第87話 トラ転王子、『東の魔の森』に挑む(6)
ちょっと短めです。
更に。
オレの知覚網に別の敵性反応が現れた。
「みんな、黙って! また何か来るぞ!」
言ううちから、空き地にいくつもの影が落ちる。
「グルルウウウゥゥッ!」
影が見る見るうちに大きくなり、そして本体がキラープラントに覆いかぶさった。
ぬめりとした鉤爪がキラープラントを蔓ごとひっつかみ、押さえつけながら持ち上げようと皮の翼をはためかせる。
メリメリ、メキメキと、根元で軋みをあげているのは太い根っ子だ。
そのまま、吊り上げようとする者と抗ってもがく者で綱引きが始まった。
「今度はダイラスワッドか。・・・一体どんな場所だよ、ここ」
声と顔に疲れをこれでもかと乗せて、フィリクスがぼやく。
因みにダイラスワッドはオレから見るとプテラノドン・・・それよりも凶悪な牙と鉤爪を持った空飛ぶ恐竜だ。そいつらが3頭飛んできて、ザクトロンティラスと争っていないキラープラントを同じように吊り上げ始めた。
「ギャオオォォォッ!!」
「・・・・・っ!!」
「グォルルウゥッ!」
「グゥルルッルルッ!」
「・・・!・・・!!」
キラープラントは植物だから声なんてない、よね?
でもさ・・・
トゲトゲ歯をむき出して威嚇しているから、あれ、叫んでるんだろうなぁ。
なんだか混とんとしてきたけど・・・
「これ、中に割って入ったらアカン気がする・・・」
「坊ちゃんでもそう思うのかにゃ?」
「ミャウ・・・オレをどんな目で見てるの、普段」
「ん~~・・・怖いもの知らず、だにゃ」
「無鉄砲とも言うな」
カインまで参加するんじゃないっ!
かと思うと。
「ははっ、ちゃんと危機意識ある王子でよかったよ」
「うむ、あの中に突っ込めと言われそうだったな」
「・・・ゴリ押し、するかと」
元冒険者の近衛騎士にまで言われたあぁぁっ!?
オレ、どんだけ非常識だって思われてたんだろ!?
「お? 王子見てみろよ、あっちは決着つきそうだぜ?」
フィリクスに促されて顔を上げると。
ダイラスワッドが2頭がかりでキラープラントを1本(?)引っこ抜くのに成功していた。
吊り上げられたキラープラントが必死に蔓を巻きつけようともがいているが、ダイラスワッドたちは構うことなく、向かい合って翼をはためかしていく。やがて、幹の真ん中から鈍い音が響き・・・キラープラントは真っ二つになっていた。
「うわ~、なかなかえぐいやり方するんだな、あいつら」
「頭の軽い翼お化けだと思ってたにゃ~」
「翼を切り落としたら何もできん奴らだ」
「黒の傭兵部隊にしたらその程度の認識なのか」
「・・・まさに最強、いや、最凶?・・・」
ナギ・・・お前って天然の毒吐きなんだな。フィリクスが心配するのも無理ない気がする。
「・・・なんだか王子に、同情されてる・・・気がする」
お前も読心能力持ちかあぁっ!
読んでいただき、ありがとうございます^^




