今年初仕事と成人式と恋の病4
「まさか、銀さんだったとは。」
「かなたに頼まれてたんだよ、かわいい後輩の頼みを断るわけにもいかないし、花ちゃんにはいつも天が迷惑をかけてるからね、これくらいなんでもないよ」
ね、とバックミラー越しにウインクをされて、天さん最推しで箱推しの私はちょっと刺激が強い。
かなたさんの言ってた、“足”というのは銀さん。NEWSの仕事を終えた後私たちを迎えに来てくれた。
私は今、銀さんの車の後部座席を1人で座っている。かなたさんは助手席。さすがに助手席に女はまずいかな、ってことみたい。
天さんはふつーに私を助手席に乗せてたけど、まあ銀さんのイメージってのもあるらしい。
「今日天さんは仕事なんですか?」
「そうだよ。あれ?確か凜と一緒じゃなかったっけ?」
「あー、凜、バラエティーはあんまり出演者とか気にしないから……あ、銀さんそこ右のが早いです」
「あーはいはい」
右左にゆられながら心地よいお兄さんたちの声を聞く。
なんて贅沢な。推しの車の居心地の良さ……耳をくすぐる音楽。天さんの甘酸っぱい柑橘系の匂いがする車内とは違う爽やかな匂いの。座り心地のいいレザーの椅子、そしてシートヒーター……天さんの車にもついてたけどほんとお尻暖かい。
「花ちゃん、眠い?」
「はっ!眠くないけどシートヒーターが気持ち良いです」
「天の車にもあったでしょ」
「ありました、これは最高です…」
「花ちゃん、寝てる?もうすぐ着くけど」
「もうすぐ着くなら起きてます!」
「そ、わかった」
バックミラーで私をちらちらと見ながらきを使ってくれる銀さんとたまに振り返ってくれるかなたさん。
ああ、ほんとにお兄ちゃんみたい。ああ、お尻あったかい……
そうして私は、起きてます、と言っておきながら夢の中へ。
目が覚めた時には駐車場に車が止まってて2人が前から私を見つめていた。
「ほんとよく寝てたね」
「ほんとに」
「ほんと忘れて欲しいんですが」
変装、と言う名の伊達メガネと帽子を被った2人が笑いながらお店のなかを物色する。
私もメガネと長い神を帽子の中に収めている。
なぜ、変装と言ったらこのスタイルなのか。なぜこれでバレないのか。
皆さん、ここにトップアイドルいますよ。
「さて、花ちゃんはコウキに何買うのかな?」
「あ、一応練習用のウエアなどを!!銀さんも何か買うんですか?」
横を歩いている銀さんを見上げる。
右にはかなたさん、左には銀さん。……ばれたらファンからの罵詈雑言は凄まじいだろう。
「僕は天がケーキ買ってやてって言ってたからそれを買いに。コウキに持って帰ってあげて」
「え、いいんですか?」
かなたさんがばっと銀さんを見る。
「いいよ、もちろん」
ああ、推しの笑顔はかっこいい。天さんはカッコ可愛いって感じだけど銀さんはかっこいいなあ。
「花ちゃん。銀さんみすぎねー」
「あ、何も見えなくなりました」
かなたさんが私の目を手で隠し、笑い始める。
「RAINBOWは過保護だね、ほんと」
「もちろん!うちの大事な弟、妹ですから!
「お兄様!!」
「あ、それいいねー、もっといって」
目隠しが取れれば楽しそうな2人の笑顔。いいなあ、こういうの。ずっと忙しかったから。
「さて、ウインドウショッピングも楽しいけど、僕らはあんまり長居できないしさくさく買い物していこうか!
周りを確認し時計をちらと見て銀さんがそう促す。
「たしかに。ここでバレたら俺ら神ちゃんに怒られる」
「あ、それはまずいです。」
「んじゃ、いこうか!」
「はい!!」
ますは私の買い物から。行き着いた場所はコウキくんが好きなブランドのお店。カラフルな色合いが特徴的で私には着こなすことができないけどコウキくんは難なく着こなす。
目がチカチカする。
お兄ちゃん2人とは離れ1人物色を始める。
練習技と言ってもコウキくんはTシャツといつも下はジャージ姿なのでまあ、上下セットを買えばいいだろう。
「しかし目が痛い」
どこを向いてもカラフルな物ばかり。私が着たら確実に蓮さんと凜くんは爆笑するだろう。
なんて思いながら何枚か手に取る。
コウキくんに似合いそうなピンクと黒、そして黄緑の入り混じったジャージを見つける。
「ガチャガチャしてるかな……」
3色の比率はおんなじくらいで、所々黄色の線と紫の線。目が!!痛い!!
「おお、目がいたい」
「あ、銀さん、かなたさん!」
「それ花ちゃんが着るの?!」
「まさか!!コウキくんには似合うだろうなって」
2人は私の手からそれを取り、広げて「たしかに」「コウキなら着こなすかも」とかんがえてくれる。
ただ、なんだろう、かなたさんと銀さんが持ってると2人がきるみたいで、に、似合わない。ちょっと面白い。
「に、あわない、2人とも」
いかん、笑いが込み上げてきた。
笑ってはいけないとおもうのに、思えばおもうほど耐えられない。
「あれ?花ちゃん笑ってる?」
「おお、ほんとに笑ってる」
「だって!その服2人が着るの想像したら!!」
銀さんに「この野郎」と優しく小突かれ、かなたさんに「俺も頬引っ張ってみようかな」なんて顔を覗き込まれるから私はまた笑ってしまった。
そのお店の人には不思議そうに見られて「まずい!」なんて銀さんが芝居じみてそれにかなたさんも乗っかる。
ほんとなんて楽しい買い物なんだろう。
私ははしゃいでいた。
だから
「蓮ちゃん、姫奈の事好き?」
「え?」
「凜、御前のライバル。俺だけやあらへんよ」
「どう言う意味?」
その時いろんなことが起こってるなんて知らなかったんだ。