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第14話 トラ転王子、『試練の洞窟』に挑む(3)

転生前の状況・・・かな?

 気が付くと誰かが呼びかけていた。


「・・・い、おいってば。聞こえてるかジュン?」

「え・・・あれ、オレ、は」

 ふと我に返る。そうだ、ここは・・・校舎、だ。


「そうだ、学校に居たんだっけ」

 呆然とつぶやくオレに、

「おいおい、何寝ぼけてんだよ、今日のヒーローがさぁ」


「ヒーロー?」

 話しかけてきた友人に顔を向ける。


 ああ・・・こいつは、宮田だ。宮田俊夫(みやたとしお)、クラスメイトの・・・


「クラスメイト?」

「ちょ、やめてくれよ。そーゆーの。俺とお前はダチじゃんか」

「あ、ああ。そうだったな。すまん」


 そう、こいつとは小学校からの付き合いだった。たまたま入学式で隣になって、クラスも一緒になって、帰りも一緒の方向だった。

 そのまま友達になり、腐れ縁の親友となった。中学・高校と続いて、隣りにいない日なんて考えられないくらい一緒に居る、友人。呼び名もシュン、ジュンとあだ名で呼び合う相手。


 今日はクラス対抗のサッカーの試合で、オレ達が勝った。


「今日のジュン、すごかったぜ。ひとりで3ゴール叩き出したもんな」

「あれはちょうどいいコースでパスをもらったからさ。ウチのゴールキーパーが頑張ってはじき返してくれなかったら変わらなかったろ?」

「なぁに言ってんだよ。お前のゴールが決勝点になったじゃん」

「結果から言えばそうだけどさ」


「勝負は結果がモノ言うんだよ。そういうことでお前はヒーローだ!」

「相変わらず強引だなぁシュンは」

「ジュンが引っ込みすぎなんだって」


 軽く言いあいながら教科書をまとめてカバンに詰める。後は帰宅するだけだな。


 出入り口で通学用の靴に履き替え、校門を出る。いつもより遅いせいか、景色が夕日の色に染まっている・・・?


「あれ、今日は曇りから雨じゃなかったか?」


「馬鹿なこと言うなよ。あっついくらいのピーカン天気じゃんか。ジュン、お前今日どしたん?」

「そ、うだな・・・晴れてた、よな」


 おかしい。どうして雨だと思ってた? 実際、きれいな夕日がオレも、シュンも赤く染めている。


 二人でだべりながら歩いているのもいつも通り。あそこの交差点でシュンは左、オレは右に曲がる。そう、いつもと同じはず。オレは何を気にしているんだ?


 シュンが肩を組んでくる。

「おいおい、相当疲れてるみたいだな。ま、あの活躍ぶりなら疲れるのもあったりまえかぁ。あんまり無理すんなよ?」

「ああ。今日は早く休むよ。じゃな」

「おう、また明日な~」


 また明日。その言葉がいやに気に障る。なぜだ。


「・・・本当に、どうかしてる、な」


 続く違和感に心がかきむしられて、イライラする。おかしい。何が?

 気が付くと家の前にいた。二階建ての、なんていうこともない普通の住宅だ。

 玄関先にある鉢植えには母さんが毎朝水をやって大事にしているパンジーが咲いている。反対側には傘立てと・・・郵便受け。


 ・・・赤い色がやけに目に付く。なんでだ?


 その時玄関の扉が開いて、

「もうっ、何やってたのよ。さっきから待ってたのに」

「千夏・・・」

「そうよ。何改まった呼び方してるの?さあ、入って入って」


 隣り同士の幼馴染、佐久良坂千夏(さくらざかちなつ)。隣の両親は共働きでしかも海外出張中。不用心だと母さんが心配した結果、我が家に居候している。肩までの黒髪をハーフアップにして、耳の横にまとめた流行りの髪型が良く似合ってる。使っている髪飾りは去年の夏まつりに、オレが射的の景品でゲットした物だったよな。


(なんでこんな事考えているんだろう。忘れていた、いや、まさか・・・)


「あ、隼人おかえり。ごはん、もうすぐできるから着替えていらっしゃいな」

「あ、ああ、かあさん。ただいま」

「ふふ、何をぼうっとしているの。今日は大活躍したそうね。母さん張り切ってステーキ焼くから楽しみにしててちょうだい」

 さあさあ早く、と部屋に追いやられる。


 何かが違う、でもその何かがわからない。

 チクチクと神経を刺してくる違和感を持て余しながら、着替えようと振り向き。


「どうして部屋にチーナが居るんだ?」

「ん・・・ハヤトにどうしても言いたいことがあって。だから、聞いてくれる?」


 ポッとほほを赤くしながら上目遣いに見てくる。

 最近また特に女の子らしくなってきた千夏だが・・・違和感が最高値となった。





読んでいただき、感謝です!

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