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第二十三話 会談

 私は自然界の王国の一つ、イージス王国の王、エスカージャである。…しつこい?そう言われても困る。


 私は城の会議室で右往左往していた。魔界の王から会談の申し入れがあったためだ。内容は今後の自然界との友好関係維持について。私は最初にそれを聞いた時ホッとしたものである。我がイージス王国は魔界との出入り口がある唯一の国である。他の国にもあるかもしれないが、公には見つかってはいない。重要なのは、魔界がもし自然界へ侵攻を開始するとしたら、まず真っ先に対象となるのは直接の出入り口がある我が国だろうということだ。昨今そのような関係に至ってはいないが、数年間の音信不通、ここ最近の妙な魔通などから、もしかすると、という懸念が大臣達の間でも囁かれていたし、私自身少し不安に思っていた。そこに来て向こうから友好関係の"維持"と言ってくれたのは大変安心出来る。今回の会談にも余裕を持って対応出来るというものである。


 とはいえ魔王との対面である。先方が代替わりしてから初めての対面。恐ろしくないと言えば嘘になる。どんな巨漢が出てくるのだろうか。私は足を震わせながら、粗相の無いように三十分程前からこの部屋で先方の到来を待っていた。


 会談の時間五分前。飲んだポーションの数は五本を超えた。とその時、兵士達がざわつき始めた。来たかと思い椅子を立ち窓の外を見た。


 魔王達一行が城への道を歩いていた。道端の民草がそれ姿をまじまじと見つめていた。先頭を歩くのは死霊族の、確か外交担当の大臣だっただろうか。その後に女性が二人、一人は氷のような肌をしたグラマラスな女性で、一人は子供に見える。…子供の方はどこかで見た気もするが、記憶が無い。不思議なものである。その後に魔王らしき人影があった。その魔王は意外と小柄であった。竜族とは聞いていたが確かにその通りで、角と翼が生えていた。周りには数人の兵士…というよりも大臣クラスの者達だけのようであった。こちらを信用してくれているのか何なのか。変に気を揉まなくて済むので有難いと言えば有難い。


「お待たせしてしまったようで申し訳ありません。顔を合わせるのは初めてになりますね。私、魔界の王を勤めております、エレグ・ジェイント・ガーヴメンドと申します。この度はお時間頂きまして有難うございます。」


 そう言うと彼は手を差し出してきた。私は迷わずその手を掴み握手を交わした。


「いえいえ、今用意出来たばかりですので、お気になさらず。私はイージス王国国王、エスカージャ・ガードです。こちらこそこの度はよろしくお願いします。」


 社交辞令的な嘘を噛ませながら挨拶を済ませ、私達は信用のおける側近だけを連れて城の中へと招き入れた。



「今回お話ししたい事は二点ございまして。まず一点目としましては、直接のご挨拶をさせて頂きたいと思った次第です。就任以来直接のご挨拶が出来ておりませんでしたので。」


 そういうと彼は大きめの箱を渡してきた。


「こちら、お土産でございます。先日は失礼な魔通を行ってしまい大変失礼致しました。その分も含めてという事で。」


 何かと問うと、ドラゴンの薫製だと言う。どうもどうもと側近に渡し、仕舞うように伝える。顔や態度には出さないようにしたが、これは私の好物である。魔物を狩るという事自体が難しいこの自然界では入手が困難なので、口にする機会は極めて少ない。きっと先方が私の好物について調べてくれたのだろう。心遣いが大変嬉しい。内心ではウキウキである。踊り出したいくらいには嬉しい。もうこの会談を終わらせてさっさと食べたいと思ったりもする。だがそれは流石に失礼なのでやめておく。


「さて、二点目で、こちらが本題なのですが、実は折り入ってお聞きしたい事がございます。」


「あ、え、はい。なんでしょうか。」


 声が上ずってしまった。

「あのですね、ブレドール王国についてなのですが。」


 その名前を聞いて、なるほどこの会談を設けた理由が何となく理解出来た。ブレドール王国は勇者信仰の国。魔界敵視政策を取っている事で有名であった。


「ああ…。なるほど、彼の国の動向についてですか?」


 私の問いに彼は頷いた。


「ええ。大変不甲斐ない話ではありますが、私が王座についてから、自然界の方々との交流が取れておりませんでした。その中でも最も動向が掴めていないのが彼の国でありまして。ですが直接の連絡を取る方法もありませんで、そこでエスカージャ様、ひいてはイージス王国との交流の状況など伺いたいと思いまして。」


