第十六話
夜が更けた。
森の中で・・・。
装甲車M8は所々に木の枝が引っかかっているが、車体が自体はかすり傷程度で森を駆け抜けた。
37mm砲は中型モンスターではオーバーキルで、同軸機銃だけでも蜂の巣に出来た。 魔石持ちもいたが、逃走中のためにそのまま放置した。 回収をしていたら追いつかれるかもしれないからだ。
だが、いつまでも道なき道を進む訳には行かないので、徒歩移動を含めて逃走した。
「主殿。 これからどちらに進みますか?」
「うむ・・・。 まずはこの国を出るか・・・?」
「確かに選択肢ではありますか・・・。」
「まあ、辺境に向かう。 少し様子を見る。 状況を確認したいしね。」
「「はっ!」」
こうして20日ほど駆けてたどり着いた街。
辺境のモンスター発生の震源地の街・『ハイライト』に着いた。
門では衛兵が2人を嫌らしい眼で見ていたが、通してくれた。 やはりこちらの実力が思ったより高かったからだと思う・・・。
「あの門番、我らの胸元を見ていた・・・気持ち悪い。」
「我もだ。 今度あったら口のきけぬ様にしてやる。」
「こらこら、せめて半殺しまでにしときなよ。 一応は衛兵なんだしね。」
「分かりました。」
「相分かった・・・。」
結局は新入りはやはり眼につけられるようだ。
当然だが、ギルドでも・・・。
「まあ、こうなるよね・・・。」
「うううっ・・・。」
「いてぇ・・・。」
「あんな強いなんて聞いてないぞ・・・?」
「ふん!雑魚がっ!」
「主様以外に触れられたくはありません。」
ギルドに着くと、やはり見栄えの良い亜人腫の2人。
当然のように値踏みをするように見られ、案の定ではあるが酒の相手や交際・パーティー勧誘が、来たのだった。 俺も止めに入ったが、やはり4人の男に羽交い締めにされた。
その間に遠慮なしに彼女らの肩に手を置いた男達が、彼女らに投げ飛ばされた。 そこからは予想通りの結末で、彼女らに投げられたり、足や太もも、肩を撃ち抜かれたりと、彼女らの周りには・・・。
死屍累々の怪我人の山が出来ていた。
「これはどういうことだ!!誰か説明しろ!」
「ああ、ウチの子達に手を出しまして・・・このようになりました。」
「くっ!新人の連中に対する嫌がらせかっ!?こいつらはっ!!」
ギルドの上位職員らしい男性は、職員に指示を出すと、床をのたうち回っている男達を医務室に連れて行った。 そして、一通りの指示を出し終えると、俺らの方に向き直り、ため息交じりに話し出す。
「新人と他から来た連中に手を出す輩はここでは多い・・・。 その点はこちらの不備だ。 だが、あそこまでやらなくても良かったんじゃないか?」
「そうですか?あれでも彼女らは、手加減をしていましたよ?あれを咎められるなら・・・職員の方が対応すべきでは?それをしないでこちらを攻めるのはお門違いですよ?」
「・・・。 返すことがないな・・・。 正論だ。 だが、お前さんが絡んだら・・・どうだ?」
「別に。 さっき医務室に行った連中が、死体袋に入るだけです。」
「・・・。 マジかよ・・・。 まあ、嬢ちゃん達で良かった・・・と、見るべきか・・・。」
「さて、それで?私たちはどうします?」
「どうもこうもない。 被害者に何もないさ。 とりあえず受付で手続きをしてくれ。 あと依頼を受けてくれると助かる。 お前さんの嬢ちゃんがやらかしてくれて、人手が足りなくなったんでな・・・。」
「それはこちらの性ではありません。 実力を測れぬ阿呆が多かっただけのこと・・・。 それはそちらの指導不足です。 勘違いをしないで下さい。」
「・・・。 とにかく手続きをしてくれ。」
ギルドマスターらしい男性は頭を掻きながら階段を上がっていった。
俺らは先ほどの騒動をカウンターから覗いていた職員の手続きで、滞りなく登録が終わり、ギルドでの騒動と受付が終わり、宿屋探しをするべく、ギルドを出ると一人の少年が声をかけてきた。
「お兄さん達、さっき騒動の人だよね?」
「ん?坊主、お前さんは?」
「俺は孤児さ。 だが、案内人も兼ねてる。 ここでも亜人差別があるんでね・・・。 どうだい?おいらに任せてくれないかい?悪いようにはしないぜ?」
「・・・。 そうだな・・・。 まずは前金で大銅貨一枚。 条件に合う宿を紹介して、俺らが納得のいく値段とサービスの宿なら成功報酬でもう2枚。 どうだ?」
「うーん。 ちょっとからいな・・・。 3枚。」
「良いだろう。 だが、食事はしょぼくなくて、風呂やトイレは共同は勘弁だ。 シーツは毎日交換して小綺麗な部屋だ。 勿論、3人部屋の宿だ。 あるか?」
「ああ、勿論!こっちだよ!」
「ああ、頼んだ。」
「大丈夫なんですか?主様・・・。」
「そうです。 孤児ですが。」
「だが、相手はお金を貰っているんだ。 最低限の仕事はしてくれるさ。」
そこまで話すと、俺の言葉を聞き入れた2人は、俺の後を着いてきた。
孤児の少年について行くと、一軒の宿屋に着いた。 どうやら目的の宿のようだ。
「旦那!この宿ですぜ!」
「ほう・・・。 ここか?」
「少し古い感じ・・・ですね・・・。」
「・・・。」
「建物は古いですが、食事はここの主は料理自慢で有名ですし、別料金になりますが、風呂もあります!シーツも毎日替えています。 当然、掃除も行き届いています!どうですか?」
「・・・。 まあ、及第点かな。 まあ、話を聞いてからな。」
カラーン
「ん?いらっしゃいませ。 お客さんかい?」
「ああ、この坊主に案内されたんだ。 風呂と食事、小綺麗な部屋で合ってるかい?」
「ああ、それがウチの自慢だ。 任せてくれ!」
「分かった。 暫くお世話になる。」
「あいよ!この宿帳に書いてくんな!」
「あいよ。」
宿の主人に差し出される羊皮紙の束のノートに自身に名前を書く。
当然だが、案内をしてくれた坊主には小銀貨を奮発して弾いてやると、受け取った硬貨に驚いていたが、すぐに笑顔を浮かべ、宿を後にしていった。 『またのご利用を!』と、言い残し。
「部屋は3階の角だ。 3人部屋はそこしかねぇ。」
「分かった。 あと風呂は?」
「ウチは3人部屋には、割増料金を取る代わりに標準装備だ。」
「ほう・・・。 それはそれは・・・。」
俺らは主人から鍵を受け取ると、そのまま部屋に向かった。
案内通りの小綺麗な部屋に3人が入っても十分な広さの浴槽がある部屋とトイレがあった。
部屋でゆったりしていると、宿の従業員らしい女性が食事の呼び出しをしてくれ、こちらも自身で話すくらいの味をしており、外れではない事を証明してくれた。




