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幸せは、計略を超えて。~処刑された公爵令嬢の2回目は、悪霊王子とのハッピーエンド目指し、計略の限りを尽くして婚約回避いたします!~  作者: 砂礫零
3章:計略の行く末は

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32-1. 別離①

「お嬢様!」 「ルイーゼ様!」 「ルイーゼ!」「王太子様!」


 パトラにファドマール、そして神殿の聖騎士たち…… 足音と共に駆けてくる複数の声を、ルイーゼは夢うつつに聞いた。


「お嬢様!」


(パトラ…… なかないで)


 パトラが何か言っているのはわかるが、内容がはっきりとわからない。

 それに、魔力に視界をやられたのか、何も見えない…… というより、聴覚が残っているのが不思議なほどに、全ての感覚がない。


(はんぶん、せいこう、はんぶん、しっぱい……)


 思考ももはや、きちんとした形を保てない。


 もうすぐこの身は死ぬのだ、と、ルイーゼにはわかった。

 半分、失敗。


 けれど魔王はきっちり倒したし、ルイーゼがおとりになったことで、被害も最小限に食い止められた。

 背後にいた魔王の兵たちの気配も、もうしない。逃げたのかそれとも殺魔聖石(デモン・マタンド)の丸薬が効いたのか…… ともかくも。

 半分、成功。


【ルイーゼ】


 懐かしい声とともに、ふわりと抱きあげられた。

 これまで、体温を感じることのなかった悪霊の身体が、今は少し温かい…… ルイーゼも、同じものになってきているせいだろうか。


(ザクスにいさま……? ほめて、くださいますか……)


【ルイーゼ、遅くなって、済まなかった……】


 ザクスベルトは先日、悪霊として再び蘇ってしまってすぐに、ファドマールに頼んで自らを冥神の森(オラティオス)の墓に封印してもらっていた。それも、がっちがちにだ。


 ―――― 蘇った折、王都とその近郊にかつてないほどの雪嵐を呼んでしまったことで 『これ以上強くなってしまったら、この国まじ滅ぶ』 との危機感を覚えたためである。


 悪霊とはいえ、()()一国の王太子らしい立派な判断ではあったが……


 ファドマールが意地を込めて(ほどこ)した封印は、あまりにも強固だった ――――

 もはや伝説級となった悪霊の力をもってしても、なかなか、抜け出せないほどに。


 つまりザクスベルトは、ルイーゼの危機を素早く察知はできたものの、封印を壊して出てくるのに物凄く手間取ってしまい、遅れたのである。


 ―――― 肝心なところで、なんて残念。


【済まなかった…… 君だけは守ろうと、思っていたのに……】


(ザクスにいさま…… わかっております…… けれどこれで、いっしょに 『永遠の国(あのよ)』 に、まいれますね……)


 ルイーゼは微笑み、片手をわずかに動かした。

 その手を、ザクスベルトが優しく握る。


【いや、一緒にはいけない。ルイーゼ、君は生きて、幸せになるんだ。…… 俺の力を、全部、あげるから】


(やめて…… ザクスにいさま…… おねがい、いっしょに……)


【だめだ】


 温かく柔らかな何かが、ルイーゼの全身を覆った。


 身体の感覚が、音が、思考が、戻っていくにつれて、ザクスベルトの気配は、次第に薄れていく ――――


 ルイーゼの閉ざされたまぶたから、涙が流れ落ちた。



「ザクス兄様…… 」




 ―――― ルイーゼが再び目を開けたとき、彼の姿はもう、どこにもなかった。




「お嬢様……!」


「ルイーゼ……!」


 代わりに両側から、かわるがわる呼んでくれていたのは、パトラとファドマールだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 綺麗な描写だけど結ばれなかったかと思ったところに、そのあとがき。 期待させていただきますm(__)m
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