第63話 トラ転王子、王国の情勢を語る(3)
諸事情あって遅くなりました・・・^^;
そのあとすぐに戻ってきた母さまと侍女二人に世話をバトンタッチ。いや、オレがやるって言ったんだけど『ユリウス様じゃ無理です』の一言で追い出されたんだ。なんか理不尽。
ちょうどストレスもたまってたから訓練場へ行って模擬戦を始めたよ、カインとミャウで。今もやってるけど、アレ、大丈夫かな?
オレは、それを見ながら光魔法の改良中。シリルノートでいろいろ試行錯誤してるから、まずはそれをなぞってみて、おかしく思うところを再度検証。
大体『セイクリッド・ランス』と言っておきながらあれは酷かった。
ランス(槍)じゃなくってネット(網)じゃないか。もっとこう、ぶっとい光線が突き刺さってやっつけるイメージだったのにな~。
ぐっすん。
あ? 『反転ネット』や『無効ネット』のイメージがあったって?
そっか。なら仕方ない・・・って言うと思ったかぁ~~っ!
くっそ~~~。 もう一度やり直しかな・・・
「だーーっ! どぉして逃げるんにゃ!」
「この技にどう対抗しろと?」
「受けて立てばいいにゃ!」
「ご免だ」
「フシャーーっ!」
お~お。カインが持て余してる。そろそろ止めるころ合いか。
「お~い、いい加減にしろよ二人とも。訓練場を穴ぼこだらけにする気か?」
「了解した。ミャウ終了だ」
「ふにゃあ~~、また負けたああぁぁ~~」
「当たり前だ。オレは『黒』で4年いたんだぞ。お前とは年数が違う」
「ムムムム・・・でも納得いかないにゃ!」
片やへたり込んで文句を垂れ、片や汗もかかずに立っている。どう見ても格が違うよな。
「お疲れさん。いい汗かいたから落ち着いたろ?」
二人に声を掛けながらコップを渡す。
「坊ちゃああん、ありがとにゃ!」
「これは甘露を」
やれやれ、やっと機嫌が直ったみたいだ。
「ふう~、坊ちゃんの方の工夫はうまくいったかにゃ?」
「全然。経験不足と認識不足、てところかな。まだ先は長そうだ」
「一度視点を変えるといいかもしれないぞ、主」
うん、そうかもな。ま、一休みしてからだ。
「で、主。王室の力関係はまだ説明していないが、どうする?」
「あ~、ミャウ次第、だな」
「うにゅ? まだ続くんにゃ?」
「母さまの『中立』には届かないな」
「む~~~・・・だったら教えてほしいにゃ。あとどれくらいにゃ?」
「そう多くはない、な。国の配置と貴族の立ち位置と情勢を・・・」
「主。それは長い。貴族の立ち位置で十分だと思うが」
「そっか。なら、ここでいいか」
今日はほかに訓練している兵士もいないしね。貸し切りみたいだ。
「まずは正妃様。もともと父さまと婚約していた方で、友好国の意味もあるんだ」
「にゃるほど、分かる」
「第一側室ライラ様は東の要であるトルカイス公爵家の長女、第二側室シェルリィ様は中央地区のホッヘンバウアー伯爵家の二女。どちらも帝王追放の時に協力した高位貴族だ。だから、父さまが王となった時には自分たちが一番身近に取り立てられると思っていたんじゃないかな」
『暴虐王』を追放した功績で新しい国の初代王妃になれると思っていたんじゃなかろうか。
「それが父さまが婚約者としていた正妃様を迎えたことで反発し、是が非でも次代の王を自分たちの血筋から出そうとしたんじゃないかな。このままだとヘイワード皇国に乗っ取られる、とかなんとか理屈をつけて」
「坊ちゃん、その可能性はないのかにゃ?」
「それが『体質』に繋がるんだ。前にも言っただろ、ヘイワード皇室の事情を?」
「あ・・・そっか。子供ができにくいから、チャンスがあるにゃ」
「大正解だよ」
けれど、ふたを開けたら一番は一番でも女の子。逆に正妃様が男児を産んで、ひっくり返っちゃった。
余計に意地になってしまったんだろうな、ライラ様とシェルリィ様は。
「一時期、奥宮がすっごく険悪になったらしい。で、それを緩和する意味で母さまとルーミィ様が入られたんだ」
「ルーミィ様って、この間おいでになった方だにゃ?」
「うん。アデリーン様の侍女でついていた、南の地域のレイザック子爵家、三女だ。この方はヘイワード皇国に近くて顔見知りだったから侍女へ、そして側室になってアデリーン様の味方の位置に居るんだよ。だから、母さまが中立、だな」
「ふわあぁぁ~~~っ。むっつかしいにゃ~~」
ミャウが呆れた顔で唸っている。それはそうだ、オレだって自分が中にいなきゃ他人の振りをしてるだろうな。
「よくご存じですな、我が主は」
「知ってないとどこにどういう影響が出るかわからないからな」
「・・・確かに」
つくづく面倒くさいところにいるものだと思う。でも、嘆くよりも前を見て動かなきゃ、何も変わらない。オレはずぇったいに長生きするんだからな!!
読んでいただき、感謝します!




