おバカ?
「やっほっほ~。みんな~揃ってる~?」
入口の方から快活な声が聞こえる。明るい感じの人なのは姿を見ずとも容易にうかがえた。ただ、三色さんとは違い、なんというか間の抜けた感じというか、また違った明るさのようなものを声音から感じた。
「むむむ、見ない顔が1人いますな。さては、三ちゃんの言ってた新入部員かな?」
部屋に入ってくるなり、私の姿を発見し、涼音ちゃんはそう言った。やはり、ちょっと三色さんとはまた違ったタイプのようだ。
「私、8組の副島彩って言います。よろしくお願いします。」
「そうなんだ!私、6組の一丸涼音っていうんだ。つい最近までエジプトに住んでたから、日本語あまりしゃべれないんだけどよろしく!」
「適当なこと言わないでよ涼。こっちまで恥ずかしくなるよ。」
「ごめん、ごめん、こいつおバカだからあまり気にしないで。」
音羽ちゃんと三色さんが立て続けにそういう。ちょっと変わってる人だけどなんだか面白いな。
「おバカとは失礼な、中間テスト私赤点は1つも取ってませんよ。えっへん。」
「それは当たり前なんだよ、音羽の顔見ても同じことが言えるか?」
「調子に乗りました。どうもすみません音羽さま~。そのきれいな黒髪を一本煎じて飲ましてくださいまし~。」
「もう、涼ったらまだふざけてる~。もう!」
「ごめん、ごめん、怒んないでよ音ちゃん。でもこれで晴れて正式に活動ができるわけだし、どうするどこ行く?私はパリとか行きたいな!」
「ほんとにおバカだな~涼音は。明日は木曜で学校だぞ。パリになんか今から行けるわけないだろ。」
冷静に三色さんが涼音ちゃんにツッコむ。確かにその通り。旅行同好会なんて題してはいるが、土曜まで学校のある私立高校であるうちから考えると、できることとしたら、放課後に意見を出し合っていきたい場所を決める。そして、たまの日曜日にみんなで日帰り旅行に行く。行けて日光や、鎌倉が関の山だろう。もちろん、長期休みになら泊まりも可能かもしれないが、原則としてバイトも認められていないうちの学校でそんな遠出の資金を得ることはたやすくない。海外なんて夢のまた夢だろう。私が思っていたことのおおよそを三色さんも涼音ちゃんに説明していた。
「えー、そんなんじゃつまんないよ。せっかくの放課後にやることないなんて~。どうするの茜~。」
「それは、その、近くのコンビニでこっそりお菓子でも買って、ここでダべったりとかすれば楽しそうじゃない?」
「フム、それはそれでありかもしれない。」
やっぱり涼音ちゃん、おバカかもしれない。