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第2話 トラ転王子、修行する

 本日2話目です。

 訓練場といっても、特に変わったものはない。

 だだっ広い運動場とそれを囲む柵、四方の隅に水飲み場と簡易の休憩所が設置された、ある意味殺風景な場所だ。その訓練所のあちこちで騎士やら兵士やらが汗を流している。剣の素振りをする者、組手をする者、魔法の試し撃ちを行うものなど、様々だ。


 オレは入口で道具を受け取り、いつも陣取っている西側の隅に移動した。そこで受け取った魔道具を起動させる。小さな小箱は幽かに振動し、何度か繰り返した後正面の青いランプが点いた。


 これは魔力関連の鍛錬を行う者が使用することを義務付けられている。周囲50メルトルを透明な結界で囲み、中で組まれた魔法が他の者たちを傷つけないようにするためのものだ。


 どれほどの練達者であっても、万が一の危険は残る。実際に十数年前、魔力だけは大きい駆け出し術師がやらかして以来、必須の規則になったそうだ。うんうん、安全第一は基本だよな。


 まずは軽くストレッチ。全身の筋肉と神経、それと関節部分を刺激して動きを滑らかにしておく。魔力の修練だからって柔軟体操は大事。体幹を鍛えないと思わぬ怪我をする。『健全な精神は健全な身体に宿る』、これが魔力を扱う者の基本でなくっちゃ。


 前世では単なる体育会系の言い訳だと思ってたけど、転生した今は真実だと身に沁みて思う。


 次に、疑似敵を想定した人型をいくつか設置する。

 魔法を放つ者は己の魔力を認識し、自在に扱えるよう訓練する。いわば自分の手足を動かすように魔力を動かすのだ。そのために自分なりの詠唱を唱え、魔法を顕現させる。詠唱はめざす魔法の組み立てを容易にし、発動までの時間を短くする利点がある。


 そしてもうひとつ、こちらの方が重要だが威力を固定化するためでもある。

 昔は詠唱などせずに撃つのが普通だったらしい。だが、魔力には個人差がある。それ故同じ魔法を撃っても威力が一定ではないし、謝って暴発する事例も多く出たため魔獣の討伐等には剣技のみで行っていた。

 だがそれだと時間がかかるうえに騎士や兵士も反撃を食らって怪我を負ってしまう。人的損耗が大きすぎるのだ。で、宮廷魔術師たちはひとつのやり方を考えた。


 ・・・呪文詠唱や技の名称なんかでイメージを固定すれば良いんじゃねぇ?・・・


 じっさいにそう思ったのかは分からない。けれど、現実として、その方法は有効に作用した。

 ギル兄さまやアルテ姉さまの中二病クサい名称で魔法は威力が上がり、剣技の通用しない魔獣の討伐も可能になったのだから、成功例といえるんだろうな。


 オレは未だに慣れないが。


『紅蓮の剣!』とか『氷原の牙!』とか・・・オレの黒歴史をご存じなんですか?

 勘弁してください、マジで。


 そんな訳でオレはオレの能力に名前を付けたくなかった。でも、つけないとまたややこしいことになりそうだったので(主に宮廷魔術師長辺りから)『アイアンクロウ』と呼んでいる。


 アルテ姉さまから『無影のやいば』にしなさい、と言われたが無理です(涙)




 人型の前に立ち、まずは無詠唱で。

 小さいかぎ爪を出して人型にひっかけ、上下左右に揺らしてみる。うん、思うように動かせてるな。


 次にもう少し魔力を加え、先端をグーパンチのようにして発射する。一番右の人型が吹っ飛び、周囲に張ったバリアに当たった。この形なら最大で幾つ出せるか、が今日の検討事項である。


 吹っ飛んだ人型を元に戻し(当然それも能力で、だ)威力を一定にして数をそろえたり、段階的な大きさにして撃ってみたり。


 いろいろ工夫していると、

「こうしてみていても、良く判らないにゃ、坊ちゃんの魔法は」


 そう、こぼす声があった。


 振り向くと、壁際に並んだ4つの眼がオレを見ていた。





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