第十八話
依頼をこなしてギルドへ向かうと、なぜかギルド内の空気が変わっていた・・・。
なんとなくそれを感じ取った俺らは、辺りを見回す。
すると全員がギルドのある掲示板を見ていた。
俺らも近づき、近くにいる冒険者に声をかける。
「おい。 どうしたんだ?」
「ん?ああ、お前らか。 あれだよ。 国が戦争をおっぱじめるんだとよ。 その兵士になる事を冒険者に向けて募集だとよ。 その募集が破格らしい。」
「ほう?兵士を?」
「主殿。 どうされる?」
「魔物が人に変わる事になります・・・。」
「まあ、そうだがな・・・。」
ひとまずはこの依頼を受けずにその場を離れた。
だが、積極参加をしようとする者と見送ることを考えている者とで、大きく境目が出来ていた。
明らかに報酬に目がくらんでいる者も多くいた・・・。
「主殿・・・。 戦の過酷さを知らぬ者が多いようだ。 あまり良くないな・・・。」
「だろうね。 しかも俺らの監視所の隣国か・・・。 これは・・・俺らが動くことは出来ないな。」
「そうですね・・・。」
「うむ。 隣国からすれば、遠回りのルートではある・・・。 だが、可能性がないわけではない。 我らの所も侵攻点であるしね・・・。」
「その上で防備もさらに重ねないとだな・・・。 最近も兵達や俺らで討伐を行って、兵も増えた。 まだ手つかずだった山の稜線に沿った古城の防備設備復旧と召喚兵の再配置。 食事をするのは俺らだけとはいえ、保存食の再備蓄を進めておこう・・・。 いやな予感がする・・・。」
「その予感が外れると良いですが・・・。」
「うむ。 今回はそれを願う・・・。」
「俺も外れることを祈るよ・・・。 だが、準備にしすぎはない。 なかったらないで、笑うだけさ。」
「「はい・・・。」」
活気にわく掲示板を背に飲みかけのグラスを飲み干した俺らは、通りかかったウェイトレスの犬獣人の女性に代金とチップ、ちょっとお尻を撫でてからギルドを後にした。
監視所(古城)につくと、すぐに稜線に沿った通路兼防護陣地を採掘・再建と増築をして、稜線頂上の監視所2つと連結し、その後ろに援護射撃用のバリスタを設置して、火力支援用に配した。
仮想敵国側は鹿砦や空堀、塀を作製して防備を厚くした。
火縄銃兵は20名と少ないが、弓兵や弩兵に投石兵を配してカバーした。 当然だが、投下する岩や焙烙玉などは多く置いた。 まっすぐ進めないように九十九折りにした回廊と互いにカバーし合える火点を複数当たるように防護施設や櫓を設けたことで、谷間全体を防護陣地にすることに成功した。
「かなり重厚に防備を固めたのう?」
「まあ、殆どがかつてここを守っていた先人の間仕切りを俺が少し細工しただけだけどね。」
「ですが、これだけの陣地は私は見たことはありません!興奮してます!」
「ほう・・・。 我が鬼人が武人として長けていると思っておったが、誤りかな?」
「いえ、武人という意味では鬼人族には負けます・・・。 ですが、我らとて自身の家や村を守るためには戦います!その時は男も女も関係ないので!」
「2人にそう言って貰えて嬉しいよ。 俺も本で読んだことを利用しているだけだから・・・。」
「なにっ?!そのような書物が?!」
「いや、ここにはないよ?こっちに来る前に・・・ね?」
「むう・・・。 残念至極・・・。」
「ひとまず休憩にしませんか?食べられるときに食べる。 それはどの種族も変わりませんか?」
「そうだね。 ありがとう。」
「うむ!空きっ腹では戦えぬ!食事としよう!」
ここ20日ほどの時間を要して、出来た昼夜を問わずに構築した雑兵をも、動員した構築計画は大詰めを迎え、必要な資材を近隣の村から現金購入する事で、特需のような物が出来た。
意図していなかったが、村長達や長老に感謝された。 当然だが、金貨がかなり飛んでいった・・・。




