第二歩!
俺は今、商人さんの馬車に乗せて貰っている。
森の切れ目を少し進むと、街道らしい道が見えてきた。
ひとまずその道を進んでいると、後ろから声を掛けられ、振り返すと馬車に乗った人の良さそうなおじさんが乗っていた。
「お前さん、一人かい?」
「ああ、道に迷って森を彷徨ってたんだ。 やっと街道に出れて歩いてたんだ。」
「へぇ!それは難儀したな?!どうだい?近くの村だが、乗ってくかい?宿と飯が食えるぜ!」
「それは有り難いんだが・・・。 俺はハンターでもないんだ。 身分証がなくても入れるの?」
「へぇ!そんな辺境もあるんだな!まあ、ギルドもあるからそこで発行して貰うといい!」
「そうですか。 でも、俺は手持ちが・・・。」
「そうか?でも、ここでは換金出来る物があれば、入場料代わりになるぞ?」
「それは良いことを聞きました。 なれば、それで・・・。」
オークの肉やゴブリンの耳、獣の皮もある。
ひとまずはオークの肉を出そう。 それで、ギルドで登録すれば、ハンターだ!
門も換金素材で銅貨3枚分であとは現金で支払われた。
「このまままっすぐ行った大きな建物が、冒険者ギルドだ。 そこでも登録料がいるが、それも素材で代用できるはずだ!」
「ありがとうございます。 乗せてくれてありがとう!」
「こちらこそ!今度は俺の店で買い物してくれ!市場にあるからよ!」
「わかりました!その際はよろしくお願いします。」
「ああ!」
乗せてくれた行商の商人に別れを告げて、冒険者ギルドへ向かう。
ギルドまでの道は、市井の人々の生活物資が所狭しと、売られていた。 俺は今は文無しだから何も買えないが、お金が手に入ったら何か買おうと、ギルドへ入る。
「ん?新入りか?坊やはおうちに帰りな!」
「ママにやさしくしてもらいなちゃいよぉ~!」
「・・・。 これが恒例行事か?」
「はあ?お前のことを思って言ってやってるんだぜぇ?」
話し掛けてきた冒険者は酒臭かった。 どうやら完全に小馬鹿にしているようだ・・・。
俺は最後通告をする。
「確かに十五だけあまり舐めると・・・『ザクッ!』こうなるよ?」
「えっ?ぎゃあぁぁぁぁ!!!足がっ!足がぁぁぁぁ!!!」
「なにすんだ!てめぇ!」
「喧嘩を吹っ掛けたんだ。 仕方ないだろうが。 それとも・・・お前も?」
そう凄むと、足を薄く切られただけだが、大げさに叫びながらギルドを出て行った。
俺は彼らを見送ると、受付らしい場所へ向かう。
さっきのやり取りを見ていた嬢たちは、俺の接近にビビっていたが、出来るだけ笑顔を作って対応してくれた。
「ぼっ、冒険者ギルドへようこそ。 何の御用でしょうか?」
「冒険者登録をしたい。 どうすれば良い?」
「えっ?!未登録の方だったんですか?!」
「ああ、今年で15になった。 それで登録に来た。」
「そっ、そうですか・・・。 では・・・。」
受付嬢は登録のための用紙を出しに一時下がる。
その待っている間も周りの冒険者達は、小声で話していることは聞こえていたが、あえて無視した。
受付嬢の出した紙に必要事項を記入し、返すと口を開く。
「実はこれまで討伐してきた魔物もあるんですが・・・。」
「討伐証明部位と素材があれば、査定してお支払いいたします。」
「では、こちらに。」
そうして出してきたトレイを俺の前に出してきた。
だが、明らかに足りない。
そこで受付嬢に声を掛けた。
「すいません。 これだと足りません。 かなりありますので・・・。」
「失礼ですが、どれくらい・・・?」
「えっとゴブリンの耳なら200くらいで、上位種が50位。 あとマンティスが羽と鎌が30ありますが・・・。」
「へっ?少々お待ち頂けますか?」
それだけ言うと、また下がっていった。
10分ほどすると、受付嬢は慌てて戻ってきた。
「お待たせいたしました!付いてきてくれますか?」
「はい。 分かりました。」
俺は彼女の後について解体スペースへと向かう。
そこには解体場の職員がおり、入ってくる嬢に声を掛けてくる。 こちらからは聞こえないが、俺の査定予定の素材の置き場を聞いているようだ。
受付嬢は解体場の職員に場所を聞いたらしく、俺に声掛けをしてくれた。
「お待たせしました!そちらの隅なら良いそうです。 お願いできますか?」
