表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せは、計略を超えて。~処刑された公爵令嬢の2回目は、悪霊王子とのハッピーエンド目指し、計略の限りを尽くして婚約回避いたします!~  作者: 砂礫零
第1章:公爵令嬢の2回目は、婚約回避のために計略の限りを尽くします。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/103

5-2 . 母聖女②

「このお茶は…… カモミールとミントのブレンドでしょうか、お母様?」


「残念。それだけじゃないのよ、ルイーゼ。色々と入っているの」


 とっておきだと出されたお茶は、初めて飲むものだった。独特の香りとスッキリした苦味が爽やかだ。


「あなたも少し、持って帰る?

 わたくしがお茶好きなのが知れていて、皆さまが色々と、持ってきてくださるのよ。たくさんあるから、よろしければどうぞ?」


「ありがとうございます…… お母様。いただきます」


「どれにしようかしら…… このツボの模様が綺麗ね。はい、どうぞ」


 棚の前でしばらく悩んだ後、リーリエは小さな陶器の茶ツボを取り出して娘に手渡し、ニッコリした。


「では、ルイーゼ。先にあなたの質問から、聞きましょうか?」


 もうひとくちお茶を飲み、ルイーゼは深々と息を整えた。

 母とこんなに距離が近いのは、実に10年以上ぶりだ。緊張する。


「わたくしが、お母様にうかがいたいのは…… どうすれば、男の方の執着が解けるのかということで、ございますの」


【ぶふふふふっ】


 ザクスベルトが吹き出し、パトラの顔が、笑いをこらえて真っ赤になった。


「…… それは、そのイラクサのお顔のことを言っているの?」


 リーリエの笑いを()み殺した問いに、こっくりとうなずく、ルイーゼ。顔がかゆい。


「まさか、このひどい顔を見ても求婚してくる方がいらっしゃるとは思わなかったのです…… わたくしとしては、奥から2番目の手だったのですけれど」


「では、1番奥の手はなに?」


「それは…… ハッキリと 『あなたとは婚約したくないので、求婚なら別の方にしてください』 と申し上げることかと」


「なら、そうなさい。そっちの方が親切よ」


「そうでしょうか……」


「ええ。その気がないのならば、早めにバッサリ切って差し上げるのがマナーと、わたくしは思うの。

 後ろを振り返りながら逃げるなんて、発情期のメスウサギみたいじゃない。みっともなくてよ」


 そんなつもりは、と反論しかけて、ルイーゼは言葉をのみ込んだ。

 ―――― つまり母には、そう見えたのだ。


 そして、子どもを守るようにではなく、対等な女性として率直に意見してくれている……

 それでも言い訳したくなるのは、まだ子どもとして母に甘えたい心がどこかに残っているせいだろうか。


「…… リュクス様のお気持ちを、傷つけたくはなかったのです……」


 小声での弁明に、リーリエは不思議そうに目を丸くした。


「それほど好きなら、取りあえず受けておけばいいじゃない。リュクス王子なら上々のほうでしょうに」


「そうですよっ」


 好きというわけでは、とルイーゼが反論する前に、思わぬところで口を挟んだのは、パトラだ。


 ―――― 侍女で単なる付き添いだから遠慮して、聞き役に徹していたのだが、ここにきて溜め込んでいたモヤモヤが炸裂してしまったらしい。


「顔で女性を判断しないでしょ。婚約はもう内定しててもキチンと求婚してくださるだなんて、誠実ですし。

 それに気心の知れた従兄は、他国の会ったことない王子より数十段マシです!」


 公爵令嬢は、血筋的には王族であるため、その嫁ぎ先は、同じ王族になる。身分を下げることは基本、許されていないのだ。


 そのため、自国にふさわしい相手がいなければ、肖像画でしか知らない他国の王子へ嫁ぐのが一般的である。


 人となりも全く知れない余所(よそ)の男よりは、リュクスのほうが大いに良い ―― というのが、パトラの主張なのだ。


(まぎ)れもなく買い物件ですのに、どうして婚約したくないんですか、お嬢様ったら……」


「そうよ、ねえ?」


「ですよ、ねえ?」


 仲良く顔を見合わせてうなずき合う母親と年上の侍女。


 ―――― なるほど、言われてみればその通り。では、あるのだけれど。


「信じていただけないかもしれませんが、どうしても、婚約できない事情があるのです」


 ―――― 少し迷っていたが、やはり打ち明けてしまおう。


 ルイーゼは、淹れてから時間が経って苦みの増したお茶を飲み干し、覚悟を決めて口を開いた。


「リュクス王子と婚約すれば、先には破滅しかないのでございます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >後ろを振り返りながら逃げるなんて、発情期のメスウサギみたいじゃない。 お母さま、表現が過激。端的ではありますが。 さて、将来の破滅をどう説明したものでしょうか。
[一言] はめふらを回避していくぞ( ˘ω˘ )
[一言] 事情を話すことによってどう転ぶか分からないから、打ち明ける相手の見極めは慎重に、でも、説明しないことには理解が得られない、そもそも信じてもらえるのか? といったジレンマが、タイムリープものの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