第五十七話 Hell-Master And 勇者
俺がブレイブエクスカリバーを手に取った瞬間、ダイアルの[E]が光り始めた。
「バカな…私が抜けなかったものを、ただの人間如きが抜き!!あまつさえそれを魔王が持つというのか!?ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!」
激昂したユートが大量の黒い矢を放ちながら、剣を俺に振るった。だがブレイブエクスカリバーの光がそれを防ぐ。
「なにぃ!?」
構わず俺はブレイブエクスカリバーのダイアルを[E]に合わせた。
[Exceed!!]
その音声と共に、よく見るとブレイブエクスカリバーの柄の部分、バロットレットを挿入する部分に何かとのジョイントが出現した。そして、そのジョイントには少しだけ見覚えがあった。デュアルボウトリガーの上部にそれらしいものがあったはずだ。俺は懐からそれを取り出すと、ジロジロと見比べてみた。どちらもジョイントの下に二つのバロットレットの挿入口があった。それぞれアウェイクニングバロットレットが挿入出来るものと、ホープフルブレイブバロットレットが挿入出来るものである。これを組み合わせれば…。
俺はヘルマスターワンドのワンドモードへ切り替え、デュアルボウトリガーをセット、片方のスロットにアウェイクニングバロットレットを挿入した後、ブレイブエクスカリバーをジョイントともう片方のスロットへとドッキングさせた。
[Exceed The Limit!!]
「なんだ…。なんだそれは!!」
ユートの叫びを無視して、俺は全ての武器を連結させ、そしてトリガーを引いた。
[アウェイクニング!!]
アウェイクニングバロットレットが叫ぶ。
[HopefulBrave!!]
ホープフルブレイブバロットレットが叫ぶ。
[[[Hey Let's Say!! Vote!!]]]
そして、ヘルマスターワンド、ブレイブエクスカリバー、デュアルボウトリガーが同時に叫ぶと、黒の鎧と白の鎧が天と地から出現した。ユートはその衝撃でたまらず後退しながらも、続け様に黒い矢を放ち続ける。
[[Courage beats the darkness!! 空前絶後の共同戦線!! Hell-Master!! And 勇者!!]]
ブレイブエクスカリバーが英語にあたる部分を、ヘルマスターワンドが日本語にあたる部分をそれぞれ叫ぶ。そのコールと同時に、ユートの攻撃を弾き返しながら、ヘルマスターギアとホープフルブレイブギアが宙空を舞い、俺の体へと装着されていく。
[[ブレイブヘルマスター!!]]
ブレイブエクスカリバーとヘルマスターワンドが同時に叫んだ時、俺の頭にヘルマスターギアのヘルメットとバイザーが降り、その上から更にホープフルブレイブギアのバイザーが降りた。
[降臨!!]
[Rising!!]
そうして俺は、二つのギアを装着した、ブレイブヘルマスターへと変化した。
「なんだ…なんだそれは…!!ふざけるな!!勇者と魔王…!!二つの力だと…!?」
驚愕するユートに、俺は言い放った。
「そうだ。お前には絶対に手に入らない力だ。」
「黙れぇっ!!」
ユートが絶叫と共に黒い矢を放つ。だがそれは俺の鎧に阻まれ、鎧に傷一つ付ける事無く爆散した。俺はその場から一歩も動く事なく、全ての攻撃に耐えて見せた。
「なにぃ…!!全く…効かないだと…!?微動だにもしない…!?」
「当然だ。お前のような心悪しき者の攻撃が、俺に効くわけがない!!」
俺は見栄を切る。
だが微動だにしないのにはもう一つの理由がある。重いのだ。精神的な意味では無い。物理的に重い。二つの鎧を身に纏っているのだからそうもなるというものだ。その代わり防御力は十分で、傷一つ付かないどころか、吸収し傷を癒してすらいる。恐ろしい能力だ。俺はその辺の事情が悟られないように、自分の翼で宙空へと舞い上がり、ヘルマスターワンドの柄のパーツの刃を出し双刃剣へと変形させた、謂わばブレイブヘルマスターワンドを掲げ、ユートに向けて思い切り振り下ろした。
「おりゃあ!!」
ユートは持っていた魔法で生み出した黒い剣でそれを受け止めるが、物の見事に真っ二つに割れた。
「またしても…!!」
そのまま剣を横に薙ぎ払い、ユートのローブを切り裂く。
「ぐがぁっ!!」
「まずはサリアと、自然界の人々を元に戻してもらおうか!!」
俺はダイアルを[V]にセット、そして風のアイコンをタップした。今ならいけるのではないかという直感が俺の中で迸るのだ。俺はトリガーを引いた。
[Vanish!!][ウインド!!][ブレイブストライク!!]
