お正月と2人でお出かけ7
その後、やっと帰った私たちは早速ゲームを始めた。
お正月休みくらいしかみんなでテレビゲームなんてできないから盛り上がった。
夜遅くまでゲームをして「今日はここまで」と残りは明日の休みにとなったので各自部屋に戻ったんだけど、私は一人暗い廊下を歩き一つのドアの前で足を止め、控えめにノックをした。
「あれ?どうしたの??」
「あのですね、コウキくんにご相談が」
「はい??」
よくわからないけど入りな、と後頭部をかきながら私を招き入れてくれた。
コウキくんの部屋は意外と物がない。いつもの可愛い感じからは想像つかないシルバー系のものでまとめた部屋。
硝子の机に空いていないお茶を2つ置き向き合って座る。
「どうしたの?花ちゃんがおれの部屋にくるなんて」
「あのさ……コウキくんを信頼してるし、私が蓮さんの事好きだったのを知ってるからご相談に乗っていただきたく……」
「どうしたの??」
私は蓮さんの事、凜くんの事をすべて話した。
「あー。蓮くん、やっといったんだ」
「はい???」
頭に思いきり?が浮かぶ。
コウキくんはお茶を開け人口飲むと机に置きじっと私を見る。
「おれね、蓮くんが花ちゃんの事気になってるの薄々気づいてた。」
「え?なんなの?コウキくんってエスパーなの??」
「いやいや、花ちゃんよりおれは蓮くんとも凜とも付き合いが長いんだよ?わかるって!」
前髪をかきあげコウキくんが机に肘を置き私をびしっと指差す。
「んで、花ちゃんの気持ちは、今凜なんでしょ?」
「あ、うん、蓮さんの事は姫奈の事もあるしもうほとんど諦めてる。もしかしたら好きだと錯覚してたのかな、なんて思うくらいにはなってる。」
「“はず”、なんでしょ」
思わず目をそらす。
そう、好きじゃない、はず。だ。でも気になると言われてまた少しざわついたのも事実。
長い 髪の毛を指に巻きつけ、言葉を探す。
「花ちゃんはほんと会ったときからわかりやすいよね!」
「そう?」
「うん!」
手の甲に顎を乗せ私を見るコウキくんの目は優しい。意地悪な時もあるのに。こんな時、コウキくんはかなたさんと同じくらい頼りになる。
まあ、こんな時じゃなくても頼りにはなるけども。
「凜、ほんとに花ちゃんの事が好きなのはわかってるよね」
「うん。ほんとにね、嬉しいの。私」
「うん。おれも花ちゃんと凜が話してるのを見てると楽しそうだなって思うよ」
「ほんと?」
「うん。でもね」
言葉を止めたコウキくんを見て首を傾げる。
「2人が話してるときの蓮くんの顔が怖い」
こんな顔、と思いきり眉間に皺を寄せる。そして、笑しだした。
「ほんとにね、自分で気づいてないとこがね、おれ面白くて!」
「え、そんなに?」
「かなたくんと爆笑してた」
「かなたさんまで!?」
「かなたくん、意外と鋭いんだよ?おれみたいに花ちゃんに言わないだけで知ってるよ。おれ言われたもん。蓮がおもしろいんだけど、って」
思い出しお腹を抱えまた爆笑するコウキくん。夜中にこの声は響いてるんじゃないのかな。
「で、花ちゃんは蓮くん、どうするの?」
「どうもこうも、蓮さんには姫奈し、私はもうあきらめがついてる、はず、なのでちゃんとくんの事を考えるけど?」
「そっか。うん、ならいいんだ。まだ蓮くんに好きって言われたわけじゃないよね。」
「うん。さっきも話したけど、気になるって言われただけ」
「おれはね、まあ、かなたくんもだけどRAINBOWを大事にしてるの。もちろん花ちゃんの事も妹みたいに思ってる。だからね、おれもかなたくんも花ちゃんがおれのメンバーと付き合うのも、付き合ってから別れるのもね、いいんだ。」
「うん」
コウキくんが優しく微笑んでしっかりと話してくれるから思わず正座してしまう。
「だからね、AINBOWの為に!!なんて気持ちを偽るとか、おし殺してまで諦めたりはしなくていいんだよ。花ちゃんが今蓮くんと凜で悩んでるなら無理やり凜の事考えなくてもいい。焦って答え出したって言いようにはならないよ。全部ね。まあ蓮くんにも言いたいけどね。」
