家とご飯とダンスと
「あの。私の事どれだけ騙せばいいのですか?」
「またまた、人聞きの悪い。騙してませんよ。」
都会の中にこんな森林あったの?なんて思うような木々の中に姿を隠していた大きな一軒家を私は神永さんと見上げている。
「私、ここに住むのですか?」
「ええ」
お互い家を見上げたまま話す。
「家賃は?」
「ありまあせん」
「……」
「ほら。だましたりなどしておりません。」
ゆっくりと神永さんの方に顔を向ける。
「あの……」
「花!!これ、邪魔!!」
「花ちゃん、この机処分??」
「花―、ゲームしよ!」
「てか、2人とも何してんの?早くしないと片づけおわんないよ?」
私の言葉を遮り、RAINBOW4人が家から叫ぶ。
「なんで!みんなと住まなきゃいけないんですか!!どうして、もううちの家具がここにあるんですか!!」
いつの間にか私の’元’部屋より持ってこられた家具たちはすでに4人によって運び込まれている。なんなら「これいらなくね?」などと家具の選別までされている。
「え?花さん、家賃がない家の事とても喜んでいましたので、早くしてあげようといろいろと手を回させてもらい、朝のうちに運び込みました。」
「やってること、警察に捕まるレベルですけど!?」
「大丈夫です。こちらにはきちんと契約書がありますので」
「荷物の運び込み、みんなと住む、なんてのは書いてありませんでしたけど?」
神永さんはもう一枚紙を取り出す。
「こちらに」
「……私の住む場所について?」
じっと見れば、RAINBOWに入る時にかいた契約書にはもう一枚重ねてあった紙があったみたいで……そのサインを書いた位置が複写になっていたらしく、住む場所について記入されている紙の一番下に私のサインがはっきりと書かれている。
「まじ詐欺ですよ?」
「気づいていたのかと思いました。」
いけしゃあしゃあと話す神永さん。
「何か間違いが起こっても知りませんよ?!」
私は女!!あとの4人は男なんだから!!
「ねえよ」
「何?期待してる?期待には応えようか?」
「おれの方が可愛いよね、花ちゃんより」
「コウちゃんは可愛いと思う!!」
急に声が降ってきたと思ったら4人が前で私を見下ろしていた。
「あの、」
「神ちゃん、一応花ちゃんの部屋に荷物入れといたよ」
「疲れた!今日ホントに仕事休み?」
「ビールくれ」
声は届かず私をほったらかして神永さんと話し始める。
いいんだ、ほったらかしにされるのは。でもそんな何もないって断言しなくても!!傷つく。しかもなんだろ。男の子なのにコウキくんの方がかわい……って、女より可愛くてたまるか……
「おれお腹すいた、何食べる?」
……前髪を上げて顎に手を当て、凜太郎君とごはんについて話しているコウキくんは……可愛いかった。完敗です。ごめんなさい。
うん……もういいや、間違いはないって言ってるし、家賃はタダ!メンバーと交流も取れるし、遅刻もしない、お金も貯まる。はははーイイコトヅクシだー。
……まじでいつか契約書燃やしてやる。