕石が降ってくる。

 決して望んだ形に叶えることはない。過去全てを調べて知識として得ているカーラは、確固たる意志をもって複数回目の神殺しに挑む。


 触手が蠢く度エーテル世界は悲鳴をあげて壊れていく。

 触手が現れたのは、魔王城だけではなく世界各地───今、世界の各地で触手による被害が多発していた。触手に絡め取られた生命体は一瞬にして生命力を吸い取られて、死んでいく。人も獣も魔族さえも、全ての命が奪われる。

 起床した神の捕食活動───寝起きの朝餉。

 もっと言うならば、世界を滅ぼすという願いを叶えんと無意識に動き出しただけ。機械的に役目を遂行する神は、地上に生きる全ての生命体を貪り喰らい、エーテル世界の滅びを促す。

 上空に滞空する……徐々に下降していく魔王城からでも聴こえる悲鳴───それを聞き逃さないリエラは、悲痛に顔を歪め、元凶である眼前の異形を力強く睨みつけた。

 大切なモノを奪おうとする悪に、仇を打たんする目で。


 勿論カーラとリエラにも触手が襲いかかるが……二人はぴょんぴょん跳んで回避する。


「邪神じゃん」

「わかりきったことを───ッ、もう目を開くか。勇者、今すぐ目を逸らすか閉じることを推奨する」

「ぇ」


 カーラの忠告通り、その瞬間───亀裂の中心にある、白い肉塊の中核に神の瞳たる巨大な単眼が現れる。

 畏敬ある青の神秘が、眼前の魔王と勇者を認識した。


【───■、■■■───…】


 眼球から発せられた音にならない凶声が、魔城の空気を震撼させる。目を見つめた者、音を聞いた者を発狂させる異形の福音をもって、眼前に並ぶ二人と交信を試みる。

 不理解は恐怖を産む。

 その体現者たるかの異形を見て、リエラの肌が粟立つ。息が詰まる───それでも前を見続けたまま、目を離さず逸らすこともなく、リエラは神を見据える。


「ほぅ?」


 その胆力に、精神力にカーラはリエラを再評価した。

 人間であろうと魔族であろうと、天使であろうとも。今目の前に顕現した外なる神の御前では抵抗など不可能で、己に力を魅せたニンゲンであろうと、何をどう足掻いても失神して然るべきだろうと思っていたのだ。

 だが───己の野望を一部とはいえ阻止してみせたこの勇者は、意識を保ったまま戦意を途切れさせずに二本足で立っている。

 それどころか神を睨みつけ、挑もうとする気概を持っている。


「なんて言ってんのこれ」

「生憎だが異次元の翻訳スキルは持ち合わせていない……わかりたくもないな。理解すれば最後、発狂するのは言うまでもないだろうからなぁ」

「待って怖い」

「知識不足め」


 言語理解=SAN値直葬という未来を示唆して、カーラは対話を勧めるがリエラは全力で拒否した。言葉の通じない相手ともわかりあいたいと思うことはあるが、こちらからどうしようもない相手をどうこうするのは不可能に近い。

 理解しようにも相手も理解を示してくれなければなにもできないように。


「……会話がしたいのなら、そっちも私たちに合わせればいいのに」


 悲しそうに目を細めて神の瞳を見つめ返したリエラは、聖剣を一回空振りして魔力を流す。

 言葉が通じないなら、もうどうしようもない。

 敵意をもったままこちらを害するのなら、討伐するしか方法はない。

 それに、相手は明確に世界を滅ぼそうとしている敵だ。あの魔王とも敵対している第三陣営。

 ならばそれは───“勇者”が斬るべき敵である。


 リエラの切り替えの早さはカーラも驚きのもので、直様この場のなによりも先に斃すべき標的を、世界の大天敵を見据えていた。殺意はその冷たさとは反対に清流のように澄んでおり、目を逸らせば見失ってしまう程静まっていて───完全に研ぎ澄まされている。

 ものの数秒で意識を切り替えたリエラは、彼女の様子を興味深げに観察していたガーラの隣に並び立つ。


 本来ならば責められる蛮行だが……今この場に、それを咎める者はいなかった。


「これ、私も戦っていーんだよね?」

「……挑むのも逃げるのも、どちらでも構わないが。私は強制も要請も受諾もするつもりはない。これは夢の果て、その前勝負なのだから。まぁ……そうだな。貴様は貴様の好きなようにするといい」

「そっか。それじゃ、私も混ざるね───神殺し」

「大罪だぞ? 成功すれば、私と真の意味で同格になる……泣いて喜べ、ニンゲン」

「わーいやったー」


 リエラの決意は固い。世界の為に、名も知らぬ神を討つ覚悟をこの短期間で決めた。神殺しという大罪に怯むことも悩むこともない。

 リエラはその想いを、世界を守る意志を覆さない。

 その為ならば───憎き怨敵である、魔王と手を組んでやるのも吝かではない。


「あのキモイのぶっ飛ばしたら……世界滅ぼすの、やっぱいーやってなってくれたりする?」

「希望的観測にも程があるな。あるわけないだろう」

「そっかぁ。結局は一対一対一ってことか……これは腕が鳴るなぁ……ねぇ、倒すまではお互いには攻撃しないって約束しない? しよ? メリットはあるよね。ね? ね?」

「必死だな」

「そりゃそーでしょ! 魔王と邪神を同時に相手するとか、前代未聞だよ! 死んでも命が足りないよ!! これでも私葛藤してるんだよ、今!! わかる!?」

「わかったわかった。休戦協定と結ぼう……共闘だ」

「やった!」


 二人は並ぶ。数分前まで世界の運命をかけた戦いに身を投じていたにも関わらず。その様はまるで長年付き添った戦友かのように、指し示すかのように神を睨む。

 昨日の敵は今日の友。この二人に限ってはまた異なった意味合いになるが……

 今この時、勇者と魔王が共通の敵を前にして……最初で最後の共同戦線を張る。


 刺さるような二つの戦意に、殺意に今更気付いたのか、目覚めたばかりの異形が(まなこ)を開く。


【■■■■───■、■■■───!!】

「煩わしい、が……私たちが敵だとはわかったようだな。意外と知能はあるのか」

「敵意とかあったほーがいーよ。見向きもされないよりはマシじゃない?」

「……否定はしない」


 産声のように叫ぶ外なる神に、二人は刃を向けて笑う。


 今ここにいるのは、世界を救う者と、世界を滅ぼす者。相反する最強の女たちが、エーテル外の神を滅する───幾度目かの神殺しに、秩序の破壊に挑む。

 そこに怯えや恐れはなく、研ぎ澄まされた殺意が力強く渦巻いている。


「こいつが終わったら再戦だ───文句があるのならば、次も貴様が止めればいい」

「……それもそっか。うん。それじゃあ───やろっか」


 希望と絶望を有す巨星が、新たな一歩を踏み出した。


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