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閑話2 ~ 下女の独り言 ~

 あたしリアンダ。下女。王宮で働いてるの。

 一番下だから、汚れ物の始末とか洗濯とか、そういった仕事なの。でも、お給料が出るしちゃんと食べて寝るところもあるから、すっごい幸せ。母ちゃんや下の子たちに食べさせるためにも頑張ってるんだ。


 この間、パーチー?とかで森にまでついていかされたの。そこで薪を準備したり竈を作ったりする仕事でね。でもさ、今は危ないって、城の兵隊さんが言ってたのに、こんなところまできていいのかなぁ? そう思いながら焼けた肉の配膳準備をしてたら、急に声がして、魔物が襲ってきたの! 肉の匂いが誘ったんだって、誰か言ってたけど、もう、逃げるのに必死だったからよく覚えてない。


 でも、あたしってドジだから途中で転んじゃったんだ。膝をひどく打って。

「起きろ、リアンダ!」

 そう言って、コックのダンおじさんが抱えてくれたんだけど、その時にはもう目の前に魔物がいて!

「やだーーっ!」

 もう駄目だって頭を抱えてうずくまってたの。そしたら。

「大丈夫か!」

 って、声をかけてきたのが、小さな男の子。その向こうに、襲ってきた魔物が倒れてた。


「立てるか、キミ? そこのコックさんも一緒においで。逃げるよ!」

 見ると、後ろにきれいな女性と子供が二人に護衛の人がいた。置いていかれると思い、必死に頷いて立ち上がったの。


「ああ、怪我したんだね。ちょっと待って、これで・・・よし、と。さあ行くよ」

 気が付いたら膝にきれいな布が巻かれていて・・・え、これって高い布なのに! アワアワしてたらダンおじさんが手を引っ張ってくれて、走り出してたわ。みんなの回りを男の子と護衛の二人が囲んで、魔物を切り捨てたり蹴飛ばしたりして助けてくれた。


 それで森から出たところに、馬車が! 男の子がここへ来る前に指示してたみたい。あの子凄いじゃん! と思ってたら、ダンおじさんが

「あれ、第8王子のユリウスさまだ。発現してから魔獣の討伐にも参加してたって聞いたけど、あんなちっこいのに偉いもんだ」

 感心した声で教えてくれた。


 その馬車に、きれいな女性と子供二人、それとダンおじさんとあたしが乗っちゃったの!


 あたしは歩くって言ったんだけど、

「今は早くここを離れないとマズいから、窮屈だろうけどしばらく我慢してくれないか」

 男の子がすまなそうに言ってくるの。もう、キュンキュンしてきちゃった、こんな時だってのに!


「ちょっと走らせるから何かにつかまってて。ある程度まで来たら止まるからそれまで頑張って」

 その子ったら、自分は横を走りながら魔物を蹴散らしてるの。護衛の黒いお兄さんなんか、細い剣でスカッと切っちゃうし、獣人の女の子はおっきい両手剣を振り回してんだもん、馬車は揺れるし、怖かったけど、なんだか格好よくってワクワクしてみてた。


 それから少ししたら魔物が居なくなって、馬車もゆっくりになったの。一緒に乗ってた方はルーミィ様とその御子様だってダンおじさんがそっと教えてくれた。二人とも震えてて、ルーミィ様がしっかりと抱えてらしたわ。どちらもあの男の子、いえ、ユリウス様より大きいと思うけど、怖かったよね。あたしも怖かった。


 そのうち、馬車が止まって、ユリウス様が乗ってきたわ。

「もう大丈夫、振り切ったよ。このまま進めば帰れる。コックさんは御者さんのところの方が楽だと思うよ。キミはどうする?」


 あたしも外に行くって言ったわ。こんな立派なところに居られる身分じゃないもの。

 御者さんのところは狭かったけど、ダンおじさんと御者さんに挟まれて揺れながらいろいろ話したわ。ユリウス様は小さいのに、いろいろ考えて手配してたんだって、その時教えてもらった。御者さんも簡易結界の魔石をもらって、周りに聖水を撒いておくように言われたんだって。


「あれをしておかなかったら、みんなが来るまでに馬が襲われてたと思うぞ。本当に命拾いをした」

 しみじみと言って涙ぐんでたもの、あたしもダンおじさんも本当にそうだねって頷いたよ。


 それから30分もしないうちに騎士団の方たちが駆けつけてくれたの。すっごい勢いで馬を飛ばしてきて、砂煙がひどかった。

 でも、やっと助かったんだって思うと涙が出てきて。おじさんにしがみついて大泣きしちゃった。


 あの時、逃げ遅れて同僚の下女が何人か死んじゃった。マリッサもケイトリンもシンファも。あたしだけ助かったのはユリウス様に出会えたから。だからあたしは恩返ししなくっちゃ。


 ユリウス様のところ、今赤ちゃんがいるから洗い物が多くて。赤ん坊の汚れは丁寧に揉んで何回か水にくぐらせればきれいになるのよ? その手間が惜しくてみんな嫌がるけど、それくらいしかあたしにはできないから・・・だから、がんばる!




読んでいただき、感謝です^^

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