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第五十八話 後始末

 人々が正気に戻り、徐々に元の国へと戻っていく。


 俺は防衛のため待機していた魔界軍に、人々の誘導を指示した。特にブレドール王国とイージス王国の境の平原に人が集中しすぎて、半ばパニックが起き始めていたためだ。多数の人が集まるだけで何かしらの衝突は起きてしまう。それが切欠で二次災害みたいな事になっても困る。そういった事は避けるよう、出来る限りの事は指示した。最初こそ魔物(ではないが)に誘導される事に抵抗があったようだったが、少しずつ人々は受け入れ始めた。今回の一件は、自然界の人々と魔界との距離を近づける事ができたのかもしれない。


 並行して俺は、ジュゼとティア、トンスケを呼んだ。この事件の首謀者たるユートを牢屋にぶち込むためには、万全の態勢を敷いた方が良いだろうという考えからだ。勿論奴が一番被害を与えたのは自然界、中でもブレドール王国だ。本来ならそちらで裁判なり何なり法に照らした方が良いのだろうし、最初は俺もそうしようとしたのだが、当のブレドール王国国王、シュミ=タ殿からこんな話があった。


「不甲斐ない話だが、奴の催眠が完全に抜け切っているか自信が無い。加えて言えば、奴を完全に抑え込む事が出来るかどうかも。」


 ブレドール王国は元々魔法をーーー言い方が正確かどうかは分からないがーーー軽んじていた。或いは忌避していたと言うべきか。それ故に魔法使いへの対処方法等も定まっていないのだ。このまま縛り上げておく事くらいしか出来ないらしい。これだけの事をしたのだ、まぁ死刑になるのだろうが、それすら実行出来るかわからない。そもそも奴は不死身のようであるし、そうだとしたら余計ブレドール王国では何ともし難い。そうした状況を鑑みると、魔界で身柄を預かって貰えないだろうか、というのが彼の申し出であった。俺も同意見だった。こいつは何かまだ隠している、或いは何か明かされていない何かを持っている、という気がしていた。魔界であれば魔法を使わせずに拘束する事も出来るし、こいつについて調べやすいだろう。俺は了承し、そして安全な運搬のために、彼女らを呼んだというわけである。


「良かった!!良かったです魔王様!!こんな上手くいくとは…!!流石です!!」


 来るなりジュゼが飛び付いて来た。こんなキャラだっけ?と少し驚いた。


「いやマジで心配してたんだよ。今回ばかりはどうすればいいのか分からなかったからね。」


 ティアが補足するように言った。


「時間戻してもどうにもならないし、数で来られると、どうにもねぇ。まさか力技とは思わなかったけど。」


「そこはブレイブエクスカリバーの…サリアのお陰だ。」


「ふふん。…と言いたいところだけど、アタシは大した事してないわよ。ちょっと癪だけどね。今回の勝因は、アンタが正しい心を持ってたからとかそんなところじゃない?」


「フヒェヒェ!!魔王が!?正しい心を!?笑わせてくれるわ!!」


 いつの間にか起きていたユートが嘲笑った。


「いいか今に見ていろ!!私が、私こそが勇者であること、いつか思い知らせてくれる!!」


「黙ってろ。」


 俺は電磁ヒモのアンペアを上げた。


「フビビビビビビビビビ!!」


 再びユートは黙った。死なない程度にはしてある。


「トンスケ、部下に護送を指示してくれ。」


「お任せを。キッチリ監視致しますぞ。」


「それとジュゼ、こいつはどうにも不死身らしい。何か裏があると思う。少し調べてみてくれ。」


「承知しました。」


 そこまで指示した後、俺はその場に留まっていた国王達に向き直り言った。


「各国の国王陛下、特にシュミ殿、この者に関する情報があれば逐次連絡を頂きたいのだが、よろしいだろうか。」


 彼らは全員頷いてくれた。助かる。



 やがて日が暮れる頃には、平原には一時支援の野営が出来た。流石に人が多過ぎたのと、遠くから来た者、先に洗脳された者は数日間飲まず食わずだったためだ。俺は城と平原をディメンジョンコンキュラーで何往復しただろうか。とにかく持ってこられる量の食糧や医療物資を持ってきて、そうした人々にそれらを配った。軍の医師ーーーリッチや海棲生物ーーーが少し怖がる人々を診察し、ドラゴンやインセクティアが食事を配る光景は、人々にとっては、いや俺にとっても、なかなか刺激的な光景だった。だが幸い、衝突は起きなかった。ブレドール王国の人々でさえ、大人しく指示に従っていた。


 トンスケには各国と連携して状況次第では支援をするように言った。…といっても、うちも金も食糧も乏しいので、出来る範囲で、という事にはなるが。軍の移動もかなり無茶してしまったので、今出来る事はここまでといったところだ。


 俺はその平原を見ながら、これで一段落だろうかと、大きく息を吐いた。この三ヶ月というもの、自然界との関係でまぁ色々と騒ぎが起きていたし、立て続けに事件が起き続けていた。とりあえず混沌の魔界の首魁は捕まえられた。少しは落ち着いて内政に専念出来るといいのだが。


 内政。そう問題はそちらだ。自然界の支持率は今回の件で上がったかもしれない。だが魔界の支持率を上げて三期目に入らないといけないのだ。でなければ、宇宙からの侵略者に対抗する事ができない。少なくともそこまでは、…少し痴がましい言い方かもしれないが、俺が魔王でいなければならない。


「ジュゼ、トンスケ、これからが本番だ、頼むぞ。」


「はい。もちろんです。」


「お任せくだされ。」


「アタシもいるわよ。」


「ボクもね。」


 ティアとサリアも手を挙げてアピールしてきた。ああ、頼む。俺はそう言うと、魔界への帰路に着いた。



 だが後で分かる。


 この騒ぎすらまだ、始まりに過ぎなかった事に。

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