「ああ、わかった。 では出しますね?」
「はい!お願いします。」
俺は低ランク素材を総ざらいで出した。
それでも一山はある。 解体場の人間も笑顔が引きずっていた。 それをあえて気にせずに出した。
出し切ったことを話すと、彼女は待合で待つように言われたので、待つことにした。
その間もこちらを見定める気持ち悪い視線が刺さる・・・。
あまりいい気持じゃないな・・・。 早く出ていきたい。
そんな俺に声を掛ける冒険者がいた・・・。
振り返ると、明らかに年上だがそんなに離れていなさそうな女性冒険者が、声を掛けてきた。
「何か?」
「そう警戒しないでおくれよ。 さっきの喧嘩を見ていたんだけど、アンタ強いだろ?今度、組まないかい?あそこに座っているのがメンバーなんだけどさ!」
彼女が指差した先に3人の女性冒険者が・・・。
だが、女性だけのパーティーに俺?と、思いながら聞いてみた。
「自分は男ですよ?良いんですか?」
「確かにな!だけど、15だろ?あたし達は年上だよ?あんたみたいな子供、変なことはしないよ!」
「・・・。 分かりました。 それでどうしますか?」
「あんたが良ければ、明日の早朝にここに集合というのはどうだい?」
「分かりました。 よろしくお願いします。」
「ああ、こちらこそ!」
俺はその女性冒険者の手を取り、握手すると、彼女は笑顔でメンバーの元へ戻っていった。
鑑定のスキルで、嘘をついている様子はない。 怪しい様子は見られない。
まあ、良いか・・・。 明日、頑張るか・・・。
俺はその後の査定の終わった金額に少し驚きながら、受け取ってから収納にしまう。
当然、カバンに入れるように偽装して置いた。
そうすると、ギルドを出るとやはりというべきか、追ってくる屑が数人が追いかけてきた。
あえて行き止まりの道に行くと、すぐに7人の冒険者崩れらしい男が来た。
「何の用ですか?」
「お前・・・ギルドでかなり高額な報酬を貰ったろ?俺らに譲ってくれよ・・・。」
「そんなことする気ない。 失せろ。」
「構うこたぁねぇ!やっちまえ!」
「「「「おおおっ!!!」」」」」
相手はチンピラということもあり、あえて銃は使わずに体術のみで戦うことにした。
最初に向かってきた槍持ちを手甲で、ずらしから鳩尾部にフックを叩き込む。 短剣持ちと斧を振りかぶった男が挟まれるが、短剣持ちの腕をつかみ、斧の振り下ろされる位置に誘導。 自滅させ、振り下ろした斧で仲間がやられた事にひるんだ男の横っ面をハイキックを食らわし、残党はまだいるものの、すでに戦意喪失している。
「今なら逃がしてあげるけど?」
「「「「ひぃぃぃぃ!!!」」」」
彼らは倒れた仲間を引きづって去っていった・・・。
俺はもう一つの隠れている集団に声を掛けた。
「いつまでそうしているんです?」
「やばっ!バレてた!」
申し訳なさそうに出てきたのは・・・さっき明日の依頼を受ける女性パーティーだった。
実は最初から気が付いており、あえて気が付いていないフリをした。
だが、今はその必要がないので、固まっている方向に声を掛けた。 すると、すぐに反応があった。
どうやら俺の宿を突き止めるべく、追い掛けていたが、その矢先にチンピラに絡まれたので、実力も知ろうとして、隠れてみていたそうだ。
「それなら手を貸してくれても、良くないですか?」
「へへへっ、いやぁ・・・組むに当たってさあ、実力も知っておこうかなぁと、思ってね~。」
「それならギルドの訓練場で模擬戦でもすれば良かったのでは?」
「それもそうだけど・・・手加減をされたら・・・分からないじゃん?だからちょーと悪いかもと、思いながらも見に来ちゃった!」
全員が苦笑いを浮かべながら、こちらを見ている・・・。
差し金ではなく、本当のようだ。
ため息を付きながら聞き返すことにした。
「それで?」
「えっ?」
「それで合格ですか?私は?」
「ああ!勿論、合格だよ!!明日の心配が吹き飛んじゃったよ!まだ隠していることはありそうだけどもまあ、そこはおいおいで良いよ!」
「改めまして・・・明日はよろしくお願いしますね。」
「「「「うん!よろしく!」」」」
こうして彼女らと別れ、俺は宿に着いた。
明日のためにしっかりと休養とイメトレをして、眠りについた。