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幸せは、計略を超えて。~処刑された公爵令嬢の2回目は、悪霊王子とのハッピーエンド目指し、計略の限りを尽くして婚約回避いたします!~  作者: 砂礫零
3章:計略の行く末は

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31-4. 決着④

 エルヴィラがカシュティールから帰る際に用意された手土産の数々には、それぞれに目的があった。


 殺魔聖石(デモン・マタンド)の黒い小瓶は、エルヴィラ自身が魔王にとって役立つ存在であるとアピールして信用させるため。

 同時に、殺魔聖石(デモン・マタンド)を怖がってみせることで 『エルヴィラが殺魔聖石(デモン・マタンド)を扱うことは絶対にない』 という印象を周囲に植え付けた。


 そして、 『魔力を増す』 という名目で持ち帰った大量の丸薬。


「あの丸薬はね、コーティングには確かに色々、一時的に魔力を増す薬が入ってたけど、中身はやっぱり殺魔聖石(デモン・マタンド)だったんだなぁ……」


 魔族の体内に入った殺魔聖石(デモン・マタンド)は毒に変じ、魔力の源である心臓に作用する。


 しかしこの毒は、魔力によりある程度ガードが可能であるため、力の強い魔族であればすぐに効くことはなく、一時的に魔力を増す薬のみが、すぐに効果を発揮する。


 その結果、力の強い魔族たちはあの丸薬により 『力がみなぎる』 感覚を味わうことができたのだ。


 だが実のところ、殺魔聖石(デモン・マタンド)自体は分解されることなく、体内に残り続け、蓄積されていく ――――


「だから、みんな喜んで、毎日かかさず飲んでいてくれたけど、それって体内に毒をためこんでただけ、っていうこと」


 身体に致死量まで毒を溜めれば、いかに強力な魔族といえども、その心臓はやがて魔力を生み出せなくなる。


 そして、魔力が尽きたとき。


 彼らの心臓は、完全に止まってしまう ――――


 つまりは、彼らが疑いもなく丸薬を飲み始めた段階で、近い将来、放っておいても死に至ることは確約されていたのだ。


 その時がきた、そのタイミングでエルヴィラが魔王を斬ったのは、『力が全て』 の魔族社会において君臨するための方便である。

 魔王を倒した娘、つまり最強。


「あ、あたしが飲んでみせたのはね?

 どのケースにも1つ、歪んだ形の丸薬が入ってて、それには殺魔聖石(デモン・マタンド)が入ってない、ってだけの話だったんだよね」


「卑怯な…… それが…… 誇り高き魔王の娘のすることか…… 裏切り者……」


「知らないの? 力の無い者は、汚れなきゃ生きていけないんだよ。でもあたしは、それを恥と思わない。

 誇り高いあなたの娘に生まれて良かったと思ったことなんて、一度もないし…… あ、それは違うか。

 おかげで、ルイーゼやリュクス様に会えたんだもんね」


 エルヴィラは、お腹を愛しそうに撫でた。


「リュクス様の子ども…… ここに、いるの。きっと、あたしと同じで魔力は無いわ。その上、半分は人間……

 あたしはね、この子が、幸せに生きられる場所にしたいだけよ。この国を。

 あなたが、魔族のためにこの大陸を取り戻したいと願ったのと同じようにね…… お父様」


「………………」




※※※※




 カシュティールとアッディーラ。


 遠く離れた2つの玉座の前で、同じ刻に。


 魔王の赤い瞳から、光が、ゆっくりと失われていった ――――

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― 新着の感想 ―
[一言] 決まりましたね! しっかし、まさか魔王が分身できるとは思いませんでしたよ……。 想像以上にチートじゃないですか……。 ……さっくり逝っちゃいましたが。 力なき正義はなんとやらとは言いま…
[一言] >知らないの? 力の無い者は、汚れなきゃ生きていけないんだよ。でもあたしは、それを恥と思わない。 同感です( ˘ω˘ )
[良い点] 魔王の志が敗れたことに豆粒程度の感傷を抱いてそうなエルヴィラに対して、ルイーゼは茶葉でやられたことの意趣返しで、スカッとしてそうなところがポイントですね(笑)
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