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第十九歩

戦場はすぐに出来た・・・。

敵対国は一番分かりやすい戦線に主力を置き、この国を攻め立てている。

そうした戦線には、金に目のくらんだ冒険者や手柄の欲しい新興貴族家、傭兵団が文字通りの肉の盾や防壁となり、戦線は一進一退となり、互いにじり貧となり、決め手が欠けた。

防衛側は、陣地や要害を盾に防戦に努め、攻撃側は隠れるところの少ない場所をひたすらに進むしかない。


互いに決め手を失いつつある主攻戦線だが、互いの後方戦力には開きがあった。

相手側には予備の軍が存在し、こちらはいるにはいるが、少数の貴族の私兵や近衛兵のみで、予備の戦力は乏しかった。

 物資の面はやはり守備側に利があるが、主力が離れられないのなら、攻め手は次の策が打ちやすい。

こうして大きく迂回する形で、主力部隊が駆けつけることが困難な辺境のダンジョン都市を目標にした。 このダンジョン都市は、自然の要害に守られてはいるが、有力な冒険者や後方にいた軍も半数以上が、主攻撃線へと招集されたために都市には、僅かな警備兵と冒険者、騎士団の小隊しかおらず、敵からすれば、好都合な場所だった。


「我らは大きく迂回し、こちらの辺境より攻め上がります。 それを感づかせないよう、攻め立ててください。」


「うむ。 相分かった。 だが、大丈夫か?」


「はっ!この辺境地は魔物の襲撃があるため、冒険者が見張りに付いておりますが、それもたいした人数ではありますまい。 それにその後ろの騎士団も大部分が動員され、冒険者も同様。 そこを抜ければ、彼らの背後と都を狙うことが出来ます。 それに情報では多少の防備はあるようですが、予備軍の戦力であれば、抜けないはずはないと思われます。」


「・・・。 分かった。 貴殿は予備軍一個を率い、彼の地を攻めて背後を付け!状況に応じては、本拠地を攻めることも許可する!」


「はっ!」


こうして国のお偉方達が気がつかないうちに予備の軍勢と一部の前線部隊が、夜陰に乗じて、南への侵攻を開始した。

出来るだけ人目に触れぬように進み、運悪く目に付いた者は・・・闇に消えた・・・。

そうして十数人の無為な人と罪人予備軍を始末した後、彼らは南の辺境とも言うべく街の十数キロ手前の場所に野営し、偵察を放った。

 報告書には掘っ立て小屋のような監視所に冒険者が数名がいるのみとの報告を受けていた。

だが、実際に偵察隊が見てきた物は違っていた・・・。

そこには小高い丘や岩場、谷間などの自然の立地に合わせた砦と言うより城塞が出来ていた。


「こっ、これは・・・?」


「最初の報告と違う。 まずは報告を・・・ぐふっ!」


「どうし・・・かはっ!」


偵察に来ていた兵士が音もなく、消された。

それの時間差もなくだ。 勿論、召喚兵の行った事だが。


一方で放った偵察部隊からの報告がなく、敵情を知れぬ将官はまだ安易に考えていた。

軍において多少の怠惰や怠慢はよくある事と、追加の偵察隊を放った。 今度は怠惰なことはない私兵からだ。 だが彼らも戻ることがなかった・・・1人も。


「なぜ偵察部隊が戻らん?!敵の状況がわからんではないか!!」


「偵察部部隊は確かに向かいました!ですが・・・帰還した者が・・・おりません。」


「くそう!最初は逃亡だと思ったが、我が精鋭の斥候兵でも駄目とはっ!!この地にはすでに・・・いやそんなことはない・・・。 はずだ・・・。」


攻撃部隊・・・軍団の司令官である彼は、度重なるベテラン斥候兵の行方不明に苛立ちと不安を感じていたのだが、大軍出来ている事でその不安をねじ伏せた。

だが、行動をせねばならない。

翌朝に進軍し、敵の防護線へ向かうことにして就寝することにした。


 一方、偵察に出していた召喚兵である軽装足軽から知った俺は、敵の部隊の規模と目的・編成までを知った。


「軽装兵と重装兵、騎馬兵に重装騎兵・・・弓兵に魔道兵、攻城戦用部隊もいるようだね・・・。」


「主殿・・・。 彼らは攻めてくるだろうか・・・?」


「ん?それは当然だろ?攻城塔はもって来てなくても破城槌は、持ってきているんだからさ。 まあ、彼らの定石が崩れるとは思うけどね。」


「・・・。 このような城は見たことはない。 彼ら定石は・・・崩れるぞ・・・。」


「まっ、そうだろうね。 この城は・・・彼らの城の作りではないからね。」


中世の城のように街や拠点を包むような城ではなく、戦国時代の城のような幾つもの曲輪や堀、櫓を交えた物で、当然だが幾つもの射撃点や曲線で入り組んだ九十九折りの侵攻路に櫓自体を直接攻撃が出来ないように回廊を山を切り抜くように作ったことで、山を掘らずには基点を壊せない。

