第88話 トラ転王子、『東の魔の森』に挑む(7)
3頭目のダイラスワッドはどうなったか。
こちらはキラープラントに軍配が上がりそうだ。
翼に蔓を巻き付けて開かせないように締め付け、そのまま引き寄せた挙句、胴体のわりにほっそりしている首元へがっちり嚙み付いている。ちょっと小柄なダイラスワッドの眼から光が消えるのもそう時間がかからないだろう。
そこへさっきの2頭が飛んできて、キラープラントへ特攻をかける。前と同じように吊り上げようと迫ってくる鉤爪に対し、今まで日和見していた最後のキラープラントが蔓を伸ばして応戦。1頭が絡まれ、もう1頭が蔓をくちばしで嚙み切ろうとしているが、更に伸びてくる蔓に阻まれて膠着状態になりつつある。
ザクトロンティラスの方は流石というかなんというか。
キラープラント2体にがっちり組み付いて地面から引っこ抜いていた。キラープラントも最後の力でもってザクトロンティラスの腕や肩にかみついて食いちぎろうとしている。
どちらも混とんとしていて場外乱闘、大混戦の状態になっていた。
ここまで来たら介入も可能、かな?
「カイン」
「そろそろ潮時だな、主」
声をかけると即座に答えが返ってきた。
「頼めるか?」
「承知」
視線はすでにダイラスワッドへ向けて臨戦態勢だ。
ミャウの方は。
「ふみゅ、まずは火をかけて燃やしてみるかにゃ? フィリクス、風を頼むにゃ」
「か、風ですか? 姐さん、どこへ?」
「木の化け物には火をかけてやるのが一番だにゃ! ついでに頭の軽い翼お化けも!」
「そ、そう、ですか・・・」
フィリクスは半分腰が引けたような声だが、まあ大丈夫だろう。
そこへカインが駄目押しで、
「そこの愚痴愚痴魔法使い、どでかい一発を放り込めよ。でないと後の保証はしないからな?」
「保証しないって・・・やめてくれよ、怖いから」
「・・・落ち着く、フィリクス」
「ナギにまで言われた・・・」
がっくり肩を落としたフィリクス。
「ナギは吹き矢ができたな? そいつで翼野郎の眼を狙ってくれ。あとは他のフォローを」
「わかった」
「自分は早く動けないんで・・・」
「バトルアックス持ってるお前さんは、化け物の木なら蔓を、翼野郎なら翼の根元を思いっきりブッ叩いてやってくれ。それでいける」
「しかし、一度振り下ろすと、硬直時間があるんだが」
「その時はアタシがフォローするにゃ」
「なるほど、了解した」
うん、みんなでキラープラント&ダイラスワッドにかかる訳だな。
「・・・ザクトロンティラス、は?」
「あれはおそらく、共倒れになる。そうならなくても、煮凝りの決着が付けば問題ない」
ナギの疑問に、カインがあっさり答える。
「煮凝りの、決着・・・?」
「あれはボクの担当だからな」
「お、王子が!?」
あれ? 何故にその反応? て、元冒険者たちがみんな驚いてる。
「あれはボクの能力でないと駄目だから。じゃ、カイン、ミャウ、ガトラン、フィリクス、ナギ。周辺の相手は頼んだ」
「承知」
「了解にゃ」
「「「はっ」」」
ひとつ頷き、繁みから飛び出した。
続いてみんなも散開して、手順通りダイラスワッドへと向かう。
よしっ、行っちゃるか!
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