今年初仕事と成人式と恋の病5
買い物を無事に済ませた私とかなたさんは、DOTからの誕生日ケーキを預かり、他のメンバーが帰ってくる前に家でご飯を作っていた。
DOTもくるのかな?なんて思ってたけど、前聞いた通り誕生日当日はRAINBOWのみで祝うらしい。
ほんと何度も思うが仲がいい。
「花ちゃん、シチューはどう?」
「いい感じに煮込んでます!」
基本料理ができない、いや、得意ではない私は混ぜたりこねたり焼いたりとそんな係り。
窓の外は薄暗くなる。冬は暗くなるのが早いな。なんて思ってるとガチャリとドアが開くおととと同時に「花!!」と叫ぶ声がした。
「この声は凜だな。迎えに行ってあげな」
「はーい」
火をとめ蓋をし、なかなか中に入ってこないのを不思議に思いながら玄関に。
そこには立ったまま下を向いている凜くんのすがた。
「凜くん?」
「花……ん」
私の顔を見るなり両手を広げる。
何?腕の中に飛び込めと??
「え?」
「……いや、そこは飛び込むとこでしょ!」
「いや、しないから。なぜ!!」
「んー?オレがしたいから!」
近くまで行った私の腕をひき緩く抱きしめられた。
「花」
「……どうした?おかえり」
「ただいま」
服を掴むと私に回った腕に力がこもった。
何かあった?なんて聞いても、したかったって言うだけ。
「甘えたかったの?」
「うん」
「おお、なんか素直!」
「うるさいよー」
少し体を離して笑いあう。
いつもの凜くんに戻った?と思うと体が離れそのかわり手を繋がれた。
「今日のご飯は?」
「一応シチューが出来ております!」
「まじ?かなたくんのシチュー好き!あとはオレが特製オムライスを作るんだー!」
「かなたさん。それ待ってたよ!」
「花もまってた?」
「もちろん!」
そういうと凜くんが微笑む。
……可愛いじゃないか。その顔。相変わらず手は暖かいし。
「蓮くんは?」
「まだ!」
「じゃあ、蓮くん帰ってくる前に作ろう!コウちゃんにはまだ帰ってくんなってメールしといたし!」
凜くんが歩き出し私も後のに続く。
さっきのような不思議な凜くんはもういない。なんだったんだろう。
手を弾きながら明るく話す凜くんはいつも通り。まじでなんだったんだろう。
キッチンに着くと早速作り始める。私はそれを見ているだけ。
「おーい、花!かなた、凜!コウキは?」
「あ!この声は!」
「蓮くーん!!まだコウちゃんいなーい」
「おお、ならよかった」
玄関から響く声は蓮さん。
おお、もう少し玄関にいたら見られる所だった。
ひょっこり顔をだした蓮さんの腕の中には大きな長方形の箱。
「蓮、それなに?」
「え?コウキへの誕生日プレゼント」
「でっかい!中身なんですか?」
「ん?それは見てのお楽しみ。んで花、ちょっとこい」
手招きされソファーに深く腰掛ける蓮さんに近寄る。
「なんでしょう?」
「手だせ」
大人しく手の甲を見せるように右手を出す。
「ばか、両手で、手のひらを見せろ」
言われた通りにすると手に綺麗にピンクでラッピングされた箱が置かれた。
「なんですか?」
「ん?御前、俺の香水いい匂いっつたろ、やる。」
「え?!いいんですか?」
「ああ、よかったなあ、俺と匂い一緒」
手が伸ばされ頭を撫でられる。
あのマフラーの香水。ほんとにいい匂いだと思ったけどまさか買ってきてくれるなんて!でも一緒の匂いとか姫奈に悪いような……
「うれしくねえのかよ」
「え?いや、嬉しいですけど姫奈に悪いなと」
私が言うと蓮さんの表情が一瞬曇った。
「蓮さん?」
「……いや、姫奈にもやったから。御前にもやるの了解済みだから。使え」
「あ、それなら」
「もー!!蓮くんすぐ花口説く!!」
「うるさいのがきた!」
いつもの重みが背中に乗り耳元で凜くんの声がする。
ほんと、すぐ乗る。背中に!!