光と風が共鳴し合い、そして消去の魔法が地平線の向こうまで広がっていく。それにより人々は正気を取り戻し、そして、
「ぐぅぅぅぅあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ユートの傷口から、光が溢れ、やがてサリアがスポンと飛び出した。
「げぇー、気持ち悪かったぁ…。」
サリアがゴホゴホと咳き込む。無事のようだった。
人々の様子をみると、空気ごと正常化されたらしく、人々が再び魔法にかかる様子は無かった。
「お、おのれ…。おのれ魔王!!悪の…権化がァ…!!私の…私の理想郷をぉぉぉ!!」
自分の策略が無に帰した事を悟ったのか、ユートが憎しみを込めながら言った。
「どっちが悪だか分かりゃしないな。」
俺は吐き捨てるように言うと、ダイアルを[A]に、そして水のアイコンをタップした。
「少し頭を冷やしたらどうだ!?」
[Assalut!!][ウォーター!!][ブレイブストライク!!]
水が滝の如く溢れ出し、ユートの体へと降り注ぐ。圧力でユートの体に傷が刻まれていくが、ユートはその場で再生していく。
「ぐぐぐぐぐぐぅ…。無駄だぁ!!私は不死身、私は勇者なのだから!!」
「どうだか。これで、トドメだ!!」
俺はダイアルをBから一周させた。
[B・R・A・V・E!!BRAVE CHARGE!!]
そして全ての属性のアイコンを一周タップした。
[ファイヤー!!アイス!!ランド!!ウインド!!サンダー!!アイス!!シャイン!!ダーク!!オールエレメントチャージ!!]
[[[Hey!! Let's Say!!]]]
「食らえぇっ!!」
俺はブレイブヘルマスターワンドを振りかざし、両刃に宿る光を解き放った。
[[ブレイブヘルマスター!!]][[オールエレメント・ブレイブフィニッシュ!!]]
全ての属性の光、赤、青、黄、緑、紫、水、白、黒の各色の光の刃が、ユートの体を貫く。
「ぐおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!」
ドガァァァァァァン!!凄まじい爆音と共に、ユートの体は爆散した。
不死身というのは口だけではないらしく、奴は膝を地に付けながら、その体の再生を始めていた。これは何か理由がありそうだが、今は考えるべき時ではない。
俺はジョイントを解除し、ヘルマスターギアだけを装着すると、ワンドをロープモードに変形させ、奴を雷の縄で縛り上げた。電気ショックで体を震わせ地に伏し、痺れ動けなくなったユートに、俺は言った。
「これでお前の間違った野望もお仕舞いだ。」
ユートは憎々しげに、その腐った顔でこちらを睨みつけてきた。
「見下すな…。私を…見下すな…!!私を…私…を…。」
だがやがて、痺れが全身に回ったのか、ローブに縛られたまま気を失った。
そこで俺はほっとため息を吐いた。…とりあえず、大凡は終わった。
「これで少しは平和になる…かな。」
俺が呟くと、
「多分、ね。」
そうサリアが返した。
すると、人々が何やら声を上げ始めた。
「魔王様ー!!」
「勇者様ー!!」
「ありがとうー!!」
俺達に感謝する声だった。俺達は少しばかり照れながらを手を上げてその歓声に応えた。
魔王になって良かった。面倒事ばかり回ってきたこの数ヶ月を振り返りながら、心から、そう思った。
<アイテム解説>
■ブレイブエクスカリバー(強化後)
ダイアルが増え、B・R・A・V・Eの五つの能力を有している。
B:Barrier、旧型のDefendモードよりも強固な障壁を対象人物または範囲に生成する。
R:Resurrection、旧型のCureモードより高い回復力を有しており、死亡時であっても、特定の条件を満たせば回復可能。
A:Assult、旧型のAttackモードの二倍以上のダメージを与える。
V:Vanish、旧型のBreakモードより強い魔法であっても無効化する。
E:Exceed、底部のジョイントを展開し、デュアルボウトリガーを介してヘルマスターワンドと合体する。
■ブレイブヘルマスターワンド
ヘルマスターワンド、ブレイブエクスカリバー、デュアルボウトリガーが合体した双刃刀。重いので取り扱い注意。
ブレイブエクスカリバーの機能に、ヘルマスターワンドの属性効果を付与した、「ブレイブストライク」が発動可能。
更に各武器の全ダイアルおよび全アイコンをタップする事で、最終技「オールエレメント・ブレイブフィニッシュ」を発動出来る。
上部ジョイント以外へのパーツ分離・取り付けは可能なため、ヘルマスターワンドが持つモードチェンジも実現出来るが、音声に変動は無い。