「ふむ。」


 どうしたものだろうか。というのも彼の国とは我が国もロクに交流を出来ていないのだ。…隠しても仕方ない。交渉材料にもならない。


「その点でしたら申し訳ありませんが、私共も情報が掴めていないのです。」


 あの国は自然界の中でも特異で、かつて魔界が完全な敵であった頃に勇者を輩出した経緯もあり、自国こそ自然界の盟主、魔界は敵であるという考えに取り憑かれている所がある。そうした経緯からあまり関わり合いが無いのだ。昨今は特に、勇者を輩出しても行方不明になったとかで、自国の伝統や歴史が否定されかけている事で意固地になっているところがある。外交をしようにも全く聞く耳持たずといった様相なのだ。困ったものではあるが。


 そういった事情を説明すると、魔王は苦い顔をして考え込んだ。それはそうだろう。私だってそんな話聞いたらそういう反応になるというものだ。


「なるほど。分かりました。では当方としましては、エスカージャ様の方で掴めましたら、当方にもご連絡頂きたいのですが、可能でしょうか。」


 恩を売るに越した事は無い。私は了承した。ただし交換条件を提示したい。自然界には魔界との行き来がストップする前に住み着いた魔物というのが未だに存在する。それらは繁殖も勿論するので、どうしても被害が出てしまう。我が国の軍備だけではそれらに対応しきれていない。辛うじて城下町等主要拠点は守れているが、それ以外が手薄になってしまっている。そこを何とかしてもらえないだろうか。私は提案してみた。


「その代わり、こちらで繁殖している魔物について、一定量の狩り、或いは守りの薄い村の警護をお願いしたいのですが。」


 すると魔王は二の句を告げずに断るような事はなく、しばし考え込んだ後、口を開いた。


「範囲等によりますが、村の警護は可能かと思います。その過程で狩りをする事も可能でしょう。具体的にはどのくらいでしょうか。」


 私は大臣に相談し、現状の被害量から考えられる優先度の高い村三つをリストアップした。ここらの治安が良くなれば、全体的な治安も必然的に向上するだろう。


「トンスケ、軍の一部を割けるか?」


「少々お待ちを。」


 そういうと死霊族…スケルトンの男が算盤を弾き始めた。…算盤?


「可能ですな。」


「分かった。…その件は引き受けましょう。当方の失態でもありますので。」


 あっさりと希望が通った事に私は安堵した。同時に、彼が信頼に足る人物であるという印象を抱いた。彼は魔界の失態である事を認め、その時に自責の念を顔に浮かべていた。彼の代より前の問題だというのに、誠実な人だ。


「ありがたい。ではこちらも、積極的に彼の国への働き掛けや情報収集を図るようにします。」


「それは助かります。ではその件に関しては、進展ありましたらご連絡をお願いします。派兵に関しては準備が出来次第ご連絡の上実施致しますので。」


「分かりました。」


 会談も上手くまとまり、なんとか終わりに向かいつつある。この魔王なら信頼出来るし安心出来る。


 そう思い安堵したその時、別の方向からぶん殴られる事になった。



「失礼致します!!」


 我が国の兵士が突然部屋に入ってきた。


「おい、急に入ってくるな。会談中だぞ。」


「しかし緊急事態ですので…。」


 嫌な予感がした。もうこの時点で嫌な予感がしていた。何というか、噂をすれば影というか、そんな予感がしていた。


「さ、先程国境より、ブレドール王国の軍がこちらに迫ってきているとの連絡がありました!!あと一日程でこちらの国境に到着する見込みであるとのことです!!国王、どのようにすべきか御命令をお願いいたします!!」


 それは的中した。私は頭を抱えて机の上にガタリと体を倒した。ドラゴンの薫製はしばらくお預けのようだ。

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