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第24話 トラ転王子、過去と向き合う(4)



  『 ある日、恐ろしい夢を見てしまった。世界が崩壊し、すべてが崩れて

   いく夢。目に見えるすべてが津波で、世界が端からボロボロと呑まれて

   壊れていく中、雪崩れ落ちる大波に、逃げ道のない絶望の中で・・・

   独り前に立つ、誰かの姿。

   顔も性別も判らない。背の高さも、何もかも。でも、そこに居るのが、

   わたくしの血に連なるあなただとなぜか理解できました。そして、

   あなたの傍らにはヴェルガの血を引く者が。』


 予知夢って事かな、これ。


  『 朝になって気が付きました。これはわたくしへの神の啓示なのだと。

   このまま閉じこもってしまえば、世界はまさに崩壊するのだと。

   わたくしの力は弱い。けれど、未来のあなたになら、止められる。

   そのためにわたくしは精一杯生きていかねばならないと悟りました。』


 う~わ~、重い! 重すぎる~!


  『時が過ぎ、体調を崩していたわたくしが望んで皆に会った時、カインと

   出会いました。彼こそ夢の中の従者だとひらめいたのです。

   そこでわたくしのノートと手紙をカインに託そうと決めました。』


 なるほど、ここでカインと繋がるんだな。


  『 このノートには、能力が発現してからわたくしがやった事、発見した

   ことを記してあります。≪魔力喰らい≫の意味を知らずに、発現した事

   を喜び、試行錯誤していたのです。愚か、とお笑いください。

   ですが、これこそがわたくしの生きた証、この世に在った証明なのです。

   あなたの力になることを願ってやみません。』


 ・・・なんか、前がぼやけてきた。グスッ・・・


  『 わたくしの命はもうすぐ尽きるでしょう。なんとなくわかるのです。

   この目で会うことは叶いません。それでもどうか覚えておいてください。

   シリル・ノードスはあなたの幸せを、幸運を心から祈っております。

   見知らぬあなたにわたくしから敬意と謝意を。』


 くっ、思わず泣いちまったじゃないか。


 ・・・随分と悩んでたんだな、シリル様は。ユグじい、どんだけ追い詰めたんだよ、この人を。

 心根の優しい人だったことが文面だけからでもわかるってのに。

 そりゃあさ、ユグじいたちが管理者だっていうんなら、非情になる意味は分かるよ? 父さまだって、そういう判断を下すことはあるし、上に立つって事はその痛みも受けるんだろうしさ。


 さっきやっていた大司祭の更迭だってそうだ。自業自得だとは思うけど、あいつの恨みは間違いなく父さまや兄さま・・・いや、この場合はオレに向けられてるだろうしな。


 それでも、やらなきゃいけない事だったからやった。それだけだ。


 世界樹のやってることもそれなんだろうけどな。

 わかっちゃいるけど、それが自分に降りかかってくるのは理不尽だと思う。だからこそ、何とかしようと足掻くんだ。


 なんだか、わかった事よりもわからないことの方が増えてないか、これ。

 それも『世界の身代わり』とか『崩壊』とか、物騒な言葉が並んでさ・・・


 オレ、この世界で大往生したいんだけど。

 今のところ、不安要素しか無いんでない・・・?




読んでいただき、ありがとうございます!

今日はあと1話、閑話を投稿します。

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