第59話 トラ転王子、お茶会に出る(1)
お披露目会の2日後。
正妃アデリーン様と第四側室ルーミィ様がいらっしゃった。
もちろん、あの馬鹿どもと違って打診もあったし先触れも貰ってだよ。あんな非常識はあいつらぐらいしかいないんだから。
大人の女性のお茶会だからオレは関係ないな、と思ってたんだけど、朝からミリィとフラウにとっつかまって磨かれて。
結構きらびやかな衣装に着替えて母さまの横に立ってる。ホワイ?
「あの母さま。ボクがいない方がいいんでは?」
「まあ何を言ってるのユリウス。正妃様方はあなたにも会いに来るのよ。いなければおかしいでしょう?」
「え、ボクにも?」
「そうよ。能力が発現してからのあなたは本当に立派よ。その辺もご覧になりたいのでしょうね」
「えええ」
母さまはうれしそうに笑って、オレの頭を撫でた。
「アデリーン様は公正でお優しい方だから、あなたのこともちゃんと見てくださるわ。大丈夫、いつものようにしていればいいのよ。わたくしの大事な子ですもの」
「はい、母さま」
母さまに撫でてもらえたのは久し振りだ。うれしくなって顔が土砂崩れ~~っ!
「ああいう顔は年相応だにゃ」
「うむ。あれでだまされる奴もいるがな」
そこ、うるさい!
「正妃様と第四側室様がおいでになりました」
「ありがとう、こちらへお通しして」
「はい」
ミリィもフラウも今日は余所行きの振舞いだ。そりゃそうか。
お二人が入室されてきた。
「ミケイラ様、お披露目会以来ですわね。御機嫌よう」
「御機嫌よう正妃様、今日はお越しいただき、感謝に耐えません」
「うふふ、そう格式張らなくても大丈夫よ。さあ、ルーミィもご挨拶を」
「はい。お久しぶりですミケイラ様。お元気そうで安心いたしました」
「御機嫌ようルーミィ様。ご心配戴きありがとうございます。あなたもお元気に過ごされておいでのようですね」
「はい。皆様がとてもやさしくて、本当に幸せですわ」
「それはようございました」
傍で聞いていてちょっと不思議だった。正妃様は別格として、ルーミィ様とはやけに親し気な感じがするよな。前から知り合いだったんだろうか。
「ああ、申し遅れました。この子がユリウスですわ。ユリウス、ご挨拶なさい」
「はい母さま。正妃様、第四側室様、初めてお目にかかります。第三側室ミケイラの子、ユリウスと申します。以後お見知りおきください」
顔は知っていたけれど、正式に名前を呼ばれて挨拶するまではいない者として扱われる。貴族って厄介なしきたりがあるんだ。でも、そこをきちんとわきまえないと、母さまの恥になるからね、あいつらと同列にはなりたくないし。
きちんと名乗って明らかにして。そして、上位の方への礼儀として片膝立てて頭を下げる。
「まあまあ、しっかりしているのね。ギルやアルテも褒めていたけれど、これなら気に入るのも判るわね」
「本当に賢い方ですわ。能力も発現されたとか伺いましたが、そのお話も聞いてみてよろしくて?」
「あ、はい。ボクにわかる事でしたら喜んで」
「そう、うれしいわ」
「お二人とも、こちらへおいで下さいませ。実家から美味しいお茶が届いていますの。今日はのんびりとお話いたしましょう」
窓際のテーブルに座り、ミリィとフラウで用意した茶とお菓子が供される。そして、ちょうど起きていたうちの天使たちも交えてお茶会が始まった。
正直、こういう席は苦手だけど、これも王族の務めのひとつだし、例の『帝国王室規範』の訓練にもなるしと割り切って、オレはこの苦行に臨んでいた。
でもさ、そういう意味じゃ母さまも含めてすごいんだ、この人たち。にこやかに笑いながらお茶を飲むしぐさひとつとってもきれいなんだよ。オレは必死に内容を思い出しながら動いてるってのにな。
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