 彼らは定石通りに攻城兵器を前線に置いた状態で、魔法と矢での先制攻撃が行われた。


「敵は亀のように引きこもっているだけだ!入ってしまえば、こちらの物だっ!!押せぇぇぇ!!!」


「「「「おおおおっっっ!!!」」」」」


前線指揮官の怒声が響き、兵士が槍や破城槌を携えて、突っ込んでくる。

前線の銭雇いの兵士や下級貴族の私兵や傭兵団が、突っ込んできた。

初戦はどこも同じで、互いに矢玉の応酬したのち、前線まで来た攻城兵器で城の門を破る。

こちらの召喚兵達も勇猛果敢に防戦したが、やはり数には勝てずで第一の門を破られた。


「敵の城門が破れたぞ!イケェェェ!!!」


「一番乗りは俺らだぁぁ!!」


「いやっ、我らだっ!」


手柄欲しさに乗り込んできた彼らはこの城の恐ろしさを知る事になる。

門を破った回廊は広がっているはずが、そこからすぐに折れ曲がり、複数の火点がすでに構えられており、無鉄砲に突っ込んできた彼らにさらなる矢玉が降り注いだ。

彼らは柵や岩によって真っ直ぐに進めない上に、死角のない程に幾つもの方向から飛んでくる火炎筒(火炎瓶)、油瓶が投げ込まれて城門を抜けたそこは獄炎の坩堝が出来た。

火炎に身を焼かれる者、矢玉に射貫かれて倒れる者。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!火がっ!火がぁぁぁ!!」


「ぐふっ!」「がはっ!!」


「火を消してくれぇぇ!!」


火達磨になって転がる者や矢玉で身体を貫かれ、火が自身の身体を焼かれ、攻め手の兵は後続の兵で撤退も出来ず、攻め手は負傷しながらも次の城門にたどり着くが、攻城兵器は焼かれ、魔道兵はローブ毎焼かれた上に城門は手持ちの槌で叩くのみだ。


「これは・・・もう戦ではないな・・・。」


「ああ、乱戦になってしまい、先陣は場内に取り残され、後陣はこちらの後方陣地から攻撃を受ける。 その上・・・見てみな。」


俺は遠眼鏡を彼女らに渡す。

そこには混乱している後陣の砂煙が。

明らかにこの城を迂回して・・・又は隠し通路から後方へ回り込んだ部隊が、混乱した前線に判断を迷っている最後尾の軍を攻撃していた。

突破が出来ると慢心していた彼らの安全圏と目される場所に猛攻を仕掛けた。

油断していた彼らに対応できる部隊は少数らしく、切り込み部隊は後陣を大打撃を与えると、追撃はせずにそのまま退却した。


「これは・・・。 もう・・・安全圏がありません・・・。」


「だな。 一度恐怖を知った者は安眠は出来ん。 まあ、すり潰される前に退くか、泥沼な消耗戦に持ち込まれるか・・・。 二者択一だな・・・。 だが、あちらは攻め手だと過信して、こちらの縦深陣地に飛び込んだ。 前との連絡が届かない中で後方も脅かされる。 まあ、どちらにしても攻守が変わったことを自覚をしていれば、下がるのが吉だ。」


「下がるかのう・・・?」


「まあ、退けないだろうね。 彼らは軍人だ。 功を欲する。 敵の柵に嵌まり、退きましたなど上官に

言えば、良くて降格。 悪ければ処断される。 だが、次にはつながる。 そこを選べるかだな。」


「今までの彼らでは・・・。」


「ああ、選べない。 むしろ進まなければ、いけない状況になっている・・・。 だが、それでも下がらなければ・・・。」


「全滅は・・・壊滅は免れないと・・・。」


しかし、敵軍は下がらなかった・・・。

火が落ちたことで、彼らは落とした壱の丸の曲輪を落としたが、その次の曲輪から攻撃が来るので、城から退去して、陣を下げて宿営した。  

 

「くそがぁぁぁ!!なんであんな所に・・・要塞が立っていやがる?!」


「この国の動員兵員は殆どが北部に行っているはず・・・。 ですが、ここにはそれに匹敵する人数がいるように推察します・・・。 一体どこから・・・?。」


「このまま下がることは出来ん・・・。 ここを突破し、閣下の軍に合流せねば・・・。」


「あちらもどうやら抵抗が強くて突破に手間取っているようです。」


「なっ・・・なに? どういうことだ?」


「はっ、国軍兵や警備兵、冒険者や市民による義勇軍が連携が強く、しぶとく抵抗しているようです。」


「ほう・・・?それは・・・朗報か?」


「どう・・・でしょう・・・?」


司令官の陣幕では上官の進撃速度が遅いことが耳に入り、少しほくそ笑んだ。

自身が遅いわけではないことを知れたことで、心に余裕が出来た。

だが、彼らの陣幕群の周りにすでに刃を研ぎ澄ました狩人達が、目を光らせていた・・・。




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