第86話 トラ転王子、『東の魔の森』に挑む(5)
とにもかくにも、『魔の森』を突っ切って最深部近くまで到達した。元々の計画では途中の安全地帯で一泊し、翌日にする予定だったらしいが、最短距離だとかなり短縮できたようだ。
で、今はその手前の茂みに身を隠して窺っている。
ここに来るまで結構魔獣に絡まれたんだけど、最深部に近づくにつれて数が減っていき、今度は肌を刺すほどの異様な気配が強まりだした。
多分これが大地の力『龍脈』なんだろう。この気配に耐えられる魔獣しか近寄れないからこそ、今、オレたちの周りは平穏だった。
前方にある最深部。そこは木どころか草すら生えていない、地面がむき出しの空き地だった。
そして。
空き地の中央には、漆黒の渦の塊がある。
前世で見たハリケーンそのままに、真っ黒な靄を中心から吹き上げ、渦を描きながら辺りに『瘴気』をまき散らしている。その『瘴気』に触れた大地が黒くくすんで固まっていた。汚れるというより穢れる、そんな感じだった。
今回の目標、『瘴気』の煮凝り。だが、そいつは煮凝りというより、活火山に似ていた。地中からのマグマを吸い上げ、放出し、辺り一面を容赦なく瓦礫の山へ変えていく、その圧倒的な力の振るい方が酷似していた。
そしてまき散らされる『瘴気』の欠片の一部を、うねっている蔓が絡み取り、本体の幹へと持っていくと凶悪なほどに尖った牙が現れて、『瘴気』の欠片を飲み込んでいく。あれがキラープラントと言われる植物系の最強魔獣らしい。
こいつらは近くを通りかかる生き物を蔓で捕食し、締め上げて息の根を止めた後に幹の中央にあるでっかい口でかみ砕いて己の糧としていくと聞いていたが、今の様子を見るかぎりでは『瘴気』も取り込むんだな。
肉食系の植物とは恐れ入った。さすが異世界。
そんなキラープラントが、『瘴気』の煮凝りの周辺に5本ある。確実に排除しないと、煮凝りに対処できなくなる。
じっと見ていると、時折中心部から何かが光って見える。『瘴気』が濃すぎて形状も何もわからないが、多分あれが感情の大元なのだろう。
「凄いな、あれは。あの規模の『瘴気』は見たことがない」
「どれだけの時間ここにいたんだろうかね~、あれ。おっかない」
「・・・近づきたくない」
「ふん、中心にあるものが感情の大元だな」
「良く判らにゃいにゃ~」
「それだけいろいろと巻き込んでいるに違いない。主、まずは周りから片付けねば」
「そうだな・・・ん? 何か近づいてくるぞ」
知覚網に反応があった。かなりなスピードで近づいてくる。
そいつはオレたちの居る処から『瘴気』をはさんで向かい側に、その巨体を現した。
「うおっ、で、でかい」
「ザクトロンティラスだって? こんな奴、前はいなかったじゃん」
「少なくとも3年前には・・・見なかった、な」
元冒険者たちが驚いている。という事は・・・。
「煮凝りに惹かれてきたのか・・・?」
「その可能性はあるな」
オレが漏らした推測にカインが肯定を返してきた。
「ギャオオオオォォォッ!!」
現れたザクトロンティラスの吼え声が響き渡る。そして・・・
キラープラントと争いだした。
ザクトロンティラスって、オレから見ると恐竜なんだよ。それが蔓を振るって対抗するトゲトゲ歯の植物とがっぷり4つに組み合うってのは・・・視覚への暴力としか言えない、な。
「まさに、弱肉強食。『瘴気』の煮凝りの傍を巡って争うってか」
「そ~ゆ~ことだね、これは」
「煮凝りが争いを招いてる、のかもな」
「それもありか。負の気配が濃いほど、煮凝りにとっていい環境だろうしな」
「なら、煮凝りを先に無くせば・・・あ、俺たちが標的になりそうだ」
「・・・難しい、選択、だ」
みんながそれぞれの意見を言い、ダメ出しをする。その傍らで、オレは恐竜大戦争を見ていた。
確かに難しいことだと思う。
だけど、これ、好機じゃないかな。
読んでいただき、感謝、感謝の一言です!
この続き、今必死に書いてます。2回書き直してますので、
少しお待ちいただくかも^^;
頑張ります。




