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第四十五話 別行動

「こりゃ無理。俺じゃ直せねぇな。」


 翌日。竜族のところに出かける前に、サリアと一緒にシュミードのところへ行き、ブレイブエクスカリバーを見せた時の反応がこれであった。そう言われてしまうとどうにも何ともならないのだが。


「どうにか出来ないか?」


「そうよ。これがもっと良くなるってんなら、アタシがあんなクソバカ野郎とっとと探し出してズタズタにしてやるのに。」


 意気だけは良いというか怖い勇者である。シュミードは再び考え込んだが、答えは再び「NO」であった。


「これ本当に一万年前の武器か?無茶苦茶高度な仕組みになってる。魔王様の杖と同じ感じだ。使い手が相当だったんだろうな。スゲー独自の進化してる。これを直せるのは…そうだなぁ…。これ光の魔力を帯びてるから…。光魔法の使い手とかになら相談すれば何とかなるか…?」


「光魔法の使い手って?」


 サリアの問いに俺たちは黙ってしまった。心当たりは無い。ジュゼは確かに光の魔法も使えるが、流石にこれを弄れる程では無いだろう。


「ファーラかティアに聞いてみよう。」


 こういう時は物知りな二人に聞いた方が早い。俺達はシュミードに礼を言った後、中庭へと向かった。




「だからぁ!!忘れてたんだから仕方ないでしょ!?」


「忘れていた!?我ら八種族の神の存在を!?それが許せんと言っておるのだ!!」


「しょ、しょうがないじゃないか、色々あったんだから…。」


「色々あるのはお前さんの歳の方だろうが。」


「そ…それを言うかいキミ!!いやもう貴様!!それは宣戦布告であり先制攻撃だよ!!」


「何度でも言ってやるわいこの年増!!万年単位でサバ読みおって!!」


「くぁぁぁぁぁっ!!言うに事欠いてそれを言うのかこの羽トカゲ!!」


「当たり前だ!!お前あの魔王にも数千歳とかほざいたらしいな!!貴様一体何歳だ言ってみろ!!」


「乙女の秘密ですぅー!!黙秘権ですぅー!!誰が言うかぁ!!」


 中庭では昨日に引き続き、物凄く醜い言い争いが繰り広げられていた。見なかったことにして帰ることは出来ないだろうか。無理だな。サリアと俺は目を合わせた後、同時にゴホンゴホンとわざとらしい咳をした。


「「なん…。」」


 二人がこっちを同時に見て、そして黙った。


「…どこから聞いてた?」


 ティアが冷たい笑みを浮かべながら、と同時に何か魔法の準備をしながら尋ねてきた。


「…「誰が言うかぁ」、の辺りから。」


 俺は嘘を吐いた。


「なら良し。何か用かい?」


「もう出立か?」


 とりあえず誤魔化せたらしい。やれやれという感じで俺は言った。


「出発前に聞きたいんだけど、このブレイブエクスカリバーを直すには光の魔法の使い手じゃないと無理そうなんだってさ。それで心当たりがないかなって。」


 サリアがブンブンと首を縦に振った。ティアは少し考えた後に口を開いた。


「んー、そうだねぇ。…光というと光の聖域かな…。」


「ああその手があったか。確かにアウローロなら何か知っているやもしれんな。」


 ファーラが同意した。


「アウローロ?」


 サリアが問うと、ティアが答えた。


「光の聖域に住んでいる昆虫族の神だよ。えっと…カマキリみたいな…感じ?だったよね?」


 ティアは恐る恐るファーラの方を覗き込む。彼は呆れたように首を縦に振った。忘れかけてたなこのババア。あんまり歳で弄るのもあれなのだが、流石に万年単位でサバ読む奴を弄らないわけにはいかない。


「カマキリ…あんまり好きじゃないのよねぇ…。」


「まぁそう言うな。だが問題はどうやって聖域に入るかだが…。」


「ボクが着いていくよ。知り合いだから入れてくれるでしょ。うん。」


 サリアの申し出に、ファーラは怪訝な顔をした。俺も思わず同じような顔をした。


「何だい。」


「お前…アウローロの容姿とかちゃんと覚えてるのか?」


「あのさぁ!!ボクだって流石にみんなの顔は覚えてるよ!!鋭い目つきにデカイ鎌!!忘れるわけないじゃないか。」


「じゃあコスマーロの事は覚えているか?」


「…。」


「おい。今の沈黙は何だ。」


「…まぁ大丈夫大丈夫。向こうがきっと覚えてるさ。ハハハ。」


 本当に大丈夫か不安になってきた。サリアも同様のようで、不安げな顔で「本当に信じていいの?」という顔でこちらを見てきた。こちらを見るな。


「まぁ…大丈夫だろ。うん。じゃあサリアを頼むぞ。」


 これでも一応賢者というだけの知識と能力は持っているんだ。信頼はしている。


「OKOK。任せたまえ。」


 彼女は胸を張った。…信頼しているからな?頼むぞ。


「では我と魔王は竜族の集落へ行くとしようか。」


「あ、今回は私も同行致します。魔王様の補佐や金銭の算段が必要かと思いますので。」


 いつの間にかジュゼが後ろに来ていた。昨日とは違い、彼女はいつも通りの冷静さを取り戻していた。


「え、あ、それはいいんだけど、書類仕事とかの方は?」


「トンスケがヒーヒー言いながら頑張ってくれております。ささ、参りましょう。善は急げです。」


 ジュゼに押されるがまま、俺はファーラの背に乗り、再び飛び立った。


 …トンスケに何かお土産でも買っていってやろう。そう思いながら俺は激しく揺れる彼の背で必死に意識を保とうとしていた。



 そして、よく考えたら転移すればいいじゃんと気がついたのは、彼の背で再び気を失う数秒前であった。



*********


 執務室。


 トンスケと部下のスケルトン達が泣きながら書類にハンコを押していた。


「最近…、ペタリ、雑用を全部任せられている気が…、ペタリ。はぁ…骨身にこたえますぞ…。ペタリ。」


 トンスケはぶつぶつと言いながらも、実務作業の方を淡々と進めていた。やる気のある魔王に変わったことを、彼は大変に歓迎していたし、巻き込まれた身であれだけ魔界のために尽力する魔王を尊敬すらしていた。その一方で、自分の身に仕事が降りかかることについては、何とも言えない思いを抱いていた。嗚呼、願わくば魔王様、吾輩に何かお土産をお願いします。そう思いながら彼は、ジュゼに押しつけられた仕事を粛々と進めることにした。

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