表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/99

第77話 トラ転王子、不穏の源に至る(2)

(『魔王』だって? それは確かか?)

(いや、今のところは憶測じゃが・・・可能性は高い。場所の特定ができるまでには至っておらんが)


(・・・・・・)


(今はまだ気にする程ではない・・・筈じゃ。それよりも、『魔の森』の件を片付けるのが先じゃろう)

(わかった。それは東にある『魔の森』で間違いないんだな?)


(うむ。つい最近、そこで『瘴気』が発生したであろう? その原因でもある。重く濃い『瘴気』の煮凝りは周辺の『瘴気』を呼び込み、己の中へ取り込んで更に大きくなっていくからの)


(! じゃ、この間、魔獣がわいたのも、その所為なのか?)

(ありうることじゃの。言うてみれば、煮凝りは誘蛾灯、『瘴気』や魔獣はそれが放つ力に引き寄せられるのじゃ。故に周辺には魔獣が集まり、危険な場所と化してしまう)

(そうだったのか・・・)


 今さらに知る事実だった。魔獣は『魔の森』にいるから手強いのだと思っていたが、実際は煮凝りからの力を吸収して強くなっていたなんて。


(じゃ、じゃあさ、煮凝りを消滅させたら、『魔の森』が消えるのかな?)

(ん? そんなことはないぞ。『魔の森』は元々力の集まりやすいところと言うだけじゃ。大地のエネルギーが溜まる場所じゃからの)


(大地の・・・龍脈、みたいなものか)

(龍脈? とは何かな?)

(オレの前世にあった言葉でさ。所謂パワースポット、て奴なんだろうな)


 そうか。強い力が溜まるから普通の森ではいられなくなり、魔獣や『瘴気』も引き寄せた結果、おいそれと近寄れる場所ではなくなってしまったんだ。


(大地の力に善悪などない。力はただ力、この世界を支えていく手段のひとつに過ぎぬ)

 ユグじいが淡々とつなぐ言葉に耳を傾ける。

(じゃが、それも多すぎれば害毒となる。『魔王』とは、大きすぎる力をこの世界にもたらし続けるモノよ。ワシらはそれを防ぐためにこの世にある) 


 ならば『魔王』とはいったい何なんだ?

(オレはその『魔王』をどうすりゃいいんだ・・・?)


(判らぬ、としか今は言えぬ。その場にならぬと、今代の『魔王』がどのようなモノか判別できぬからの。何ゆえにそのような事態になるのかすらわかっておらぬ)

(随分とあいまいな・・・もっと、こう、分かりやすいやり方ってないのかな?)


(『魔王』を倒す、とかいうことかの?)


 ユグじいの念話が届く。それは思ったより堪えた。確実に出てくる言葉であったにもかかわらず、オレはなぜか狼狽えた。

(た、倒す、って・・・)


(確実な方法じゃの。『魔王』をおぬしの能力で喰らい尽くせば、それで終わる話じゃ。それ故≪魔力喰らい≫と呼ばれるのじゃ)


 被せるように続くユグじいの言葉に、オレの心が震えた。


(喰らい尽くす・・・オレは同族殺しをしなきゃいけない、って事か)

 暗い気持ちでつぶやいたオレだが、

(ん? 『魔王』が人族とは限らぬぞ?)


(え? 人、ではない?)

(ああいや、人かもしれぬ。決まっておらぬのじゃ)

(決まっていない・・・それはどういうことだ?)


(『魔王』とは、強大な力を噴き上げるモノ。それこそ『瘴気』の塊、煮凝りでもそう名付けられる場合もある。それに意識が残っているかどうか、怪しいもんじゃの)


 次から次へと出てくる新事実に、オレは頭を抱えたくなった。え、何コレ何これ、どうした訳、これ。


(・・・オレ、英雄譚には関わりがないと思ってたけど、これってその流れなんじゃないかな~?)

(ふむ。『魔王』を倒せばそう言われるかもじゃな。踏んばる事じゃな、『流れ人』王子?)


 をい、その呼び名やめい! テキトーにくっつけんじゃないっ!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