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第四十八話 極光神アウローロ

「ワシはアウローロ。昆虫族の長としてここに居るが、極光神とも呼ばれておる。お前達が来るという話が入ってきていてな。それでこうして出向かせて貰ったわけだ。」


 アウローロは自己紹介をしながら、ティアの方に目を向けた。


「このドアホが来ると聞いてな。今の話を聞いていただろう?こやつ、一万年もあって、我々とは違い自由に歩ける身分だと言うに、ロクに準備もしておらなんだ。これは明らかに罪と言えようぞ。」


「いやまぁ、それはそうかもしれないけれど。」


「違うんだー!!忘れていたわけではないんだー!!自然界と魔界の対立とかそういう未来が見えたから準備してたんだぁー!!」


 ティアが叫ぶが、アタシは思わずツッコミを入れてしまった。


「それは嘘でしょ。エレグを呼びつけただけで大した準備してなかったじゃない。」


「そもそもお主が見える未来も、今は曖昧なビジョンでしか無いはずだからな。」


「精々、「何か変なもん見えたから一応待機しとくか」くらいで考えてたとかそんなんじゃない?」


「有り得る。で、その未来が近くなってきたから急いで魔王に接触したとか、その程度の"準備"なのではないのか?」


 アタシとアウローロが続け様に言うと、


「…あのさぁ。ボクが必死に考えてる言い訳をさぁ、なんでそう見事に潰してくれるかなぁ。」


 ティアは少し頭を抱えた後に、叫び始めた。


「ああそうさぁ!!デアーラの件は余裕こいて寝てたさぁ!!魔法の研究も一応してたけどね!!暴君だった頃のエレグもテキトーに後で排除すりゃいいやくらいにしか思ってなかったさぁ!!そしたらなんかどんどん未来が近づいてきたんで慌てて接触したさぁ!!どうだぁ!!これで満足かぁ!!」


 ぜーぜーと肩で息をしながら、時の賢者様は逆ギレしてきた。


「…死刑で。」


 アウローロが言った。


「いや、いやいや、ちょっとタンマ。」


 アタシは止めた。流石にこの状況でティアが死刑になるのはマズい。(一応)昔から今に至るまでを(ある程度)知っている生き字引き(みたいなもの)だ。多少物忘れしていたとしても、それだけで殺してしまうのはちょっと乱暴すぎる。


 するとアウローロは微笑み言った。


「冗談だ。」


 そして兵士達がティアの牢屋を開けた。


「正直に言ったご褒美だ。今回はまだ間に合うから多目に見てやろう。だが次はない。お主は我々とは違い、場所を超えて活動出来るという折角の立場を無駄にするでないぞ。」


 アウローロの言葉にティアは何度も深く頷いた。


「勿論!!勿論!!だからここに来てるんじゃないか。」


「そうだ。何用なのかまだ聞いておらなんだな。」


 いきなりゴタゴタに巻き込まれてしまって、本題を説明していなかった。アタシは事情を説明した。ブレイブエクスカリバーが壊れているらしい事、それを直せる者が魔界には居ない事、そして光の属性の武器ならここに直せる者が居るのではないかという事。


 一通りの説明を終えると、アウローロは深く考え込み、そして言った。


「ふむ。まぁ自然界に放置していれば当然といえば当然か。勇者の奴め、もう少し雨風凌げる場所に置けば良い物を…。まぁいい。確かにそれを直す事は出来るだろう。見せてみよ。」


 アタシがブレイブエクスカリバーを見せると、彼女はじっとそれを見つめた。


「懐かしいものだ。昔ワシが作ったものだったな。」


「アナタが?」


「うむ。勇者用の武器としてな。これを持てる者は中々いないはずだが、お主は選ばれたという事だな。」


 アタシは胸を張った。


「ふふん。」


「…そういう素振りを見せられると疑いたくなるが…。まぁ話を聞く限り問題はなさそうだしの。」


「話?」


 先程から部下とか色々聞くが、ミカイタクなんちゃらは人の行き来が出来ないのでは無かっただろうか。


「ワシは昆虫族の長。それは自然界の昆虫も含んでおるのだ。彼らは地に住う、つまり多少なりとも魔力を帯びているケースが多いのじゃ。自然界の連中は図体が小さいでな、流石に死霊族への転生や魔法が使える程の魔力は有しておらんが。それでもその魔力を使ってワシへ報告したりする事は出来る。それでお主の噂は聞いておったのじゃよ。」


 なるほど。…あれかしら。ゴキでブリなヤツとかとも連絡取れるのかしら。考えたら寒気がしてしまった。考えないようにしよう。


「さて、これを直す事は簡単じゃ。じゃがこれから来たるであろう様々な障害を乗り越えるには、これを直すだけでなく、進化させる必要があろうて。」


 そう言って彼女はアタシにブレイブエクスカリバーを返した。


「進化。」


 アタシは受け取りながら言った。どういう意味だろうか。


「武器は進化する、自然界の状況からすればお主は聞いた事が無いだろうが、魔力があればそういう事も出来るのじゃよ。」


「便利ねぇ。なんで無いのかしら、自然界に。」


「例の怪物に喰われたからだが、まぁそれ以上に、自然界に残った者達は魔法を求めなかったというのもあるのう。「例の怪物が来たのは魔力のせいだ」なんて風潮が一万年前にはあっての。それも一因にはなったのではないかな。」


「そうそう。それで勇者が苦労してたよ。」


 思い出したようにティアが言った。いや、恐らく実際に思い出したのだろうが、うーむ、ここのところ彼女の信用がガタ落ちなので、なんともいえない。


「まぁ話を戻そう。魔力を込めて進化させた方が良いだろうが、お主は魔力を持っていないという問題がある。」


 確かに、アタシは魔法を使えない。使い方もわからない。


「そこでだ。わしと手合わせしようではないか。」


「は?」


 アタシは耳を疑い聞き返した。今なんて?


「お主が振るう剣にわしの魔力をぶつけて無理矢理進化させるのじゃ。」


「いや普通に直してくれればいいじゃないの。」


 アタシが言うと、アウローロは首を横に振った。


「それだとつまらん。わしはこの一万年間この領域で一人での鍛錬しか出来なんでの。」


「部下は…?」


「やると叩っ斬ってしまうので途中で止めた。」


「アウローロは物凄く強いんだよ…。」


 ティアがぼそりと言った。


「えー…いや、そんな…。」


「お主が本当にその武器にふさわしい実力を持っているかも見せてもらいたいしの。一石三鳥というやつじゃ。」


 するとアウローロはこの狭い牢獄の中で突然構えを取った。


「え、ちょ、いきなり?しかもここで?」


「常在戦場、何時如何なる場所も戦場となるのじゃ。行くぞ勇者よ!!」


 ーーー前にエレグが、ジュゼ達とやり取りしている時に、偶に「ここでセーブさせてくれねぇかなぁ」と言っていた。意味を聞くと、「ここから先で失敗したらやり直し出来るようにならないかなって意味」だと言う。今まさに私はそういう面持ちでブレイブエクスカリバーを起動した。

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