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第74話 トラ転王子、獣人の力関係を知る(2)

 まずはアワアワしている子を落ち着かせて、話を進めよう。


「ボクは第一子のユリウス、アルクとイリスの兄だ。キミ達が来てくれてありがたいと思っている。部隊長には迷惑だったかもしれないが、これからよろしく頼む」

「い、いいえ、そんなことないです! よろしくお願いします!」


 どうやら落ち着いたみたいだな。ん?後ろの二人が何やら目で会話しているみたいだが。まあいい。話を続けよう。



「それと後ろにいるのが、ボクの護衛達だ。右の黒ずくめがカイン・ヴェルガ、左の獣人がミャウ・トラスウッドだ。キミたちと同じく黒の傭兵隊から来てもらっている」


「はい、知ってます! アタシたちの憧れの的だったんですから!」


 おおう、何だこの食い気味の反応は? と、ここで。


「ウホホッ、生の『黒の死神』を見られるとはク~!」

「わぁお! 『焔の旋風(かぜ)』のリアル映像~~ピョン!」


 誰だこの声、ていうか、その名は?

 ちらりと見た後ろは・・・苦虫潰したカインとミャウ。

 うぐっ、こっちの方からくる圧は半端ないな・・・!

 

「はい! 『黒』に上がれるのはホンット限られた人達なんですっ。そんな中で、『黒の死神』と『焔の旋風(かぜ)』にはもう、コアなファンがたくさんいて!」


『黒の死神』? 『焔の旋風(かぜ)』? それはまた・・・中二病なあだ名で。


「その人たちが護衛に持ってかれた、って、その時は大騒ぎだったんですよぅ! 一時は取り返しに行く! なんて息巻いてるファンが何人もいてですね、部隊長が個人的なレッスンに引っ張り出してやっと静まったんですから!」


 おぉう、何か、怖い。想像したくない。やっぱりフラグだったんだ~。アハハハハハ。


「で、ですね・・・」

「ピク、その辺で止めとくク~。いい加減にするク~」

 勢い込んで話そうとする横から、ちょっと低めの声が響いた。

 あ、これさっきの声?


「どうしてピョン? この二人を前にしたら止まらないピョン!」

 もう一人、こちらはやや高め、かな。


「説明しなくちゃキュッ!」

「それはそうでもク~」

「アタシたちも話したいピョン」

「そ、それは、そうだけど、待ってってばキュッ!」


 ・・・語尾に面白い擬音が付いてるね、キミたち?


「キュッ」がピクで「ク~」がミク、「ピョン」がリク、だろうか。

 どの辺で止めるべきか迷っていたら、スッとオレの横に出てきたミャウ。


「煩いにゃ」


 その一言で、騒がしかった3人がピタッと黙った。おお、凄い。

「あんたたちここがどこで今何やってるか、分かってるかにゃ?」


(((コクコク)))


「あんたたちを信じて推薦してくれた部隊長の顔を潰すつもりかにゃ?」


「「「!いいえ! そんなつもりは!」」」


「にゃら、今の会話は何にゃああぁぁっっ~~!」

 ミャウの怒鳴り声で3人ともに吹っ飛び、壁際にぺったり伸びてしまった。




「「「ずみばぜんでじだ~~っ」」」


 3人並んで平伏、いやあれは土下座か? 五体投地か?

 床にぺったり張り付いて完全降伏! の態勢になっている。

 その前に仁王立ちするミャウの髪が逆立っているから、相当怒ってるな。


「獣人は種族差があるからな。白兎族と金虎族では勝負にならんだろう」

 呆れてみていたオレにカインがささやく。

「種族差?」

「ああ。今は特に問題ないが、昔は猛獣系の獣人が草食系の獣人を奴隷みたいに扱っていたと聞いたことがある。力の差が歴然としているからな。その代わり草食系の獣人は数で対抗していたんだ。

 まあ、それもあの大災害で均衡が崩れたが」


 南にあるベル大陸で未曽有の大災害を引き起こした要因はいまだに不明だ。

 わかっているのは、ある日突然大陸中の火山が噴火して森林が全滅したこと、消滅した河川や湖が多く、そのため肥沃だった土地が荒れて砂漠化してしまったことだけだ。


 当時に比べれば火山活動は収まったものの、まだ一部で激しく噴き上げているし、砂漠化した大地の復興もままならない。危なっかしくて行くこともできない状態だ。

 獣人たちは住処を捨て、この大陸へと逃げ出した。小型・中型の獣人がいち早く察知して動けたのと対照的に、体格の大きい獣人たちは逃げ遅れ、絶滅した種も多いらしい。


 各国はそれぞれを受け入れ、今、この大陸には普通に獣人が混じって生活している。中には毛嫌いしているところもあるが。


「あんたたちは栄えある辺境地域の『黄』の部隊まで上がったにゃ? だったらそれにゃりの戦闘力と対応力はついてるかもだけど、礼儀作法はどうしたんにゃあぁっっ!」


 ミャウのお説教が続いている。足元の3人は声も上げられない様子だ。

 もうそろそろ止めないとマズいかな。


「ミャウ、いい加減にしろ。主が困っている」

 先回りしてカインが声をかける。途端にミャウの逆立っていた毛が落ち着いた。


 フンスッと鼻息荒く見下ろした後、くるりと身をひるがえしてミャウは母さまの前に跪いた。

「先ほどはお見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ないですにゃ。彼らの言動はいまだ未熟ですが、身辺警護と子守りに関しては保証しますにゃ。どうか奥様にはご寛恕願いますにゃ」


 うはぁ、ミャウがしっかりと話してる!




読んでいただき、ありがとうございます!

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