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第三十七話 熱波の中で

 燃え沸る炎、地を流れるマグマ。熱気が魔法という壁を突き破らんとするかのように襲い掛かってくる。幸い魔法のお陰で無事ではあったが、それでも耐えがたいものがあった。南極の映像を目にする心なしか涼しく感じるのと逆である。暑い物を見るとそれだけで暑く感じてしまう。それが例え気のせいだったとしてもだ。


 俺達はこのまま留まりたくないという気持ちから、一度ロケットの中へと戻った。宇宙人が俺達を出迎えてくれた。


「無事でしたか?」


「ああ、まぁ大丈夫。ただ外は出ないほうがいい。とりあえず帰ろう。詳しく話を聞きたいが、ここだと落ち着かないし。」


 [空間!!]


 俺はディメンジョンコンキュラーバロットレットを起動しギアを装着すると、[転移]をタップした。魔王城に戻るためだ。だが俺の予想に反して、トリガーを引いても何も起きなかった。


 [ERROR、魔力妨害により転移不可能です]


 無情なアナウンスが杖から発せられた。


「ハァ!?」


 俺は思わず杖に向かって怒鳴ってしまった。だがどうにもならない。何をしても光は放たれない。


「…なんだこれ。」


「魔力妨害ってなに?ここに何かあるの?」


 サリアの純粋な疑問を耳にして、俺は一つ思い当たる節がある事に気付いた。ここが火の未開拓領域だとしたら、確か魔力が溢れて危険な地域という話だった。その膨大な魔力が空間転移の邪魔をしているのではないだろうか。…だとしたら、転移で出る事は出来ず、この領域から他の手段、或いは自力で脱出する必要があるという事になる。


 ヤバい。


 俺は一縷の望みを胸に通信機を起動した。だが予想通り、それも起動しなかった。まぁ当然だろう。このヘルマスターワンド、魔法の髄を集めたようなものでもダメなのだ。通信機が使える道理が無い。


「ぐぬぬ…。」


 俺は歯ぎしりをした。


「ねぇねぇ、どうしたの?」


 状況が把握出来ていないサリアが首を横に振りながら尋ねてきた。


「ここは魔界の未開拓領域、魔力が多すぎて危険な場所だ。そのせいで通信も空間転移も出来ないらしい。」


「え、何、それじゃこのままアタシ達ここで一生過ごすの!?」


「なんですって!?」


 サリアと宇宙人が同時に衝撃を受けた顔をした。俺は泣きたいくらいだった。だがそこをぐっと堪えて言った。


「一生なんてゴメンだ。なんとか脱出する方法を探さないと。」


「そ、そうね。このままここで丸焼けなんて嫌だもの。」


「え、ええ。何とか脱出せねば。私もこの星の王様に色々お伝えしなければならない事があるのですから。」


 宇宙人が意気込んだ。王様ねぇ。俺も一応魔王ってこの世界の王ではあるんだけど、何を伝えようとしているのか、聞いておいた方が良いだろうか。というかそもそも彼?が誰かも分かっていない。そこについても解消せねばならないだろう。


 俺は宇宙人に身の上話ーーー自分が魔王で、隕石を壊しにきたのだという事を説明した。


「なるほど、そういう事でしたか。それは失礼しました。事前に連絡などが取れればよかったのですが、生憎そういった当ても無く、とにかく生きていけそうな星へ逃げるのが精一杯だったものですから。」


 宇宙人は礼儀正しくお辞儀をした。これは宇宙共通の挨拶なのだろうか。


「こちらの星の礼儀としてはこれが正しい挨拶だと先程調べまして。」


 さいですか。


「改めましてご挨拶を。わたしはハイと申します。およそ千光年離れた、我らが母星よりやって参りました。」


「数千光年って事は出発は相当前なの?」


「いえ、光速超航行という技術がありまして、魔力を使う事で宇宙空間に限り光速以上の速度で移動するという技術ですが、それで参りましたので、出発自体は数年前でございます。」


「ワープってやつ?」


「こちらの星ではそう呼ぶのですか?」


 混乱してきた。単語は無いけど技術はあるという、世界の違いとは難しいものである。


「いや、いい。まぁ分かった。で、何故この星に?」


「先程も申し上げましたが、二点ありまして、一つは例の魔喰怪獣に我が母星を食われたため、もう一つは、生存可能な惑星への移動を試みた結果この星が最も適していたためです。」


「母星を…食われた?」


 サリアが声を低くして尋ねた。


「ええ…。あの怪獣達が大量に襲いかかって来まして、あっという間に。」


「さっき斥候って言ってたけど、本隊がいるの?」


「ええ。我が母星を喰らった連中が。どうも奴らは、一定の周期で魔力のある星々を周っているようでして。私の星を喰らったという事は、次は…。」


 あれが、大量に襲ってくる?俺は考えただけで身の毛がよだつ思いがした。一匹だから簡単に仕留められたが、あれが大量に襲って来たらどうなるんだ?自然界は?魔界は?


 頭が痛くなって来た。ただでさえ混沌の魔界の連中の対処も考えなければならないのに、そこにこの怪獣がプラスされ、勿論内政も進めて…。ああ、やる事がいっぱいありすぎる。どっから手を付ければいいんだ。前から何度も何度も思っているが、転生元のエレグよ、お前はクズだ、お前のせいで俺はこんな酷い目に合わされているのだ。今頃奴は俺が元居た世界の天国か地獄にいるのだろうか。おお神よ、願わくば奴が地獄に叩き落とされておらん事を。俺は無宗教だけど。


「嗚呼畜生。」


 思わず俺は悪態を吐いた。


「どうしたの?」


 サリアの質問に俺は、


「いや、ロクな事が無いこの人生を儚んでた。」


 と答えたが、サリアは言った。


「そんな悲観的に考えても仕方ないでしょ。それに、何とかするしかないじゃない。アンタ魔王なんでしょ?」


「まぁ、ねぇ。」


「アタシだって手伝うからそこは安心しな。なんせアタシは勇者、人々に希望を与えるのよ。勿論それは魔王のアンタだって例外にはしないわ。悪い魔王じゃないのは見てて分かったしね。」


「ありがたいこって。」


 こんな口調で言ってしまったが、本当にありがたいと思った。こんだけ抱え込むと、自分だけではどうにもならない。だが彼女やティア、それにジュゼやトンスケが居てくれる。それだけで少し心強く思えた。


「ま、とにもかくにも、だ。ここから脱出しないとどうにもならないな。ハイ、お前はここに居てくれ。下手に外に出ると危険だ。」


「分かりました。ロケットの修理が出来ないか試してみます。」


「ん。サリアはハイの護衛を頼む。」


「オッケー、任せといて。」


「俺は探索だ。んじゃ行ってくる。」


 気をつけてねというサリアの声を背に受け、俺は「おう」と答えると、熱風渦巻く外に出た。まだ生存用魔法は健在で、この熱波の中でも快適に過ごせていたが、眼前の光景は先程と変わらず、目に入るだけで汗が滲むような豪炎が吹き荒んでいた。

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