トップアイドル争奪戦とアイドル達
話題性は大事である。
食べ物、娯楽、洋服など、なにかと話題はコロコロと変わり、そして尽きない。
1番おいしいもの、高いもの、すごいもの、など、関心は様々。
どの分野においても、1番、というのは注目を浴びるものである!!
話は変わるけど、自分の推しは何事においても1番だと、ファンは思っているはず。
「いやー、君の好きなアイドルもかっこいいよね!(私の推しの次に)」
「あの笑った顔かっこいいね!!(私の推しの話も聞いてー)」
など、少し思ってしまったこともあった。いやーあの時は嫌な女だった!
推している人は自分の推しを一番にしたい、知ってほしい魅力を!!!と本気で思っている。
だが、その当の本人たちはそれをどう思っているのか!!そんなのは本人以外わからない。わかることができない……
だから、私一生わかることない、って思ってた。それなのに。
「4月、あの例の大会あるからね。」
コウキくんの誕生日も済み、仕事をこなしていた2月のある晴れた昼間。
社長に呼び出されたれ、この話を聞いて数十秒。思考回路は数秒で過去の推し事などを思い出した。
「トップアイドル争奪戦!勝っておいで」
そして、この言葉で回路は速攻で動いた。
「忘れてたよ、それ……1年に一回の!!トップアイドルを決める大会あったことをー!!!」
思わず叫び、ゴン、と机に額をぶつける。
「ちょ、神永!花ちゃんの額へんでない?!」
「まさか、花さんの頭は固いはずですよ」
「大丈夫だって。花の額は丈夫」
「そうそう!」
5人で社長室の最近新調されたソファーに腰かけている。
私はといえば、いまだそのイベントを忘れていたことと過去の自分を振り返り、額はひりひりと痛むが顔があげられない。
毎年4月に本選が行われる。
ちなみに予選は3月。
男女問わずアイドルグループが出場する。
まあ、それに出場するのも審査があるんだけど、社長が勝っておいで、て言うから出場は決まっているのだろう。
行われるこのイベントは3月、4月で3日間ある。
3月は1日ドームを貸切、争奪戦に出るアイドル達と運動会のような物を見せる。まあ、これはファンへのアイドルサービスだろう。
その後ドームでの活躍や日頃の活躍で、“良い”とおもったアイドルたちに一般投票が行われ、その上位3チームが4月の本戦に出場する。
優勝者には自分たちの番組が1年間持てる、と言うもの。
しかもその1年で視聴率が高いとその番組は2年目も続行される。
まあ、DOTの時はものすごい頑張って投票した、1位になった時は泣いて喜んだ。
そしてDOTは2年連続優勝を掻っ攫ったのだ。
「去年優勝のDOTは今年でないから優勝しておいで」
思い出して感動していると社長の言葉でハッとする。
「天さんたち、出ないんすか?」
「でませんよ。2年連続で、今トップアイドルとして君臨しているのはDOT。DOTの下はRAINBOWや、フラワーフライヤー、青バラ連合など、他にもいるアイドル達はほぼ横1列ですからね。またDOTがでたら1位掻っ攫われますよ」
神永さんの冷静な敬語に「さすがDOT……」と蓮さんが声を漏らす。
「と、言うわけで!話からして3月出るのは決まったから4月本選に必ず勝ち残ってね」
「……は、い」
全員で小さく何度も頷き応える。
ソファーに背を預け足を組み笑顔で話す社長は“いつもの明るい社長”そのものなのに圧すごい。
「DOTに一番近いのはうちのグループだと、見せつけてくださいね。みなさん。特に、フラワーフライヤーには負けないように」
おお、神永さんの口元引き攣ってる。何か因縁が??
「被ってるんですよ、全く。絶対勝て」
「いや、あんまかぶってないよ?!怖いよ。神ちゃん!!」
コウキくんが思わず突っ込む。
被ってるか??フラワーフライヤーと……
フラワーフライヤー。通称【フラフラ】
アクロバットが得意でライブでサーカスの様な空中ブランコ等の見せ物も披露する、4人組。
アクロバットが得意な割に、物凄くゴツく筋肉すごい、って感じではなく本当に爽やかなグループである。
まあ、爽やか、はうちにかなたさんがいるからな、一応被ってるか。
私的にはファンを「お花達!」って呼ぶのが寒くて無理だけど。多分就職先がフラフラなら辞退してたわ。
「オレとしてはバラ連が怖い」
凜くんが私の肩にわざとらしく頭を置く。
青バラ連合。通称【バラ連】
宝塚のように男装しているカッコいい女の子の5人グループ。確か2人は留学中だったような。
みんな背がコウキくんぐらいある。
コウキくんは172くらいだけど、それよりも高い人もいる、威圧感がすごい。
ここは、なんと言ってもファンが、怖い!!青い特攻服に背中に金の“青バラ連合”の刺繍。
バラ連と同じ歌番組に出ると青い特攻服はとても目立つ。それを前に歌う恐怖!!
そして熱狂的。
「他にも手強いチームがおおいだろうね。どーする?蓮」
「手強そうなアイドルばっかで腕がなるわ!」
ハッと蓮さんが笑う。
「とりあえず銀さんと天さんはでない。ファンが表が分散されるのは明らか。どうやって表あつめようかねー」
ぐっと背伸びをしてかなたさんは微笑んだまま座り直し私たちを見る。
「ま、その辺は神永にも協力してもらって対策練って勝っておいで」
「社長ー勝ってしかいわねーじゃーん」
「凜太郎、負けると思うのかい?」
「まさか!」
社長に向けてvサインをして、ソファーに足をあげ座り持っていたいつのも飴を咥える。
「とりあえず3月までに種撒いとかなきゃ!……今年はRAINBOWが1位だってとこ見せてやるぜ」
「コウちゃん、かっこいい!!」
いつもの可愛さから一転し、コウキくんが舌なめずりをする。
こ、これをファンに見せたら発狂ものでは?!
「花ちゃん、意気込みは?」
社長が笑顔で首を傾げる。
「花さんはテレビで見たことありますか?」
「それはもちろん!!私DOTに入れましたもん、表!!」
思わずグッと片腕を挙げる。
「おーおー、熱狂的ファンだ事」
「おれらも出てたのに、去年」
「花ちゃん、俺ら見えてなかった?もしかして」
「どこがいいのほんと!!あんな女たらし!!」
蓮さん、コウキくんに続き、かなたさんと凜くんにもぶつぶつ言われる。
しょうがないじゃん?!推しが一番!!
「だ、だけど!今年はRAINBOWが1番になるように最善を尽くします。」
「おー、がんばろーなー!」
凜くんが私の頭に手を乗せる。
「じゃ、期待してるからね。」
社長の言葉に全員で頷き、神永さんも小さく微笑んでいた。