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第75話 トラ転王子、獣人の力関係を知る(3)

 なんやかんやあって、今、目の前には3馬鹿、いや3つ子が正座している。耳はしおたれ、ひげも元気なく下を向き・・・って、白兎族はひげもあるのか。

 同じ顔が全部しょげてるのも壮観だな~。


「ミャウの謝罪もあるからわたくしは構わないわ。でも」

 あとは母さまの考え次第、なんだけど。母さまの眉間にある二本のしわが怖い。

「今のままだと問題があるのよね」


 うつむいた3人の耳が一言一言に反応して立ったり折れたり忙しい。


「お父様のことだから最適の人選をしてくれた、とは思うのだけれど・・・」

 ゆっくりと扇を広げて顔の半分を隠す。・・・え、隠す?


 扇の陰になった母さまの口元が、三日月形に・・・!

 母さま、面白がってますね? 目と口が真逆ですよ?


「実家への返事はどうしようかしら。部隊長の顔を潰すことにならなければいいのだけれど」


 うん、決定。半分怒って半分揶揄ってる。だってさ、今の言葉を聞いた3人がどんどんしなびていく様子って、すっごく・・・面白い。


 オレも笑いそうになるのを太ももつねって我慢してるんだけど。

 後ろのカインも必死にこらえてるみたいだ。あそこからも見えるもんな、扇の陰が。


「奥様、お怒りはごもっともですにゃ。にゃので、彼女らのしつけをアタシにさせてほしいですにゃ。足りにゃい部分を『黒』のやり方で埋めて見せますから、どうかそれでお願いできませんかにゃ?」


 ミャウは母さまの正面で下を向いてるからわからないんだな。必死に嘆願している。

 さて、母さまはどうする?



「何やってるにゃ! さっさと打ち込んでくるにゃ!」

「しっ!・・・くぅぅ~!」

「やあぁっ!・・・と、届かない・・・」

「くっ、なんのっ!ふん!・・・って、キュ~」


 白兎族の3人がそれぞれの武器を手に斬りかかる。が、ミャウは微動だにせず、すべてを打ち払う。逆に弾かれた3人がコロコロと吹っ飛ばされた。


「「「し、死ぬぅぅ~~・・・」」」

「ごちゃごちゃ言わんとやるんにゃああぁぁっ!」

 そのあとを追うように、ミャウの模擬剣から刃風が吹き荒れた。


「あがっ!」

「ふぐぅっ!」

「ぐえぇっ!」

「気合が足りんにゃ! 起きるにゃあ!」


 ここは訓練場のいつもの場所なんだが。ここ暫く鬼教官の声が響く戦場になっていた。

 真ん中で模擬剣を振り回し発破をかけているのはミャウ。その周囲には潰れた団子が3つ。よたよたしながら立ち上がったが、すぐに腰砕けで座り込む。


 そうとみるや、ミャウの手から伸びるのは3匹の焔の蛇。それぞれがつぶれた団子の耳やしっぽにかじりついた。


「「「ひょええぇぇぇっっ~~~!!」」」


「次はもっと温度を上げるにゃ! 焦がしちゃる~~!」


「「「ぎゃあぁぁっ~~!!!」」」


 そして最後には、蛇に追い回されるウサギの群れ、の図で終わる。

 何だこれ、完全にリアルイジメ、だよ、な?


「カイン、これで正しいのか?」

「主が何を思っているのか理解できる。が、我々傭兵団ではこれが常だ」

「・・・なるほど」


 後日判明したところでは、この3人、座学が平均点以下だったそうだ。

 座学では演算・歴史・地理・語学に加えて、貴族クラスとの対応の仕方や礼節も含まれる。3人ともこの礼節が良くなかったらしい。


 ただ、『青』では冒険者クラスとの対応で良しとされるが、『黄』及び『赤』では下級貴族から代官辺りまでの礼節を必要とし、『黒』に至っては上級貴族もしくは王族クラスへも対応できるように叩き込まれるのだそうだ。


 そういう意味で言うなら、白兎族の3人にはちょっと気の毒な状況ではある。

 いきなり領主クラスをすっ飛ばして王族との対応を迫られてるんだから。

(まあそれでも、必要な事なんだろうしな)



『黒の傭兵』がなぜ最強と言われるのか、分かった気がした。





読んでいただき、感謝です^^

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