今年初仕事と成人式と恋の病2
「あ、コウキもうすぐ20歳かぁ」
海風がゆるく薙ぐ。
撮影も佳境に入り、簡易椅子に座りながら凜くんとコウキくんの撮影中にモニターを見ていた私の横で、携帯を触っていた蓮さんがしみじみと呟いた。
そういえば。
「みんな誕生日いつなんです?」
なんだかんだバタついていて、おざなりにしていた。
「あー、言ったことなかったね、そーいえば」
はい、と暖かい紅茶を私に渡すと空いていた横の椅子にかなたさんが腰掛けた。
お兄ちゃん2人に挟まれている。ファンにはたまらないでしょう。
「おい、かなた。俺のは?」
「蓮がいつも飲んでるのコーヒーでしょ。これは紅茶」
「今日は紅茶の気分。花ちょっとくれ。」
「あー!!取った!」
私の手から器用に取り上げそのままのどに流し込む。
せっかく入れてくれたのに。
「んじゃ、これ飲みな?」
かなたさんの紅茶をもらい飲み込む。撮影中は気を張っているから寒くないけどOKがかった途端に寒くなる。
紅茶が暖かくてほっこりする。
「んで、誕生日だっけ」
「ん、そう、それ!」
「一番近いのはコウだよ」
「コウキくん!あ、さっき蓮さんがもうすぐって」
「そ。コウの誕生日は今年の成人の日なんだよ。」
え。思わずゲームをしているレンさんの携帯を覗き込んだ。
「蓮さん、画面待ち受けに戻してください!そしてカレンダーに!!」
「は?!今、いいとこ……つか、御前の携帯で……ほら」
渋々画面はRAINBOWが写ったトップ画面に戻り、カレンダーに切り替わる。
今日は10日。成人式は確か……
「1月13にちがコウキくんの誕生日ですか?」
「そうだよ。今年はコウキが成人式に出るから、お祝いは夜になるね」
「え!今年もお祝いしてくれるの?」
「さっみー!!あ、蓮くんいいもん飲んでるー!ちょーだい」
「ばか、凜!こぼれる!!」
OKがかかったらしく、2人が私たちの元に帰ってきた。
凜くんは蓮さんの紅茶を求め戯れている。よかった、かなたさんに返しといて。
「RAINBOWのみなさんはこちらに」
「あ、はーい」
スタッフさんが2人分の椅子を用意してくれて、カメラチェックが始まったので、監督さたちの後ろで集まる。
「コウちゃんのね、成人式の日ね、オレ仕事だけど早く帰ってくんね!」
「俺も早く帰ってコウの好きなもの作っとく。何食いたい?」
凜くんとかなたさんが楽しそうにコウキくんと話す。
つか、このメンバーまじ仲良し。
「蓮さん、いつもみんなの誕生日はこんな感じで祝ってるんですか?」
「ああ、御前まだ入ってから誰の誕生日も経験してないな。そういえば」
そう、私が入ってからまだ一度も誕生日のメンバーがいない。
「いつも4人で当日祝って、次の日とかに他の友達たちに祝ってもらう、って感じだな。だいたい、みんなそうだな。」
「あの、本当に思うんですけど、気持ち悪いくらい仲良いですね」
「御前な。ごめんなさい、は?」
「い、たいでふ」
蓮さんに頬を引っ張られる。いいかげん、蓮さんと凜くんに頬引っ張られすぎて伸びそう。
「あらら、また引っ張られてんの?花ちゃん、学ばない子だね!ブッサイクになるよ」
「コウキ。花の頬が引っ張られたいみたいでな」
コウキくんの言葉に、ス、とてが離される。
頬を撫でながら、4人で話し始めたみんなををみる。
いいのかな、こんなに騒いで、ってくらい笑ってる。
暖かくしてはもらっているけど、やっぱり外だし、息は白い。海風も相変わらず寒い。けど、「御前何欲しい?」だの「コウちゃん、飴でいい?」だの、話が盛り上がっている。
私も中に入りたい!
「コウキくん、私も何かあげるね!」
「まじ?やった!何買ってもらおうかな!」
「じゃあ、花ちゃん、コウの誕生日当日俺と買い物行こうか!仕事確かないよね?」
「ほんとですか?行く!」
かなたさんがうんと、頷いてくれる!何気に初めてかなたさんとお出かけ!
1人にやにやとしてたら、蓮さんが足を組み替え、澟くんが前のめる。
「は?なら、俺も行く」
「えー!!オレも!オレも行く!!」
「蓮と凜に仕事あるの知ってるよ。だからだめ」
笑顔の彼方さんがぴしゃりと言い切る。それをみてコウキくんが笑い出す。
私も釣られて声が出て笑ってしまう。
年が明けても私たちに笑いは絶えない。
「コウキ、俺からもあるから楽しみにしてろ」
ふいに上から声が降ってきて5人で顔をそちらの方に向ける。
そこにいたのは神永さん。
「神ちゃんもくれんの?神ちゃんの選ぶもの趣味いいから好き!」
「そうか?」
「うん!」
神永さんも話に加わる。
神永さんは何というか、最初は丁寧なお兄さんって感じだったんだけど、最近は裏の顔、というか丁寧に話してる時以外はなんかやんちゃなお兄ちゃん、って感じ。
社長いない時はタバコも吸うし、口調も変わる。
まあ、今も仕事中なんだけどみんなにつられたのかも。
最近は私にも仕事が終わると素を出すようになってきた。
「神永さん!RAINBOWの皆さん、もう一度撮りたいのですが大丈夫ですか?」
そんなことを思っていたらスタッフの方から声が届いた。
「あ、大丈夫ですよ!さあ、皆さん。仕事ですよ」
スッと切り替え神永さんが促す。
この切り替えにもなれてきたな。
「さ、行こうか。みんな」
かなたさんが立ち上がり、仕事モードになる。それに釣られるように他のみんなも立ち上がり、私も釣られる。
さあ、もうすぐ取り終わるはず。
「花、行くぞ」
「はい!」
さあ、気合入れようか!
◇◇