第31話 トラ転王子、画策する(4)
「では、言い渡す。第4王子ダリッド8、第8王子ユリウス2の割合で有責とする。この査定に文句がある者は申し出よ」
一瞬静寂が支配したあと、ワッとばかりに喧騒に包まれる。
野次馬ならぬ傍聴人たちの喝さい、手拍子、口笛のなか、ひときわ騒がしいのは。
「どっ、どういうことでしょうか、王太子殿下っ!!」
ダリッドのつんざくような喚き声と、それに同調する取り巻き達。
「おや、ダリッド君は文句があるのかな」
「全然納得いきませんっ! どうして俺、いや、私が8割なんですかっ?!」
真っ赤な顔で鼻息荒く詰め寄っている。対して兄さまは涼しい顔だ。
「そうか。では説明していこう。ちなみに、これが終わった段階で割合が変わるかもしれないけど、それも承知だね?」
「当然ですっ! やり直していただく必要がありますから!」
はわわ~~・・・どうしてそこまで追い込むかな、自分を。
いや、この場合は兄さまが誘導してるんだろうな。だって、ダリッドのお付きのうち2人くらいが止めようとしてるから。何か感づいてるのかもしれない。
「では、分かりやすいところから。『試練』の関係で言えば、キミが間違っている。ユリウスはきっちりと『三の試練』まで終わらせて、印を頂いてきた。陛下も私も確認しているからね」
「そ、そんな・・・」
「それについては、ユリウスが『陛下に確認するように』告げたとなっている。しかし、キミはそれを無視し、あまつさえ偽の紋章だとまで言い切った。これは陛下に対する反逆と取られても仕方ないことだよ」
意味、分かってるよね。
優しげに告げる兄さまの顔がおっかない。
「それだけでもう君の責任はほぼ確定。10割としてもいいけれど、印を見せた時のユリウスの態度にも問題があったとして2割削ったんだ。随分と君に甘い査定なんだけどねぇ」
・・・これで文句があるなら変えるべきかな?・・・
そんな副音声が流れた気がする。
でもそうか。ギル兄さま、まだ何か隠し玉を持ってるんだ。
あの言い方だとひょっとして・・・
真っ赤だった顔を蒼白に変えつつあるダリッド。唇を震わせつつ何かを言いかけたが、
「王太子殿下、直接お声をかける無礼をお許しください」
ダリッドを抑えつつ前に出てきた人物がいる。さっき止めようとしていた一人、だな。
「うん、許そう。キミは第二側室の侍従のひとりだったね。何か言うことがあるのかな」
「ありがとうございます。先ほどの『試練』にかかる発言及び言動につきましては、こちらの認識不足からくる暴言であることは理解できました。誠に申し訳ございませんでした」
「キミ、間違えてるよ。謝る相手は私ではなくユリウスじゃないのかい?」
「もちろんそのつもりでございます。ですが、まずは『試練』の印を疑ったことを陛下並びに王太子殿下にお詫びしたく思いまして」
その後、身体の向きを変えてオレを見つめ、
「ユリウス殿下、ダリッド殿下に代わり、お詫び申し上げます」
そう言って深々と頭を下げた。
ダリッドは、もう一人に肩を抑えられて発言を封じられている。
そうだよな、ここで騒いだら元の木阿弥だし。
こうまでされたら、オレとしても許さざるを得ない。
「謝罪を受け入れよう。頭をあげてくれ」
「寛大なお言葉、感謝いたします」
もう一度頭を下げ、その人物は後ろに下がった。
さて、これで幕引きかな、と思ったら。
「じゃ、じゃあ、けがは? 怪我の事はどうなんだっ!?」
別の取り巻きが声を荒げる。
え? あれをここで出すの? あれのどこにオレが絡む要素あるの?
あ、オレが殴られればいいってか? 馬鹿言えよ。
今度の側近は先ほどの奴より頭が悪いようだ。何としてもオレを悪者にしたい、て感じか。
でもなぁ。
それを言い出すと兄さまの隠し玉が堪忍袋と一緒に爆発しそうなんだけど?
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