アイドルはテレビ越しがいい5
正直、渋ってるのは確かだし、急に歌だのダンスだの言われても困る。
「おれ、花ちゃんに会うの楽しみにしてたんだよ!」
「え、ほ、ほんとに?」
思わず前のめりで聞いてしまった。
「うん、どんな子なんだろうなって!」
にこにこと笑うコウキくん。テレビ通り可愛い系!!
「社長の意向なら俺は別にいいと思うよ」
かなたさんも続く。
「いいんじゃない、4人でも楽しかったけど5人でも楽しいんじゃないいかな」
凜太郎くんが「ね、蓮くんも別に反対なわけじゃないんでしょー??」と隣の蓮さんを覗きこんでいる。
……いい人多い!!
「足を引っ張る、俺たちが積み上げてきたものを壊さないダンス、歌。そのクオリティーを守ってくれりゃ俺はいい」
「そこはもちろんでしょ。でもまあ、ほんとに俺たちは入るのは構わないよ」
積み上げてきたものを壊さないクオリティー……うん。無理!!
「わ、私……」
「俺は入ってくれたら嬉しいけど?」
「え?」
かなたくんがにっこりと優しい笑顔で話しかけてくれる。
「俺はお前がやるっていうなら協力は惜しまねえよ」
蓮くんが照れたように頭をかき、そっぽ向いて言う。
「おれ、楽しみにしてたって言ったでしょ?一緒にRAINBOW、もっともっと大きくしよ!」
ね!と人懐っこい笑顔で身を乗り出す、コウキくん。
「花がはいったら、もっと毎日たのしそうだからさ!一緒にやろ!飴あげるからさ!」
えっと、と、飴を探し子出す凜太郎くん。
……どうしよう。思った以上に歓迎された……みんな優しい……
「花さん、どうしますか?」
「神永さん……」
こんなに言ってくれて入りません。なんていえない。死ぬ気で頑張れば何とかなるかもしれない。
就職がアイドルなんて、驚きだけど……こんな人生も楽しいかもしれない。
「花ちゃん、RAINBOWにはいってくれる?俺はね、花ちゃんがいいと思って誘ったんだよ」
「社長……」
スと、横から机の上に再び契約書という紙とペンが置かれる。
「入ってくれたら、神永も言っただろうがボーナスも弾むし、住む家もこちらで用意する。
みんなも歓迎してくれてる。どうか……」
「あ、書きます。」
くい気味に返事をし、私は紙にサインをした。
これでもう取り消しはできない、逃げられない。けど……4人が優しくてあったかい言葉をかけてくれたから……
私は立ち上がり思いきり頭を下げる。
「これから死ぬ気で頑張りますのでよろしくお願いします!!」
「はい、よろしく」
「死ぬ気で頑張れ」
「困ったことあったら言ってね」
「教えられるもんは教えるからな!」
やっぱり優しいRAINBOWの4人。
「ありがとうございま……ん???」
頭を上げた先には何かのカタログをじっと見ている4人。
「社長、俺パソコンね」
「俺、でっかいテレビ」
「おれ、いい照明ほしい!やった、ゲット!」
「オレ、新しいでかいベット!花がサインしてくれてよかった」
「なんでも買ってやる!」
……は?
「神永さん、これは?」
「言ったでしょ。“社長、あの4人よりはくれぐれも問題行動など起こさないように”と。この人たち、立ち悪いですよ。ま、もうあなたもメンバーですけどね」
わいわいと盛り上がる5人を見て、私はまた自分にビンタをかましたいほど後悔したのだった。
こいつら悪魔か!!!
◇◇