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閑話3 ~ 近衛騎士たちの目からウロコ ~

この閑話で完結です。

 俺はナギ・トルタ。冒険者上がりの近衛騎士、やってる。


 正直、近衛騎士は俺の性格に、合わない気がしていた。でも、ガトランやフィリクスと別れて、独りで冒険者をやるのもつらいから、近衛騎士団に、入った。

 思った通り、俺には無理だと思う日が続いてて、冒険者に戻ろうかと思ってた。


 そんなとき、王太子殿下から俺たち3人に、声が掛けられたんだ。

「弟のユリウスが『東の魔の森』に行くんだけど、キミたち、付いていってくれないか?」


 ユリウス王子、って、まだ5歳の子、だったよな。そんな小さい子が、『東の魔の森』に入る? 何かの冗談だと、王族としてのお遊びかと思ったんだが、違った。


 一番最初の顔合わせの時に、まず驚かされた。

 何せ、近衛の装備ではなく冒険者の服装で、と言い出したのが、かの王子だったから。


『東の魔の森』は、冒険者時代に俺たちのメイングラウンドだった。だからこそ、あそこの怖さもわかっていたし、対処の仕方もある程度覚えている。冒険者の格好なら、多分、そう苦戦しないはずだ。


 それはあとの2人もわかっていたし、理屈としてもあっていた。でも、あの王子に、そんなことがわかるとは、思えなかったんだ。

 まあ、ガトランたちもそのほうがいいから、すんなり決まったんだが、何より、冒険者としてあの森にまた行けることが、俺はうれしかった。


 ただ、出るときに陛下が伝えた言葉。


『ユリウスとあの護衛達であるが・・・お前たちが思うより強いし、規格外であることを覚えておけ。本人たちに他意はないからな。頼むぞ』


 強さと共に、『規格外』・・・と言われた意味が妙に俺の心にひっかかった。




 *******



 まったくもう、あの人たちの強さったら一体何なんだよっ!

『東の魔の森』に入ってからここまで、俺らが居る意味あったのかぁ!?


 思わず口に出して怒鳴ったら、あの黒ずくめの・・・カイン、だっけ?・・・あいつが、目にも止まらない速さで俺に刃を突きつけてきやがった。


 それだけなら俺だって結構な修羅場をくぐってきたんだ、驚きもしないけどさ・・・一緒に吹き付けてきた殺気にはビビってしまった。あの時はこのまま切り殺されると思ったよ、ホント。


 一気に頭が冷えて。


 で、気づいちまった。俺、王族に楯突いたんだ、って。


 元々、冒険者から近衛になるときだって、今の王様から『ほかに人目がない時なら、砕けた話し方でも構わぬ』とお墨付きを得られたからこそ、窮屈な城勤めを承諾したんだけどよ。


 王族に反抗、なんて事やらかしたら、即、クビ・・・いやいや、処刑されても文句が言えないんだよな。俺がやらかした所為で3人ともに罰を受けるなんてことになったらどうすりゃいいんだ?


 口だけは強気発言しているけど、もう冷や汗ダラダラだった俺の前にナギが出てきて、土下座をやらかした。


 お、おおお前っ、何してるんだよぉぉっ!!




 *******




 驚愕した。動転した。感動した。


 自分は今、この3つの言葉を同時に味わっている。何故って、基本無口、話す言葉は最低限、意思表示は頷きと首振りで終わらせるナギが、王子の前に土下座して長文を発しているからだ。

 フィリクスがキレて暴言を吐いた後だけに、単純に感動だけを味わえないのがつらいところだが。


 ここへ来る前、陛下からも注意を受けていたというのに、見た目で侮ってしまっていた。いや、冒険者として培った自分たちの経歴を過大評価していた、と言った方が正しいのかもしれない。

『東の魔の森』を自分たちほど知る者はいない、だから、たとえ王族であっても、自分たちを頼ってくるに違いない。そう驕っていたのが見事に外れたのだから。


 この王子と護衛達なら、自分たちのサポートなど必要としないだろう。いや、これまでのことから見ても、邪魔にしかならないはずだ。それをナギもわかったうえで頼んでいる。懇願している。


 あの、傍から見ると傲岸不遜としか見えない、唯我独尊のナギが・・・!


 しかも! しかもだ!!


 ナギの懇願を受けて、王子が問いかけてきた。

『わかった。ここから先は任せよう。で、あとの2人はどうする?』


 あれだけの暴言を受けて、それでも謝罪を受け入れる懐の深さ、自分たちに役割を振ってくれる機転のきかせ方。


 あの王子は、俺たちの予想をはるかに超えた・・・ぶっ飛んだお人だった。


 うおぉぉ~~~っ、この感動、どうすりゃいいんだ~~っ!?



 あの王子に、自分のすべてを捧げても、悔いはないっっ!!





ようやくここまでこぎつけました。

お付き合いいただいた方、皆様に最大の感謝を。

ありがとうございました!

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