第17話 トラ転王子、『試練の洞窟』に挑む(6)
(そうか・・・『三の試練』、妙に長いと思うておったが、それもむべなるかな・・・おぬしには酷なことになってしもうたわい)
「その一言で終わるつもり? オレ、か~な~りキてんだけど?」
『流れ人』の説明の後に、今行った『試練』の状況を話した時の声(?)の第一声がこれだった。
『なってしもうた』で済むんなら、けーさつやおまーりさんはいらないんだよッ
(しかしのう、能力を持つ者の心を計るのは儂の務めであるし、世界に及ぼす影響を予測する必要もあるしのう、その方法が過激だと言われても・・・)
「それでもオレは言葉の謝罪だけじゃなく実質的なものを要求する!」
(おぬしの言葉を聞いておると、まさしく異世界の者よな・・・因みに、能力は何だったんじゃ?)
「今更それ聞く?・・・見てたんだろ」
(おぬしの使った技がよく判らなくての。何せ、今までなかったモノじゃったし)
「ふーん。本当に少ないんだな、≪魔力喰らい≫ってのは」
(な、な、何じゃとっ!? ≪魔力喰らい≫、それに間違いないんじゃなっ!?)
「あ、ああ。そうだよ。母さまにそう言われたん、だ、けど・・・?」
声(?)の驚きようにオレの方がびっくりした。一体何だってんだろう。
(・・・ひとつ確認するが。おぬしはどうやって魔獣を倒すんじゃ?)
「どうやって、と言われても・・・見えないフック、じゃないかぎ爪を魔獣に打ち込んで魔力を取り込む、でいいのかなぁ」
この返事に、声(?)が黙った。
そのまま時間が流れる。ひょろろろ~、なんて擬音付きの鳥が飛ぶくらいの間。
「あのさぁ、帰っていいかな?」
このまま待っててもらちが明かないんじゃないか、そんな気がして声をかける。
(うむ・・・そうか。このごろの魔力の流れはそれじゃったか)
返ってきたのは訳の分からんつぶやきのみ。
それじゃ一層不安になるだろうがっ。はっきりしてくれ。
(しかしそうすると、どこに居るんじゃろうか。儂らが見ている地域にそれらしきモノは見当たらぬ・・・もしかして極限地域か・・・?)
「ねえ聞いてる? 『三の試練』まで終わったんなら、もう帰りたいんだけど」
(むう。もう一度皆を集めて検討するべきかの)
「おいっ!! 聞けってばよっ!!」
訳の分からないつぶやきを繰り返す相手に業を煮やしたオレは、今の時点で作れる最大限のフックを目の前の空間に全力でぶち込んでやった。そしたら。
「え? この魔力・・・濃いいいぃぃっ!」
(うおおおぉぉォォォッ!?!?)
声(?)が大音量で焦った、が、オレはもっと焦った。
この魔力、魔獣と比べ物にならないほど濃かったんだ。
「ウプッ・・・きっつう。ちょっと動けない、な、これ・・・」
(こりゃ小僧! 何をするんじゃ!)
「何する、たって。もう帰っていいか、って何度も言ったのにさ、答えてくれなかったの、そっちだろ。オレ、まだここに居なくちゃいけないの?」
(あ、ああ、そうじゃったな。すまん。儂が悪かったの。ほれ、こっちへ来い)
そういうと同時に、目の前の空間のひとところが明るく浮かび上がった。
さっきの魔力吸収で胸やけ状態のオレがよたよたと近寄る。
それは岩から削りだした祭壇のようなものだった。立ってるオレの目より上の位置に台があり、その正面に丸い石が置かれている。
(その台におぬしの両手を乗せてみい)
今のオレじゃ乗せるというよりバンザイに近いんだが・・・仕方ないか。
読んでいただき、感謝です!
『三の試練』の影響で、可愛いユリウス君がグレました。




