表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/99

第20話 トラ転王子、捕獲される?(2)

 そのあと、王宮に戻って父さまに右手の印を見せて完了の報告をした。

 併せて大司祭とのあれこれを全部ぶちまけたところ、父さまは無表情となり、ちょうど居合わせたギル兄さまの笑顔が恐ろしいことになった。


「そうかぁ。あの男、私の前では神妙にしていたけれど、遂にぼろを出したね。『神聖な、虚言を許さぬ場所』での話だから本心なんだ。そりゃあ希望を実現してあげないとね」

「ふむ。我とて望まぬものを無理強いすることは本意ではないからな。さっそくに叶えようではないか。これ、誰かある」


 大司祭については前々から問題視していたようで、父さまはすぐに次期大司祭を任命にかかったし、ギル兄さまは任地先への指示を手紙にしたためている。


 因みに行くのはハヴィシャル辺境地域。そこの教会を巡回する名誉大司祭にするんだとか。

 名称はすごいけど、実質的には更迭の扱い。おまけに、魔獣に襲われること確実なんで、体の良い死刑判決なんだとさ。父さまもギル兄さまも怒りゲージが振り切れちゃったみたいだよ。


 お仕事モードに入った二人に遠慮して・・・ホントは二人の放つ威圧に耐えられなくなって・・・オレは挨拶もそこそこに執務室を出た。


 奥宮へ戻る途中、

「ユリウス! 戻って来てたのね!」

 声と共に前が見えなくなった。


 うはぁ。気持ちいいけど、いきなりはやめて・・・。


「ね、姉さま・・・ただ今、戻り、ました・・・あの、苦しい、です」


「あ、あら、ごめんなさい。私ったらつい、・・・」


 アルティシア・シャスラン。正妃の子で第二王女。ギル兄さまの妹になる方だ。

 父さま、ギル兄さまに次ぐ力を持っていて、しかも勉強熱心だ。アケンドラ王国はこれからも安泰だよな。


 オレの事を何かと気にかけてくれる、数少ない味方でもある。何せ、他の奴らはオレを蹴落とすことしか考えてないしな。


「『試練の洞窟』に行ったって聞いたけれど本当なの? もう、お父様も兄さまもどうして無理させるのかしら!」

 アルテ姉さまは裏表のない人だ。オレを実の弟のようにかわいがってくれる。

 その分、過保護気味ではあるのだが。


「姉さま、ボクが行きたいって我儘言って、それを父さまが聞いてくださって・・・」

「いくらしっかりしてるからって『試練の洞窟』はやりすぎよ! 限度ってものがあるわ! 今から行って問い詰めてやるんだから!」


 わわわっ。これは何とかして止めないと!


「姉さまアルテ姉さま、心配してくれたんですね! ボク嬉しい、大好きです!」

 笑顔を全開にして抱きついた。

 あざとい? ほっとけ。カインもミャウも笑うんじゃないっ!


「あらまあ、可愛い事言ってくれるのね。ユリウスは頑張り屋さんだけど、無理するから心配だったのよ。怪我してないのね?」


「はい、だいじょぶです。これ見てください。しるし、頂きました!」


「まあ、本当! 偉いわユリウス! あ~ん、こんな弟が欲しかった~っ!」

「ぎゅむ~~っ」


 姉さま・・・ハグは望むところだけど、成長著しいお胸がオレを窒息させてるよ・・・。


「恐れながら姫様。坊ちゃんが白目をむきかけてますにゃ。解放してもらえますかにゃ?」

「あ? あらら。ごめんねユリウス、大丈夫?」


「ぷはっ・・・だ、だい、じょうぶ、です。姉さま」

「今日はゆっくり休むのよ。また今度話を聞かせてもらえるかしら」

「はい、姉さま。失礼します」


 やっと放してもらえた。う~、目の前がちらちらする~。


『試練の洞窟』よりアルテ姉さまのハグの方が疲れるってどういうことだよ。


 そのあとは無事に何事もなく母さまのところに戻って報告できた。

 母さまはとても喜んでくれて、オレも親孝行がひとつ出来たんだとホッとした。


 その夜。

 寝る前の読書をしている時間に、カインが入室の許可を求めてきた。




読んでいただき、感謝です^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