第八十六話 神のカウンセリング
性格を直すといっても難しい。三つ子の魂何とやら。生まれた時から身についた性格というのは、なかなか変えようの無い物だ。それに「変えていいのか」という問題も付き纏う。性格というのはその人の個性だ。性格が変わるというのは、その人が別人に変わるという事を意味しなくもない。
「うーん。」
俺はそういった理由からあまり積極的にはなれなかった。大体、方法も無い。
「ふむ…。性格を何とかするというか、そうした性格であっても、魔力を制御出来れば良いのでは?」
ジュゼの意見に俺は同意した。結局のところ問題は、彼、コリズィーオが魔力を十分に制御出来ておらず、この地の魔力が暴走状態になっている事だ。それを何とか出来れば良い。
「し、しかし、このワタクシごときが、そのような事出来るのでしょうか…?もう数千年もこの状況なのですよ…。」
「それだ。」
「は、はい?」
「その無駄に自分を卑下する言い方。まずそこから止めよう。」
自分を低く見積もり出すと、そこから連鎖的に落ち込んでいく。自信過剰になる必要はないが、一定程度自信を持つ事は必要だろう。
「お前は凄い。いいか。この土の聖域から外に土の魔力が溢れていたらどうなる。ここみたいにどんどん大地が崩れていくはずだ。そうなってないだろ?」
「で、でも、数千年の間で少しずつ聖域が広がっていたりしまして…。」
そうなの?とジュゼの方を見る。ジュゼは力なく肯く。
…ええいままよ。そのまま褒めてしまえ。
「だが、広がっているとしてもだ。魔界全土を覆うほどにはなっていないだろう?」
「そ、それは、まぁ。」
「そこだよ。ちゃんと最低限の守るべきラインは守れている。そこが重要なんだ。こんな膨大な魔力、普通の人間にはその最低限すら出来ず、パーンと破裂して終わりだ。お前はよくやっているんだ。神に相応しい働きだよ。」
「そ、そうでしょうか。当代のとは言え、魔王様に褒められるのは嬉しいところですが…。どこかこう、無理して褒めていないかと気になってしまうのですが…。」
「…ソンナコトハナイヨ。」
俺は抑揚のない声で言った。
「なんでそこで棒読みなんですか!?ああやはりワタクシはダメな神なのですね…。」
「魔王様!!」
ジュゼの叱責する声が聞こえる。失敗した。くそっ!!ならばこうしてくれる!!
[時間!!]
俺は懐からタイムルーラーバロットレットを取り出した。
「そ、それはちょっとズルくないですか!?」
ジュゼがやろうとしている事に気づいて叫んだ。コリズィーオは鼻をブーブー鳴らしながら泣いている。
「ズルいもヘチマもあるか!!」
ADVゲームで選択肢を間違えたらどうする?ガン○ーから核戦争をふっかけられたらどうする?セーブから巻き戻す?正解だ。だが人は言うだろう。現実ではそんな事出来ないと。
今の俺なら出来るんだなぁコレが!!
[Vote!!Time-Ruler-Ballot-let!!]
[Calling!!]
[停止!!倍速!!巻き戻し!!ターイムルーラー!!]
[降臨!!]
タイムルーラーギアを装着した俺は、迷わず[リバース]のアイコンをタップした。
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「そ、そうでしょうか。当代のとは言え、魔王様に褒められるのは嬉しいところですが…。どこかこう、無理して褒めていないかと気になってしまうのですが…。」
「そんなことはない。お前はよくやっている。まずそこに自信を持つんだ。そしてゆっくりと、制御出来る範囲を広げていく。制御の精度を高めていく。そういう工夫をしていこう。」
「はい…。魔王様がそう仰るのであれば…。なんだかやれる気がしてきました…!!」
コリズィーオが立ち上がり拳を強く握った。まずは第一段階成功といったところだろうか。ここから彼を傷つけないように上手く力を制御させる、第二フェーズに移行するという感じである。
「ところでいつの間にそのような鎧を?」
コリズィーオは俺のタイムルーラーギアを見て言った。
「気にするな。」
「はぁ…。」
その時、時の流れを検知出来るティアから通信が来た。「一体何が起きてるの」と。「カウンセリング中だから後で説明する」と言って切った。
かれこれ三十回目の試行であった。
…かつて居た世界で、選択肢をキーボード入力するADVを見た覚えが無いが、その理由がわかった気がする。




