伝説の婚約破棄
これは「なろうラジオ大賞2」応募用の作品です。
いせかーい、異世界のことでした。
あるところに、伝説の女魔法使いの戦いに敗れ、孤島に封印された破壊神がおりました。
よもや、自分が負けると思っていなかった破壊神は、いつか、この封印の外に出られる時が来たら、伝説の女魔法使いに会って、結婚を申し込もうと思っていました。
あ、因みにこの封印された破壊神は女性です。
いわゆる、ガールズラブとかいうやつですね。
ですが、時の流れというものは残酷なもので、長命である破壊神は、千年経っても若々しいままなのですが、とても短命である人間族の女魔法使いは、百年も経たない内に老衰で天に召されてしまいます。
その事を破壊神が知ったのは、封印されてから二千年後の事でした。破壊神は、封印の中で百年ものあいだ嘆き悲しむと、彼女の存在しない世界は意味がない……と、自分の中に眠る、破壊の力を呼び起こします。
ところが……破壊神がどんなに暴れても、伝説の女魔法使いが作り出した封印に傷をつける事はできません。
それもそうでしょう。彼女は世界を壊滅させる力を持った破壊神です。罷り間違って封印の外に出るような事があれば、それはこの世の終わりを意味します。
暴れ疲れたのか……封印の中で、ぽたぽたと涙を流しながら地面に横になる破壊神……
その中で……伝説の女魔法使いの、こんな言葉を思い出します。
「この小説が千文字に到達する時、どこぞの頭の悪い王子様が、公衆の面前で婚約破棄を口にすれば、封印は解けるだろう……」と。
いまいち意味が解らないまま……破壊神は眠りにつきます。
…………その頃でした。破壊神の封印がある裏側の国では、どこぞのお城の王子様と隣国のお姫様が、一週間後の結婚を祝う婚前パーティーを開いていました。
みな、王子様のお城でダンスを披露したり、結婚を祝って素敵な音楽を流していました。
友人も、王子様とお姫様の前に行き、祝いの言葉を述べたりしています。
そのパーティーの最中でした。王子様は突如、右腕を天高く上げると、その手をぎゅっ、と握り、ふたりのために流していた音楽を止めてしまいます。
パーティーの参加者や友人達は一体何事かと、王子様とその近くにいるお姫様に一様に振り向きます。
すると、王子様はなにを勘違いしたのか、自分の隣にいる妙にちんちくりんな女性を、そんなに厚くない胸に抱きしめると、お姫様に指を差しながらこう言うのでした。
「姫よ! この場を持って、お前との婚約を破棄させてもらう!」
破壊神の封印が解けた瞬間でした……
……おしまい。