表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/147

第四十一話 目覚めたる魔界の王|業火絢爛(前編)

「む、ぐぅ…。不覚…。」


 背中にバッサリと切り傷を刻まれたファーラ=フラーモが、嘆くように口を開いた。


「いやいやぁ、魔王様ァ。よくやってくれたねぇ。君が大穴開けてくれたお陰で、私としても大事にせず君を殺す手配が出来たというものだ。」


 その切り傷を作った影が嫌味を込めながら不快な口調で言った。ところどころに通信の切れるノイズのような音が入る。これは魔通のそれに似ていた。手には鋭い剣を持っており、その剣先には赤い燃えるような血がベットリと付いていた。


「それは…実体のある幻影、コピーだ。誰かが外からこちらに送り込んできたのだ。」


 確かにその姿は黒く、人の影のように見えた。では誰が、どうやって送り込んだのか。後者は天井に空いた大穴からだろうことは、先程の言葉からも伺えた。


「お前は誰だ?」


 俺が問うと、その影は答えた。


「フヒェヒェ、覚えてないか、つれないねぇ。一度は会話したのに。」


 一度…?


「私はユート・デスピリア。ここにいるのは幻影だがね。勇者として魔王、そしてそれに与する悪を討つべく此処にやってきたのだよ。」


 ユート・デスピリア。魔界のシステムを破壊して魔獣/魔人と魔物の区別をなくし、魔界を弱肉強食の世界へと戻そうとする組織、「混沌の魔界」の首魁と目される人物。そしてかつての「伝説の勇者」の名。まさかここでその名前を聞くとは思わず、俺は少し驚いた。


「何故ここに…!?」


「さっき言った通りさ。勇者は悪を討つ、それが仕事なのだ。如何なる手段を使おうとも、ねぇ!!」


 そう言って奴は剣を振りかざし、ファーラ=フラーモに振り下ろさんとした。まずい。下手に受ければあの巨体でも死にかねない。


 [時間!!]


 俺はタイムルーラーバロットレットを装填し、時間を停止させ、奴の体を180度転回させた。


 ガチャン、と剣は空を裂き、石の床に叩きつけられた。


「むぅ?」


 訝しみながらこちらを振り向くユートの影。


「何をした。」


「企業秘密だ。」


 [覚醒!!]


 俺はアウェイクニングバロットレットを起動し、ヘルマスターギアを装着した。下手に時間停止のネタが伝わるのは避けたい。対策があるか分からないが、されては困るからだ。


「何故俺を、魔王を倒そうとする。」


 それに答えるように、影は俺に剣をかざし飛びかかってきた。[Mode Blade!!]ブレードモードに切り替え、それを受け止める。ガキンという剣と剣の鍔迫り合いの音が場に響く。影は口を開いた。


「フヒェヒェ、決まっているだろう!?勇者は正義であり、魔王は悪だからだ!!」


 影は堂々と言い放ち、力を込めて剣を振り下ろした。俺は力負けして後退りを余儀なくさせられた。そして影は勝ち誇るように剣を掲げて叫んだ。


「答えになってない。何故魔王が悪なんだ。」


 尋ねるとそれは答えた。


「決まっているからさ!!魔王は悪であり、魔界は闇に包まれていなければならないと!!私が勇者として、華々しく、そして美しく伝説に彩られるために!!フヒェ、ヒェ、ヒェヒェヒェ!!」


 影は不気味な笑いを上げた。何かネジが外れたような姿に見えた。


「無茶苦茶な…。」


 俺が呟くと、影は激昂した様子で叫んだ。


「貴様には分からないさ!!貴様に、急な心変わりが出来るようなお前には!!」


 そして再び剣を振りかざし、横に薙いだ。俺はとっさに後ろに下がりそれを避ける。


「ああそうだ、一生分かるわけがない!!私の、勇者の気持ちなど、貴様のような魔王に分かるわけがない!!故に話す必要も無く、貴様には生きる価値も無い。だからここで消す。魔王に与する邪悪な竜諸共殺し、私は最高の勇者として世に君臨するのさ!!」


 意味が分からない。心が壊れているようであった。言葉の節々に、自分に言い聞かせるような感情が見え隠れしている。もしかするとこうなった事には、何か裏があるのかもしれない。


