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第72話 トラ転王子、悪役となる?

 とんでもハプニングのパーティ騒ぎから1カ月。

 やっと周りが落ち着いてきた。


 第一側室ライラ様と第二側室シェルリィ様は父さまから叱責された。当然のことだよね。

 ライラ様は半年、シェルリィ様は3カ月の間、公式行事に出ることを禁止。おまけにお二方とも半年間、お茶会開催・出席ともに止められたんだ。


 これ、結構厳しい罰なんだよ。大人の女性貴族にとってお茶会は情報収集・拡散の大事な場所。そこでの情報が集められないうえに、公式行事もペケとなると、最新の流行やら話題やらに疎くなるのは避けられない。


 まず、シェルリィ様が復帰されたときに噂の的(笑)になり、ライラ様が復帰するまでいじられ放題。しかも、お茶会が開けないから情報交換ができない。ライラ様はライラ様で3カ月後には同じ道をたどることとなる。うん、詰んだねこれは。



 魔物魔獣の増加が普通ではないことにようやく気付いた(笑)トルカイム領では、現在騎士及び兵士の鍛錬が急ピッチで行われているらしい。今までだらけ過ぎだったツケが回ってきた、とも言うな。


 それと同時に、何やらオレが恨まれているらしい。何でや!?


「ああいや、ユリウスの所為じゃないんだよ。まったくもって」

 そう笑うのはギル兄さま。その笑顔、真っ黒け。

「あの騒ぎの時、将軍に怒鳴ったんだって? それを伝え聞いたトルカイム領の偉いさんが何かの会合の折に『子供のくせして将軍に指示するとは!』とか言ったんだって。それで一気にキミが悪の権化になったって次第さ」


 悪の権化、ってなんやねん・・・


「その話には続きがあってね? 肝心の将軍がキミの悪口を言っていた偉いさんの元へ行って殴り倒したんだと。

『あの時の儂は判断が甘かった。それを叱ってくれたユリウス殿には感謝しかないというのに、何を勘違いして騒いでおるのか!!』って、それこそ悪鬼のような顔で迫ったらしいよ。いや~、見たかったねぇ、その場面」


 ギル兄さま、完全に面白がってるな。

 その横で苦笑いしているのが、あの時の眼鏡の軍服さん。トゥーリィ・バウマント男爵、ではなくて、子爵になってたっけ。

 あの後すぐにトルカイム領軍参謀から王太子付き側近へ引き抜かれたんだ。


「あそこは伝統と格式が幅を利かせてるんです。将軍の家は代々続いた武勲がすごくて領主の信頼が厚いために、一将軍と言えど重用されてるんですよ。僕なんかいつもけちょんけちょんでしたからね」

「なんてもったいないことをするんだ、あそこは。おかげで助かったけどね」

「僕も助かりましたよ。剣やら槍やらが傍にあって、ひやひやしてましたし」


 そういえばこの人、不器用だって言ってたよな。

 ふと、トゥーリィさんと目が合う。


「ユリウス王子、でしたね。あの時はありがとうございました」

「え、なにが、ですか?」

 意味が分からず、首をひねる。


「あの騒ぎの時、将軍に怒鳴っていただいたことですよ。あの方、ご自分に力があるせいか、普通の人と魔物との力の差になかなか気がつかなくて。あのままだと、側室様方に被害が出てしまうところでした。王子のおかげで、早めの撤退に移れたんです」

「あれは貴方がそう命令したからですよ。ボクは、そう、きっかけをつけただけでしかありません」


「そのきっかけが大きかったんです。僕が言っただけでは動かなかったでしょう。王子である貴方が先に口に出した、これが重要です」

「そうなんですか。良く判りませんが、役に立てたなら良かったです」

ギル兄さまがボクの頭をなでる。


「言っただろ、トゥーリィ。ユリウスはそんなこと気にしていないって」

「殿下の言葉を疑ったわけではありませんが、確かに謙虚な方ですね」


 それは買いかぶりだと思うけどな~。


「それにしても、ユリウス様は魔獣討伐に行かれますよね? 能力を使われるとは聞いていますが、不意に襲われたらどう対処されるのですか?」

「常に能力で周辺を把握してますし、仮にあったとしても身体を強化して蹴り飛ばしてますよ」

「え、蹴り、飛ばす・・・」

「はい。そのために鍛えてますから」

 呆然とその言葉を聞いていたトゥーリィだが、はっと気が付いてユリウスの前に跪いた。


「うぇっ!?」

「ユ、ユリウス様っ! わ、私めにも、その鍛え方を、教えていただけないでしょうかっ? もう、自分でも嫌になるくらい不器用でっ、剣が使えなくって、い、今までどれだけ、馬鹿にされたことかっ・・・」

 声を震わせて延々と愚痴りだした。いや、どんだけ溜めてたんだこの人。


 涙交じりの懇願をドン引きで聞いていたら。

「ユリウス、頼めるかな」

 ギル兄さまが声をかけてきた。


「トゥーリィはさ、本当に有能な奴なんだけど、不器用が災いして今ひとつ押しが弱いんだ。少し自信が付けばもっとやれることが増える筈。そのために稽古をつけてやってくれないか」


 ・・・そうすればもっとこき使えるからさ、頼むよ・・・(意訳)


 ギル兄さま、副音声がダダ洩れですが。





読んでいただき、ありがとうございます^^

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