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第85話 トラ転王子、『東の魔の森』に挑む(4)

 それからの展開は、早かった。

 オレが考えていた以上に、斜め上へぶっ飛んでしまった。


「はっ!」

「よし、ナイスフォロー!」

 右手奥でナギとカインが連携してポイズンコンダを切り捨てる。


「姐さん、援護で風いきます!」

「ふんにゃあ!」

 正面ではフィリクスとミャウが広範囲に焔の道を伸ばしつつ殲滅を図っている。

 今のところすンごく順調に『魔の森』を進んでいた。



 で、オレはというと。

「・・・・・・」

「王子、何の心配もいりませんぞ!」

 ガトランに機嫌よく話しかけられ、守られながら、進んでいる。


 ・・・なぜか肩車をされた状態で。


 どうしてかって? うん、誰もが思うよな、そう。


 肩車されてるのは、だな。


 ・・・このあたり、道がないから。


 オレたちは今、最短距離で中心へ向かっている。

 つまり、『魔の森』の、道なき道を進んでるんだが・・・そうなると問題がひとつ出てくる。


 分かるだろ、言ってる意味が。


 ・・・・・・どうしても言わせようってか・・・・・・


 あのな。

 密集した樹々と下草が生い茂る中を、5歳児がどう突っ切るってんだよっ!


 しかも、しかもだ!

 どこにどんな毒虫やら魔獣やらがいるのか分からん状態で、腰まで隠れる草の中を動けるわけがない!


 どんな罰ゲームだよ、それ。




 最初はさ、それほどとは思わなかったんだよ。

 それまではかろうじて残っている獣道を伝ってきてたからね。


 でも、3人が秘蔵していた地図を提供してくれて、最短で行けるルートを割り出してくれたから、それに従って動き始めたんだけど。


 オレの身長がネックになっちまったんだ。

 はあぁぁ~~、情けない。


 今日ほど小さいのを恨んだことはなかったな。


 で、結果として。

 ガトランに抱えられて移動することになったんだ。


 でも、ここは『魔の森』で危険地帯だから、武器を扱う両手は自由でなきゃいけない。

 どうするか、と考えたのが・・・肩車。

 理屈は通ってるんだよ、うん、確かに。


 でも、これって、父親に甘やかされてる幼児、としか思えない。

 お間抜けとしか言いようがないね、自分でも。


「ふんっ!」

 両手を開けておく意味はあったんだよ。

 今だって、襲ってきたブラッドコンダをぶっ飛ばしたのは、ガトランだ。


 大型のバトルアックスを軽々と振り回すだけの実力は持ってるんだよ、この人。

 オレのお守りをさせてるのが申し訳ないな。


「気にしないでください、王子。これはこれで大事なお役目ですから」

「そう言ってくれるのはうれしいけどさ・・・」

「このメンバーでは自分が一番重装備なんです。移動速度が遅いのは当然ですから」


「でもさ・・・この状態で肩車される意味ってある?」

「王子の安全は守られていますよ?」

「・・・ミャウがフィリクスと一緒に正面の草を燃やしてても?」

「それはそれ、これはこれ、です」


 そうなんだ。

 敵を殲滅しながら、正面の草やら木やらを燃やしてなぎ倒して進む二人。


 その後ろを行くんだからオレだって動けるんだけど、何故かガトランが降ろしてくれない。

 いや、良い笑顔で笑いながら魔獣を叩き伏せている。

 真横から飛んできたキラーフライを、バトルアックスの一振りで返り討ちに仕留めているし。


「実を言いますとね、王子。自分、夢がありましてね」

 キラーフライの残滓を振り払いつつ、大股で歩くガトラン。そのくせ、肩の上のオレが揺れないように気を配ってくれている。

「いつか結婚して、子供をこうして肩車してやりたい、そう思ってたんですよ」


「家族が夢、だったのか?」

「3人とも孤児院の出でして、そのまま冒険者になったんです。だからまあ、願望、ですかね」

「・・・・・・」

「冒険者は毎日が危険と隣り合わせで、そんなことも考える余裕がなかったんですが、近衛騎士になってからは、ちょっと希望が出てきまして」


 おい、そんな、紅くなるなよ、どう答えりゃいいんだ。


「この任務が終わったら、きっちりと考えようかな、と思ってるんです」

 ・・・っ! これは、マズいっ!


「あの子に言って、結婚・・・」


「ちょっと待ったアァァッ!!」


 それは、死亡フラグだあぁぁっっ!!






読んでいただき、感謝です!

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