 だが、そうだったとして、俺の知ったことではない。


「黙れ!!」


 俺は叫んだ。


「俺も!!こいつも!!魔界の住人も!!自然界の住人も!!みんな生きてるんだ!!お前の勝手な思い一つで振り回されていいもんじゃねぇんだよ!!例えそれが勇者の意思だったとしてもだ!!」


 だが影は鼻で嘲るように笑い言った。


「否!!それが勇者だ!!勇者とは正義だ!!正義とは何をしても許されるのだ!!」


 あまりにも独善的な発言に、俺は溜息を吐いた。ひと昔前に流行ったらしい、勧善懲悪を嘲笑うようなアニメでもこんな事言わないんじゃないか?所詮は過去の人間か。サリアとは全く違う考えであるのが良く分かった。ならば言おう。はっきりと。


「ああそうか。だがな、悪はお前だ!!」


「何ぃ?」


 影は、ユートは、言っている意味が心底分からないという声色で言った。俺は続けた。


「誰かを犠牲にしなけばならない時はあるかもしれない。だが!!それを正当化し、あまつさえそれが許されるだと?そんな正義、少なくとも俺は認めない!!そんな勇者俺は絶対に認めない!!」


 勇者とは、人々に希望を与える者。サリアはそう言った。俺もそう思う。だからこいつは違う。こいつはただのゲス野郎だ。何か理由があったとしても、今やっている事はゲスの極み、勇者の風上にも置けない、人間のクズだ。


「そんな勇者なら俺が…そんな、魔界の住人達に危害を加えるような者は、俺が、倒す!!」


 勇者が人々に希望を与えるなら、魔王の役目はなんだ?俺は同じだと思う。人々に希望を与え、絶望を与えようとする者から人々を守る事。


「それが、魔王の仕事だ!!」


 血管がはち切れそうな勢いで叫んだ。我慢ならなかった。ファーラ=フラーモを傷つけたこと、サリアを傷つけたこと、ブレドール王国の民を傷つけたこと、そして魔界の人々を傷つけようとしていること、その全てが許せなかったからだ。


 すると、握り締めていた杖が光り始めた。そして、俺の手元に、何か変なパーツが現れた。先端はまるでバロットレットのような形をしており、その先には二つのバロットレットのスライドのようなものがあった。だが片方は微妙に今まで見たものと形状が違い、セラエノからもらったものに似ていた。


 それを見たファーラ=フラーモは、手に力を込め、何かを生み出した。バロットレットだったが、セラエノからもらったものと同じ、微妙に異なる形状をしていた。


 彼はそれを俺に投げつけた。何が起きているのか分からず呆然としているユートの影を差し置き、彼が叫んだ。


「受け取れ!!今なら使えるはずだ!!それを二番目のスロットへ!!」


 そのバロットレットを折りたたむと、それは[業火!!]と叫んだ。


 俺はヘルマスターワンドのスロットからアウェイクニングバロットレットを取り出し、手に現れたパーツを代わりにセットした。



 [デュアルボウトリガー!!]



 今までと違う音声がそのパーツ…デュアルボウトリガーから流れた。俺は構わず、アウェイクニングバロットレットと、彼からもらったバロットレットらしきものをそのトリガーの先へと装填した。


 [アウェイクニング!!][ドラグボルケーノ!!]


 呆気に取られるユートの影に向けて、ヘルマスターワンドをかざしながら、俺は、


「刮目せよ…!!」


 と言い、ヘルマスターワンドのトリガーを引いた。


 [[Hey!!Let's Say!! Calling!!]]


 ヘルマスターワンドとデュアルボウトリガーが叫ぶ。すると天からヘルマスターギアと、もう一つ、ドラゴンのような形の鎧が現れた。


 [目覚めたる魔界の王!!ヘル・マス・ター!!]


 ヘルマスターギアを装着後、そのドラゴン型の鎧が俺の周りを炎で包み、


 [Featuring!!]


 デュアルボウトリガーが叫ぶと、そのドラゴン型の鎧は頭上で分解し、ヘルマスターギアを包み込むように装着された。


 [ボーボーゴーゴー罪を燃やせ炎!!業火!!絢爛!!ドラグボルケーノ!!]


 音声と共に、手の甲には爪、膝に足の爪、翼はヘルマスターギアのそれを補強するかのように赤い翼、そして頭にはドラゴンの頭を模したパーツが取り付けられた。ドラゴンの頭のパーツの、目に当たる部分が輝くと、


 [[降臨!!]]


 ヘルマスターワンドとデュアルボウトリガーが同時にそう叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