第四十二話 目覚めたる魔界の王|業火絢爛(後編)
「なんだ、なんだそれは…。なんなんだ、お前は!?」
ユートの影が驚きの声を上げる。
[Mode Blade!!]
俺はパーツを組み換え再びブレードモードに切り替えて、奴に向けて言った。
「俺は魔王だ。」
そして炎のアイコンをタップしながら続けた。
「お前の野望を打ち砕き、この地に住む人々を守る者だ!!」
[Volcanic-Fire!!]
ヘルマスターワンドの剣先から獄炎が舞い上がり、剣全体を包み込む。
「でりゃあっ!!」
[ヘルマスター!!][ボルカニック!!][ファイアーブレイド!!]
その炎の剣を影へと振り下ろした。
「ぐっ…。」
影は咄嗟に剣を横にしてそれを受け止める。だがヘルマスターワンドの獄炎はそのようなものでは付け焼き刃にすらならなかった。剣を纏う炎が、受け止めた影の剣を包み、そして文字通り焼き切る。
「ぬぁっ!?」
二つに分かたれた剣を見て驚愕する影。
パーツを取り替え、三つを縦に、剣先を出したパーツを一つだけその先端のジョイントへ横向きに取り付ける。
[Mode Scythe!!]
「おりゃあっ!!」
俺は死神の大鎌のような形となったヘルマスターワンドをかざし、斜めに振り下ろす。大鎌の炎が斜めに軌跡を描き、死神の笑い声と共に、影の体に炎の傷を付ける。
「ぐぁぁぁっ!!」
炎の熱さ故か、大鎌が与えた傷故か、或いはその両方か。影は苦痛の声を上げる。
「バカな…。なんだ、これは。この影は、そう簡単には傷つかないはずなのに…。」
知ったことではない。俺に分かるのは唯一つ。今が攻め時だという事だ。
「でりゃあぁっ!!」
ズバァッ!!という音とともに影が傷を負い、黒い霧のような血を撒き散らす。その血は炎の空気に塗れて消えていく。それにつれてその影もまた、徐々に薄れていく。どうやら魔力による制御が出来なくなりつつあるようだ。
影はもはや抵抗するでもなく、薄れる手を見つめて嘆くように言った。
「勇者が…負けるのか?魔王に?悪の魔王に?」
俺は言った。
「勇者が負けるんじゃない。」
そう、俺の知る勇者は、こんな事では嘆かない。負けない。そもそもこんな事をしない。
俺は炎のアイコンを二回タップした。
「お前がお前だから負けるんだ!!」
[Volcanic-Fire!!][Volcanic-Fire-Finish!!]
「燃え尽きろ!!その腐った野望と共に!!」
トリガーを引きながら、大鎌を振り下ろすと、ヘルマスターワンドとデュアルボウトリガーが叫ぶ。
[ヘルマスター!!][ボルカニック!!][ファイアーサイスフィニッシュ!!]
莫大な魔力と莫大な熱量がヘルマスターワンドに集中する。そして、大鎌が敵を切り裂いた瞬間、炎の死神が大きく笑いーーードガン!!ドゴン!!ドッカァァァァン!!という爆発音と、それに伴い生じる爆煙が、コロシアムを包み込んだ。
「ぐぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
影は断末魔を残しながら爆散した。
[Mode Shield!!]
爆発の後、何も残っていない事を確認すると、俺はシールドモードへと切り替えた。そして魔界の天井の穴、俺達がロケットで落ちてきた場所に向けて発動した。
[Volcanic-Fire!!][Volcanic-Fire-Finish!!][ヘルマスター!!][ボルカニック!!][ファイアーシールドフィニッシュ!!]
音声と共にヘルマスターワンドから巨大な炎が発生し、魔界の天井に開いた穴を包み込み、巨大な炎の壁を形成した。恐らく先程の影はあそこから降りてきたのだろう。これでしばらくは入ってこれまい。
「ふぅ。」
俺はヘルマスターギアを解除し、とりあえず一息ついた。
「おお…。あれをこうも簡単に使いこなすとは…。」
ファーラ=フラーモが感心したように声を漏らした。だがその声は弱々しい。傷を負っているのだ、当然というものだ。色々立て続けに起きていたので忘れかけていた。
「すまない、今勇者のところに連れて行く。あいつなら回復出来るだろう。」
「ああ、すまないが頼む。」
[空間!!]
俺はディメンジョンコンキュラーバロットレットを起動し、ロケットの元へと転移するよう、空間転移を選択した。幸い、機能は起動した。この炎の聖域内であれば転移には問題ないようである。ファーラ=フラーモを連れて行く事も出来そうだった。だがサリアやハイが見たらビックリするかもしれない。ファーラ=フラーモの巨体に手を当てがりながら、俺は今起きた事の説明を考えつつ、サリア達の元へと転移した。
*********
「何故だ…。何故だ何故だ!?」
自然界、大空洞の近く。ある男が地団駄を踏んでいた。
「私の影が、私が、何故負ける!!あの悪魔に!!悪の権化たる魔王に!!」
その男はフードを深く被り、顔を隠していたが、その唇は不快感故に歪んでいた。
「私が"今の勇者"ではないからか?私自身が魔界に踏み込んでいないからか?私に仲間が居ないからか!?それとも…。」
私が正義では無いからか?その疑問を男は呑み込んだ。決してこれを口にする事だけは出来なかった。それを口にしては、自分の行動が肯定出来なくなるからだ。
「…ふん。」
男は塞がれた穴を見て、この大空洞からの攻撃はもう出来ないと悟り、踵を返し戻る事にした。他にも手はある。元々立てていた計画もある。そちらを遂行すれば良い。彼はそう頭を切り替え、元の場所へと歩みを始めた。
熱気で汗が滲み出てきた。男はフードを取り、流れてくる滴を拭き取った。
その顔は死体の如く腐り果てていた。
片目に至ってはドロリと垂れ落ちている。彼はそれを元の位置へと戻すと、
「…私が、私が勇者だ。」
そう延々と呟きながら、大空洞を後にした。まるで何かに取り憑かれた亡者のように。
<アイテム解説>
■デュアルボウトリガー
エレグの魔王としての能力と意識が更に覚醒したこと、そして獄炎王ファーラ=フラーモが当代魔王として彼を認めたことで、ヘルマスターワンドが進化し、生成したパワーアップアイテム。
ヘルマスターワンドの既存スロットに装填することで、二つのバロットレットを装填・発動できるようになる。
ファーストスロットにバロットレット、セカンドスロットにプロトバロットレットおよび一部のバロットレットを装填することが出来る。
上部には別のジョイントが存在するが、現在は未使用であり、その用途は不明。
■ドラグボルケーノプロトバロットレット
『獄炎』の力を秘めたバロットレット。ファーラ=フラーモの力を元に生成されたバレットロット。古い魔力体系で生成されたため、形状が今までの物と異なる。
デュアルボウトリガーのセカンドスロットに挿入することで効果を発揮し、ファーストスロットのギアの上からドラゴン型の強化ギアが装着される。
全ての攻撃に炎属性が付与された上で、炎属性の攻撃が強化され、更に吸収不可の効果が付与される。
胸のドラゴンの顔からボルケーノブレスを発動することも出来る。
コールは[ドラグボルケーノ!!]。攻撃音声は[ボルカニック]。