「凜、御前オムライスは?」
「下準備はかなたくんがしてくれてたし、オレすぐ作れるもーん!蓮くん花口説くから卵破れたのにしたもん!」
私のお腹に手を回し言い合う。いつもの光景だ。
玄関での凜くんもさっきの蓮さんももういない、いつもの2人。
「御前にもかなたにもコウキにも同じ香水買ってきたのに凜にはもうやんねえ!」
「え!!かってくれたの?花とお揃い!!」
「はいはい。みんなと、お揃いね。凜」
私たちの元にかなたさんもやってくる。蓮さんの横に腰を下ろしグッと背伸びをする。
「かなた、ご飯は?」
「終わった。あとはコウキまち。んで、香水は?」
「へいへい」
同じようにラッピングされたものが3つほどカバンから出てきてそれを机に置く。
「もらっていいの?」
「もちろん。やる。凜はいらねえんだもんな?」
「言ってない!言ってないよ!!ほら蓮くんもぎゅってしてあげるから!!」
「くんな!!」
私から離れ蓮さんに向かって両手を広げ近寄る凜くんを蓮さんが笑いながら嫌がる。かなたさんはそんな2にんをちらと見るもすでにラッピングを開けている。
「かなた、こいつ止めろ!馬鹿力なんだよ、凜は!」
「おお、やっぱりいい匂い!」
「無視か!花!」
「わーい、香水みてみよーっと!」
「御前もか!!」
かなたさんと2にんして蓮さんの事を無視し、箱を開ける。
シンプルな透明な四角い形の香水。中の液体がピンクなのがかわいい。
蓋を開ければやはりいい匂い。だけど前匂った時より甘さが減ってる??
「これ、前につけてた香水ですよね?」
「は?ああ。なに?違う?」
「チャンス!」
「あ!凜、御前!」
蓮さんの手から香水を奪い取り、予想通り雑にラッピングをはぎ早速手のひらに吹きかけた。
「ん?蓮くんこの前よりも甘さ控えめ?」
「まさか!」
かなたさんの手に近寄り吹き出し口を直接匂う蓮さん。眉間に皺を寄せて首を傾げる。
「一緒だけど?」
「じゃあ、蓮のフェロモンと混ざって余計甘かったのかもね!」
「まじ?!蓮くん、すげえ!!」
凜くんは、まじか、すげえ。なんて呟いている。
かなたさんはクスクスと肩を揺らして笑ってる。
こりゃ凜くんからかわれたか!蓮さんも、「すぐ信じる」なんて呆れてる。
私は手の中の香水を見る。
5人で同じ匂いなのはなんかグループって感じが強くていいな。
「ただいまー!!ちょっと、主役!帰ったよ!!」
「コウちゃんだ!!腹へった!!」
「言うだけなら迎えに行けよ凜」
「行ってくる!!」
蓮さんからの香水を何故か凜くんが持って玄関に走る。なぜ!!
「さて、温めようかな、ごはん!花ちゃん手伝って!」
「はい!っえ?」
机に香水を置いてそちらに向かおうとした矢先、蓮さんに手を掴まれた。
「蓮さん?」
「花、香水嬉しいのか?」
「もちろん!!ありがとうございます、たいせつにします!!」
そっか、と蓮さんの表情が和らぐ。
「んじゃ、お返し楽しみのしてる!」
「えー!!それ狙い?!」
「ばーか!はやく行け、かなたんとこ!」
「いたっ、はい!」
空いている手で私の額を軽く弾くと凜くんの落としたゴミを拾い始める。
変な蓮さん、って思ったけど額の痛みからやっぱりいつもの蓮さんだなーなんて思いながら私はかなたさんの元に向かった。