ね、と舌を出す姿は可愛い。
またお茶を飲むと、身をのり出し硝子の机に手を付いて空いている手で私の頭に手を置く。
「大丈夫。蓮くんもちゃんと姫奈ちゃんの事考えてるし、凜はアホだけどちゃんとした奴なのも知ってる。大丈夫。みんなちゃんと考えてる。だから、今は考えるなら自分に素直になって日々を過ごしなさい。ね」
「……コウキくんがかっこよく見える」
「おれ、かっこよくて可愛いから!もうすぐ成人式だし!」
ピシッと私に軽くデコピンするとまた笑う。
「おれはどういう結果になったってRAINBOWは仲のいいままでいられるって自信あるし、花ちゃんの事、みんな嫌いになったりするわけないって思ってるから!大丈夫。……もー今日の花ちゃん涙腺弱くない??お正月なのに」
目に涙が浮かんでくる。コウキくんは、もー、とティッシュを差し出してくれた。私は流れそうになる鼻水を拭く。
「私RAINBOW大好き」
「うん。知ってる!天さんと銀さんより?」
「推しは、別」
その言葉にまた笑し始める。
その時、コンコンとコウキくんの部屋のドアがノックの音がして、ゆっくりとドアが開く。
「コウ、花ちゃん、ホットミルク、飲む?」
「かなたさん?」
私は鼻水を拭き、足がしびれたので正座を崩す。
かなたさんがお盆を机に置くとおいしそうな匂いがする。
「終わったよ」
「コウキくん?」
「かなたくんに、ちゃんと花ちゃんが相談に来たら話聞いてあげるんだよって言われてたんだよ。ちなみにRAINBOWが仲良いままだよってのはかなたくんが伝えてあげてって」
かなたさんを見れば横に座ってホットミルクを飲んでいる。珍しくメガネをかけているかなたさんのそれが曇ってくすりと笑ってします。
「……曇る」
「めちゃくちゃ面白いよ、かなたくん」
「うるさいよ、コウ。」
おいしそうな匂いにホットミルクを口に流し込む。少し冷ましてくれてたのか丁度いい温度。優しい匂いが鼻をくすぐる。
「花ちゃん、大丈夫だよ」
「え?」
「大丈夫」
それだけ言ってメガネのくもりと戦いながらかなたさんはホットミルクを飲む。コウキくんも、うんうんと頷くと飲み始める。
何も言わないけどかなたさんは優しく微笑んでる。全部わかってるってホントだったんだな。
「またご迷惑かけると思うけどよろしくお願いします」
「今更!」
「はいはい、いーよ」
ちょっとなんか気持ち軽くなったなあ。ホットミルクもおいしいし、幸せ!
と、思っていたらかなたさんが3枚ほどの紙を机に置いた。
「かなたくん、これ何??」
「ん?コウと花ちゃん、眠気は??」
コウキくんと私は一度顔を見合わせまたかなたさんを見ると首を横に振る。かなたさんはにっこりと狂言するしかない笑顔を浮かべる。
「歌詞書いてんだけど、思い浮かばないから知恵貸して!」
「え!!これって書き終わるまで寝られないやつじゃん?!」
「え、そうなの?!」
「コウにはよく手伝わせてるからね。花ちゃんは歌詞とか考えるの初めてでしょ。楽しいから一緒にしようね」
「あ、はい?」
「あー!!寝て置けばよかったー!!!」
ゴンとコウキくんが額机に当たる。え、そんなに大変なの!?
「さあ、やろうか!」
「は、い……」
この後、コウキくんが嫌がっていた理由がわかった。
歌詞づくりで難航し、できるまで寝かさない、とかなたさんに言われた私とコウキくんは言葉の通り、寝たのはほぼ朝だった。
だけど2人は時々蓮さんと凜くんお話を聞いてくれた。おかげで私の心は軽くなった。
眠った数時間後、凜くんに叩き起こされた私たちはまたバカみたいに笑って過ごした。
「あー!!蓮くん、オレからお金とんないで!!!」
「凜、金持ってるからいいだろ!」
「ねー、私結婚したからご祝儀頂戴」
「おれ、転職マス止まったから転職する!アイドルに!」
「コウはアイドル好きな」
こうして私たちの珍しい連休は楽しく終わっていった。
さあ、またRAINBOWはアイドル街道をばく進します!!
◇◇◇